2025年10月29日にNetflixで公開された映画『端くれ賭博人のバラード』
借金まみれ・ギャンブル依存症の男。
滅茶苦茶な人生を歩む彼がマカオのカジノで出会ったのは、不思議な魅力を持った女性。
彼は、自分の中の「餓鬼」に打ち勝つ事が出来るのかー?
- 原作:ローレンス・オズボーン(同名小説)
- 監督:エドワード・ベルガー『西部戦線異状なし』
アメリカのミステリー・スリラー。
賭け事にはめっぽう弱いbeersyです!
チキン過ぎてクジも買いたくない筆者ですが、本作の主人公は借金だらけなのに金をつぎ込んでしまうギャンブラー。
ストーリーはありきたりですが、コリン・ファレルの演技に魅了されました!
この記事では、Netflix映画『端くれ賭博人のバラード』を鑑賞した筆者の感想やあらすじ、ネタバレ解説をご紹介いたします!
『端くれ賭博人のバラード』の評価&感想
- 感動度
- 4
- 脳トレ度
- 3
- 再鑑賞度
- 3
- サプライズ度
- 3
- 話題性
- 5
『マイアミ・バイス』『S.W.A.T.』『ヒットマンズ・レクイエム』などのコリン・ファレル主演作!
本作、よくある題材のストーリーなのですが、彼の名演技で魅力的になったと言っても過言ではありません。
ギャンブルに溺れどうしようもなくなった男の、切羽詰まった表情が本当にリアル。
〝死〟がよぎった瞬間、追い詰められて行く過程…。
コリンはまさに「奈落の底に転落して行く男」そのものでした。
また、謎の女性を演じるファラ・チェン(『シャン・チー/テン・リングスの伝説』)、主人公を追う女性を演じるティルダ・スウィントン(『フィクサー』『ドクター・ストレンジ』)にも注目。
お二人ともどこか妖艶でミステリアス…。エンドロールにはサプライズがありました!
ストーリーはあるあるなのですが、終盤まさかの展開へ。
何通りにも解釈、深く考察出来るものになっていたので、筆者はとても楽しめました。
スカっとしたい!という人向けではありませんが、心理サスペンスが好きな人にオススメ。
以下より重要なネタバレを含みます。
『端くれ賭博人のバラード』のネタバレ
不思議な出会い
ハイローラー(多額の賭け金を使うカジノ客)のドイル(コリン・ファレル)は、派手な見た目とは裏腹に借金まみれの男。
マカオに行き高級ホテルに宿泊しながら一発逆転を狙うも、全く勝てない。
ホテル側からは、「早急に32万2000ドルを支払ってください。さもなくば、通報します」と言われてしまった。
それでも手持ちを増やそうとカジノへ行くと、「バカラ」というトランプゲームで高笑いしながら大勝ちをする老婦人(ディニー・イップ)がいる。
ドイルが戦いを挑むも負けていると、ダオ・ミン(ファラ・チェン)と名乗る女性が現れ「彼女は〝グランマ〟と呼ばれていて、強運だから大金が必要よ。貸すわ」と囁いた。
しかしドイルは「トイレに行く」と言って逃走する。
ーー
翌日、「ハングリー・ゴースト・フェスティバル」という死者を弔うお祭りの初日。
夜になると、ドイルが宿泊しているホテルで頭身自殺があった。
死んだ男は借金を苦にしたようで、妻と思われる女性がダオ・ミンに「なんでお金を貸したりしたのよ!」と言って泣き叫び、詰め寄っている。
ドイルはその女性を止めると、ダオ・ミンがその場から走って逃げたため追いかけ、自宅のアパートまで行き「金を貸してくれ」と懇願した。
ダオ・ミンは最初渋っていたが、海岸で語り合っていると少し打ち解ける。
しかし翌朝、ドイルが目を覚ますと彼女は消えており、手のひらに数字が書かれていた。
ーー
ドイルがホテルに戻ると、ある女性が自分を撮影した事に気付き「探偵か。雇われたのか」と問い詰める。
