2005年8月27日公開の映画『奥さまは魔女』
『めぐり逢えたら』『ユー・ガット・メール』など、ラブコメの傑作を手がけた監督・脚本家として知られるノーラ・エフロンによるコメディ映画です。
60年代後半の人気テレビドラマ『奥様は魔女』のリメイクを作る…といった設定で、サマンサ役を演じるイザベルをニコール・キッドマンが、ダーリン役を演じるジャックをウィル・フェレルが演じました。
音楽は『ガンジー』『遠い夜明け』でアカデミー賞作曲賞にノミネートされたジョージ・フェントンです。
この記事では、映画『奥さまは魔女』で流れた音楽14曲をご紹介します。
『奥さまは魔女』で流れた曲とは?
オープニング
Persephone’s Bees - City of Love
オープニングで流れた曲は、Persephone’s Beesの『City of Love』です。
この曲は、ロシア出身の歌手アンジェリーナがリードシンガーをつとめるサイケ・ポップ・バンド、パセフォニーズ・ビーズのデビューアルバム『City of Love』(1999)の収録曲です。
この映画でリメイクされる設定の『奥さまは魔女』は、1964年〜1972年まで米ABCで放送されたシットコムテレビドラマです。
日本でも1966年から放送され、繰り返し再放送され大ヒットしました。鼻をピクピク動かす魔女サマンサを演じたエリザベス・モンゴメリーは、この役で5度エミー賞を受賞しています!
イザベルが念願の一人暮らしを始めるシーン
Talking Heads - And She Was
イザベルが念願の一人暮らしを始めるシーンで流れた曲は、Talking Headsの『And She Was』です。
『And She Was』は、米・ロックバンド、トーキング・ヘッズの6thアルバム『リトル・クリーチャーズ』(1985)の収録曲で、シングル盤もリリースされヒットしました。
この曲を作曲したトーキング・ヘッズのフロントマン、デヴィッド・バーンは、坂本龍一やコン・スーと共に映画『ラスト・エンペラー』(1988)の音楽を手がけ、アカデミー賞作曲賞を受賞したことでも知られています。
2020年には、自身のソロアルバム『アメリカン・ユートピア』(2018)を原案に作られたブロードウェイのショーがスパイク・リー監督によって映画化され話題になりました!
イザベルとジャックによる『奥さまは魔女』のテーマ曲
Howard Greenfield and Jack Keller - Bewitched Theme
イザベルとジャックによる『奥さまは魔女』のテーマ曲は、Howard Greenfield and Jack Kellerの『Bewitched Theme』です。
ここでは、米ABC版「奥さまは魔女」で実際に使われていたテーマ曲『Bewitched Theme』が使われています。ハワード・グリーンフィールドとジャック・ケラーにより作られました。
作曲者の二人は、1958年にニューヨークで設立された音楽出版社、アルドン・ミュージックに所属していました。この会社は複数のソングライターチームを抱えており、50年代後半から60年代初頭にかけて数多くのヒット曲を生み出し大きな成功を収めたそうです。
1963年には、女神のロゴでお馴染みのコロンビア映画会社が200万ドルでアルドン・ミュージックを買いとりました!
怒ったイザベルがジャックに復讐するシーン
The Who - Won’t Get Fooled Again
怒ったイザベルがジャックに復讐するシーンで流れた曲は、The Whoの『Won’t Get Fooled Again』です。
ジャックに利用されているだけだと知ったイザベルは怒ります。それに対し、隣人マリアは、3つの選択肢「我慢するか、別れるか、復讐するか」をアドバイスしました。
このシーンで使われているのは、ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズと並び、イギリスの三大ロックバンドの一つに数えられるザ・フーが1971年にリリースした『無法の世界(原題:Won’t Get Fooled Again)』です。5thアルバム『フーズ・ネクスト』(1971)に収録されています。
イザベルの叔母が呪いをかける場面でマリアが口ずさむ曲
Don Henley - Witchy Woman
イザベルの叔母が呪いをかける場面でマリアが口ずさむ曲は、Don Henleyの『Witchy Woman』です。
『魔女のささやき(Witchy Woman)』は、アメリカのロック・バンド、イーグルスのデビューアルバム『イーグルス』(1972)の収録曲で、シングル盤もリリースされています。
歌詞を書いたドン・ヘンリーは、インフルエンザにかかって半せん妄状態の時に、ゼルダ・フィッツジェラルドの伝記を読み、この曲の詩を書いたと語っています。
ゼルダ・フィッツジェラルドは、『グレート・ギャツビー』を書いた小説家F・スコット・フィッツジェラルドの妻です。ジャズエイジと狂騒の20年代の、ワイルドで魅惑的な「フラッパー」として知られています!
ジャックが自転車でスタジオ入りするシーンで歌う曲
Shirley Ellis - The Name Game
ジャックが自転車でスタジオ入りするシーンで歌う曲で流れた曲は、Shirley Ellisの『The Name Game』です。
『The Name Game』は、60年代のノベルティ・ソング女王、シャーリー・エリスが1964年にリリースした曲です。この曲は、全米ヒットチャートで3位、R&Bチャートでは4位を記録しシャーリー・エリス最大のヒット曲となりました。(ノベルティ・ソングとは、「滑稽な持ち味の音楽」の総称です。日本では、コミックソングとも言われています。)
この曲は、人の名前で韻を踏む遊び歌で、シャーリー・エリスは、歌の中でゲームの遊び方を話したり歌ったりしながら説明します。
ジャックが魔法にかかっている時は「イザベル」で、とけた後は「ジャック」でこの歌を歌っていましたね!
イザベラと魔法にかかったジャックとのデートシーン
Frank Sinatra - Witchcraft
イザベラと魔法にかかったジャックとのデートシーンで流れた曲は、Frank Sinatraの『Witchcraft』です。
『Witchcraft』は、フランク・シナトラが1957年にリリースしヒットした曲です。シナトラはこの曲を3度レコーディングしています。1993年、シナトラ78歳の時にリリースされたアルバム『Duets』には、女性R&Bシンガー、アニタ・ベイカーとのデュエットバージョンが収録されています。
このアルバムは、シナトラと、U2のボノ、ライザ・ミネリなど様々なトップ・アーティストとのデュエットアルバムで、翌年リリースされた続編『Duets II』と共に世界的大ヒットを記録しました。これらは、事前に録音されたシナトラのボーカルパートに、ゲストが合わせて歌い、彼らのパフォーマンスがシナトラのパフォーマンスを補うように指示され作られたそうです!
考え直したジャックとイザベルが順調に撮影を進めるシーン
Rupert Holmes - Escape (The Piña Colada Song)
考え直したジャックとイザベルが順調に撮影を進めるシーンで流れた曲は、Rupert Holmesの『Escape (The Piña Colada Song)』です。
『エスケープ』は、イギリス出身のシンガーソングライター、ルパート・ホルムズが1979年にリリースした5thアルバム『Partners in Crime』(1979)の収録曲です。その後シングル盤もリリースされ全米首位を獲得しました!