実は彼女はシンシア・プライズ(ティルダ・スウィントン)という名で、イギリスの資産管理会社「ストリック&ガーランド」に雇われた、調査会社「ハンツワース」の探偵だった。
ドイルはカジノで少し稼ぎ「この金で見逃してくれ」と頼むが、シンシアは「あなたの本名はライリー。この偽装された死亡証明書の人物ね。あなたを信頼した老婦人は、あなたに95万7000ポンドを盗まれた。24時間以内に支払わなければ、警察に伝える。そうなれば、イギリスに強制送還の上起訴されるわ」と言い放つ。
追い詰められたドイルはダオ・ミンのアパートへ行くが、彼女はおらずラマ島のポストカードが落ちていた。
ーー
次にドイルは、友人で金持ちのリペット(アレックス・ジェニングス)の元へ。
マカオを出て香港に行くから、以前貸した8000ドルを返せとまくし立てた。
リペットは「落ち着け、もうやめろ。君は上流階級の恐ろしさを知らないんだ。本質は労働階級のアイルランド人のままだ」と落ち着かせるが、ドイルは彼が調査会社に自分を売ったのだと知る。
ーー
絶望したドイルは香港に到着すると、最期の晩餐とばかりに豪遊する。
その様子はさながら〝餓鬼〟のようで、食べても食べても満足は出来ない様子。
しかし支払いを促され、金がないためカードで支払おうとした。
死を覚悟すると、目の前に笑顔のダオ・ミンが現れる。
ドイルは安堵して「また会えるとは…」と感動したが、突然心臓発作を起こし倒れてしまった。
ギラギラネオンのマカオの街並み!
豪華なカジノの内部や、装飾なども堪能出来るオープニングでした。
しかし、ダオ・ミンの目的がわからないし、天使にも悪魔にも見えてハラハラします。
ドイルには病気もあるのか…人生ここまで詰んだらおかしくもなりますね。
葛藤
ドイルが目を覚ますと、ダオ・ミンがラマ島の水上家屋で介抱してくれていた。
そこでドイルは、自分は詐欺師で嘘つきで、ギャンブル依存症なのだと明かし「一度で良いから、恥を忘れたい」と呟く。
さらに「なぜ俺に良くしてくれる?」と聞くと、ダオ・ミンは「私はあなたと同類だもの」と言って微笑んだ。
ダオ・ミンが住んでいた村では「女が縁起が悪い」とされており、彼女はより良い暮らしを求めて親の金を盗み、逃げたらしい。
しかし、1週間後に父親が悲しみに暮れ亡くなり、反省して働いて貯めたお金を母親に渡そうとしたが、要らないと返されてしまったと明かした。
そして「あなたは変われる」と優しく囁かれ、ドイルは眠りについた。
ーー
ドイルが起きると、ダオ・ミンがおらず外へ探しに行く。
近くにダイヤル式の鍵がかけられた小屋があり、ダオ・ミンが手に書き残した番号を入れると開いた。
すると、その中に大金を発見。
ドイルは一度はドアを閉めたが、欲に負け全てを持ち去りカジノへ向かった。
ーー
ダオ・ミンの金を使って賭けを始めると、恐ろしいくらいに当たりが出続ける。
ものすごい大金を手に入れたドイルは、ホテルに金を返したが精神が壊れ始め、鏡に映る自分の顔が醜く歪む幻影を見たり、幻聴が聞こえた。
カジノ側は大勝ちしたドイルを呼び出し、「あなたには霊が憑いている。我々は信心深いので、もうマカオのどこのカジノにも入らないでください」と出禁を言い渡す。
パニックになったドイルは「1ゲームで800万香港ドルを賭けるから、もうひと勝負だけさせてくれ!負ければ身の潔白になるし、勝てばマカオを離れる。損はないだろう!」と懇願した。
ドイルの葛藤が描かれていましたが、やはり彼は誘惑に勝つ事が出来ませんでした。
ダオ・ミンは毎回突然いなくなるので、彼を試そうとしているようですね。
なんだか神秘的な存在!
心の中の餓鬼
大金を持ったドイルがカジノへ行くと、シンシアが現れ「大勝ちした動画を観た。返済期限を過ぎたし、もう通報する!」と叫ぶ。
しかしドイルは「他の人からも金を盗んだんだ。まだ足りない。最後に前例のない勝ち方をするから待っててくれ。その金を君に渡すが、マニラで死を偽装して横領すれば良い。人生を変えられる」と言い、シンシアは口を開けたまま立ち尽くしてしまった。
会場に着くと、対戦相手として呼ばれたのは「ロレンソ王子」。
しかし目の前に現れたのは、リペットだった。
観衆の中にはシンシアがいて、固唾を吞んで見守っている。
そんな中、ドイルはバカラで最高点を引き当て見事に勝利を掴んだ。
悔しさを滲ませるリペットが「この大金をどう使う?」と聞くと、ドイルは「借りを返す」と言って笑った。
ーー
ドイルはシンシアに95万7000ポンド相当の香港ドルを渡す。
「5万以上上乗せしてあるが、これはプレゼントだ」と言って軽くキスをした。
そしてダミオンが勤務しているレインボー・カジノへ。
するとグランマが待ち構えており「全財産を賭けて勝負しましょう」と、さらに大金が手に入る可能性のある勝負を持ちかける。
ドイルは一瞬目の色を変えるが、思いとどまり「辞めておく。ダオ・ミンに会いに来たんだ」と告げた。
しかしグランマは「彼女は祭りの初日(ドイルと海岸で話した日)に入水自殺したのよ。葬儀費用も持っていなかったらしいわ」と衝撃の事実を明かす。
ドイルは絶句し信じる事が出来ず、ダオ・ミンのアパートへと走った。
ーー
アパートの中はもぬけの殻。
ドイルはおもむろにラマ島のポストカードを取り出すと、ホテルの食事の際に倒れた時や、ラマ島で過ごした時も、実はダオ・ミンは存在しておらず、自分一人だったのだと気付く。
ダオ・ミンと海岸で語ったあの夜が、彼女の最期だったのだ。
あまりに残酷な現実に号泣していると、外で花火が打ち上がった。
ドイルは寺院へ向かうと、ダミ・オンの金を全て焚き火に放り投げて燃やす。
そして二人で語った海岸に歩いて行き、次々と打ち上がる花火をじっと見つめていた。
ハングリー・ゴースト・フェスティバルの期間中の出会いだったので、このような不思議な事が起こったのかもしれません。
ダオ・ミンが霊となってドイルの前に現れた説もありますが、筆者はやはりドイルの幻覚だったように思います。
彼の中に少しだけ良心と強さが残っており、ダオ・ミンとシンシアとの出会いが立ち直るきっかけとなったのではないでしょうか。
もしくはドイルも早々にこの世から去っており、あちら側での体験だったのか…。
境界線が曖昧で、スリラーからファンタジー風なストーリーになっていました。
ラスト、ドイルの晴れやかな表情が印象的でしたが、依存症は簡単には治らないので、少々不安の残るエンディングでした。
再鑑賞して、また考察してみたいと思います!
『端くれ賭博人のバラード』が好きな人にオススメの映画
Netflix映画『端くれ賭博人のバラード』が好きな人にオススメの映画をピックアップ!
ストロー: 絶望の淵で
もっともーっと絶望したい人にオススメの作品。
こちらも借金まみれのシングルマザーなのですが、これでもかというほど酷い不運に見舞われます。
観ていられないほど残酷で辛いですが、最後はちょっと救われるのでご安心を!