この曲の「If you like Pina Coladas」というフレーズが印象的であることから、後に『ザ・ピニャ・コラーダ・ソング』といった副題がつきました。ちなみに、ピニャ・コラーダとは、パイナップルジュースとココナッツミルクで作るカリブ海生まれのラムベースカクテルです。
イザベルとジャックがミュージカル風に踊るシーン
Steve Lawrence - Bewitched
イザベルとジャックがミュージカル風に踊るシーンで流れた曲は、Steve Lawrenceの『Bewitched』です。
米ABC版「奥さまは魔女」では、インストゥルメンタル・バージョンが使われていた番組のテーマ曲『Bewitched』。ここではコメディアンとしても活躍していた歌手のスティーヴ・ローレンスが1965年にリリースしたボーカル・バージョンが使われています。
スティーヴ・ローレンスは、歌手のイーディ・ゴーメとの夫婦デュオ「スティーブ&イーディ」として知られています。二人は、1954年に深夜トーク番組での音楽アンサンブルメンバーとして一緒に仕事をし始め、1957年に結婚しました。その後、おしどり夫婦デュオとしての二人の活動は、2009年に妻が健康上の理由で引退するまで続きました。
ジャックの離婚記念パーティが始まるシーン
Ella Fitzgerald - Ding Dong! The Witch is Dead
ジャックの離婚記念パーティが始まるシーンで流れた曲は、Ella Fitzgeraldの『Ding Dong! The Witch is Dead』です。
『Ding-Dong! The Witch Is Dead』は、『オズの魔法使』(1939)の劇中歌です。 サイクロンで飛ばされたドロシーの家は、東の悪い魔女の上に落ちました。奴隷にされていたマンチキンたちは、自由になれたとドロシーにお礼を言い、東の魔女の死を祝いこのナンバーを歌います。
この曲は、エラ・フィッツジェラルドをはじめとし、ビング・クロスビー、サミー・デイヴィスJr.など様々なアーティストがカバーし、スタンダードナンバーとなりました。
ジャックの離婚記念パーティでのダンスシーン
Natalie Cole - L-O-V-E
ジャックの離婚記念パーティでのダンスシーンで流れた曲は、Natalie Coleの『L-O-V-E』です。
この曲は、20世紀アメリカを代表するジャズピアニストで歌手のナット・キング・コールによる最後のスタジオ・アルバム『L-O-V-E』の収録曲で、1965年にリリースされました。 レコーディングはナット・キング・コールが肺がんと診断された直後に行われたもので、日本語を含む6カ国語で歌われています。
ここでは、ナタリー・コールの13thアルバム『Unforgettable… with Love』に収録されているカバーバージョンが使われています。ナタリー・コールは、なんとナット・キング・コールの愛娘です!
ジャックがイザベルに対する思いを募らせるシーン
R.E.M. - Everybody Hurts
ジャックがイザベルに対する思いを募らせるシーンで流れた曲は、R.E.M.の『Everybody Hurts』です。
ジャックはすっかり元気をなくしてしまいました。ハロウィンでの魔女の仮装をする少女を見て、イザベラを思い出し泣き出す始末です。逆に、子供たちを怖がらせていましたね…。
『Everybody Hurts』は、米・オルタナティブ・ロックバンド、R.E.M.の8thスタジオアルバム『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』(1992)の収録曲で、1993年にシングルリリースされました。元レッド・ツェッペリンのベーシスト、ジョン・ポール・ジョーンズがストリングスのアレンジを担当しています。
エンドロール1曲目
Louis Armstrong - Bout Time
エンドロール1曲目は、Louis Armstrongの『Bout Time』です。
『Bout Time』は、ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ制作のコメディ・ミュージカル西部劇『ファミリー・バンド』(1969)の劇中歌です。ここでは、ルイ・アームストロングのカバーバージョンがつかわれています。
この曲が収録されているアルバム『Disney Songs the Satchmo Way』(1968)は、アームストロングが、ウォルト・ディズニーから個人的に依頼され制作されたアルバムです。『星に願いを』『ビビディ・バビディ・ブー』『チム・チム・チェリー』など人気のあるディズニーソングが収録されています。
ウォルト・ディズニーはアルバムの完成を見ることなく1966年に亡くなりました。また、このアルバムがアームストロングの最後のトランペット録音となりました。
エンドロール2曲目
The Police - Every Little Thing She Does is Magic
エンドロール2曲目は、The Policeの『Every Little Thing She Does is Magic』です。
『マジック(原題:Every Little Thing She Does Is Magic)』は、イギリスのロックグループ、ポリスの4thアルバム『ゴースト・イン・ザ・マシーン』に収録されている曲です。 後にリリースされたシングル盤は全米3位を記録しました。
この映画は、テレビシリーズのリメイクではありませんが、クララおばさんやアーサーおじさん、そして最後にはお向かいのグラディスさんといった、テレビシリーズでお馴染みのキャラクターが登場し、楽しませてくれました!