2024年8月17日に公開され、Netflixで2025年2月5日に配信された、ヒンディー語の短編映画『アヌジャ』
アダム・J・グレイブス監督が脚本も務めた、アメリカ映画です。
インドの貧困問題に切り込んでおり、第97回アカデミー賞・短編実写映画賞にノミネートされました。

アカデミー賞授賞式が近付くとソワソワするbeersyです!
ネトフリに突如として現れた本作。
サムネに惹かれて視聴しましたが、たった22分の短編にも関わらず深いストーリーでした。
この記事では、Netflix映画『アヌジャ』を鑑賞した筆者の感想やあらすじ、ネタバレ解説をご紹介いたします!
『アヌジャ』の評価&感想
- 感動度
- 4
- 脳トレ度
- 3
- 再鑑賞度
- 4
- サプライズ度
- 3
- 話題性
- 4
インドの都市・デリーでは、ストリートチルドレンや、教育を受けずに働かざるを得ない子供達が数多くいるそうです。
そんな子供達を支援する団体(サラーム・バーラク財団など)が協力し、この映画が制作されました。
主役のアヌジャ役を演じたサジダ・パタンも、支援を受けて生活しています。
元々素人なのに、観る者の心に訴えかけるような演技が印象的!
幼くして天才的な知能を持ち、姉想いのアヌジャを見事に演じていました。
そして筆者がさらに心を奪われたのは、姉・パラク役のアナーニャ・シャンバーグ。
インド・ムンバイのパフォーミング・アーティストである彼女の、キュートでチャーミングな笑顔が大好き!!
ほんと可愛い…。全世界がもっとアナーニャの魅力に気付いて欲しい…。女優として成功する事を密かに応援。
魅力的な2人の演者ですが、本作は姉妹のほっこりストーリーではなく、大人に搾取される子供達の現実を描いた重苦しい作品です。
母を亡くし、過酷な人生を送る姉妹の、温かくもやりきれないストーリー。
観終えたあとはちょっと後味が悪いですが、深く語り合えそうな短編映画でした。
再鑑賞すると、さらに姉妹に感情移入してしまって、ラストの意味や妄想が広がりました。
以下より重要なネタバレを含みます。
『アヌジャ』の主要キャスト
- アヌジャ/サジダ・パタン(天才的な数学脳を持つ9歳の女の子。14歳と偽り工場で働く)
- パラク/アナーニャ・シャンバーグ(妹・アヌジャ想いのお姉ちゃん。手先が器用で仕事が早い)
- ヴェルマ(工場長)/ナゲシュ・ボーンスレー(噛みタバコが好きな男性。逆らえないのを良い事に、多くの女性従業員を低賃金で雇っている)
- ミシュラ/グルシャン・ワリア(学校の教師。アヌジャの才能を見抜き、学校に入れようとする)
『アヌジャ』のネタバレ
姉妹の日常
アヌジャは、姉のパラクに頭を撫でてもらいながら「マングースの話」をしてもらっていた。
『農民の男が妻と共に家を空けなければならなくて、ペットのマングースに幼い娘の子守りを頼んだ。
すると外から毒蛇が入って来たため、マングースは噛み砕いて退治する。
その後、帰宅した男がマングースの口元に血が付いているのを見て、娘を襲ったのだと勘違いし、殴ってお仕置きをした。
妻が家の中に入ると、死んだ毒蛇と無傷の娘を見つける。
しかしマングースはすでに息絶えていた』
アヌジャは「それで終わり?」と驚いていたが、パラクは「お母さんの話は忘れちゃった。声、覚えてる?」と聞く。
するとアヌジャは寂しそうに「覚えていたかった」と呟いた。
2人は母を亡くし、縫製工場で働きながら貧しい暮らしをしている。
ーー
ある日、アヌジャが工場長のヴェルマに呼び出されると、ミシュラという男性教師がいて「君は優秀だから寄宿学校へ行くべきだ」と話す。
さらに彼は「火曜日朝8時、学校で入学試験を受けなさい。奨学金が貰えるチャンスだよ」と言った。
しかし受験料は400ルピー。年齢を偽り、低賃金で働くアヌジャにそんなお金は無い。
ヴェルマは「彼女達は自分たちの意志でここにいる。違法じゃない」と突っぱね、ミシュラを追い返した。
ーー
実はアヌジャは数学に長けており、パラクは「あなたは学校に行くべき。寄宿学校にも行ける」と励ます。
しかしアヌジャは「そんなお金無いし、お金を払って行く意味なんかない」と言って乗り気じゃ無い。
そんな妹を見たパラクは、隠しておいた数々の布製バッグを取り出した。
アヌジャは「工場で盗んだの?」と驚いたが、パラクは首を降り「これを40ルピーで売ろう。手伝ってくれたら計画を話す」と言って街に繰り出す。

スタートから悲しいマングースのお話でした。
しかしマングースと言えば、日本では沖縄で生態系を乱す害獣として駆除された事が記憶に新しい。
ハブ対策として人の手で沖縄に放たれ、人の手で根絶されました。なんともやるせない事実ですよね。
この姉妹も弱い立場にあり、大人から搾取されつつ生活しています。
それでもアヌジャの才能が知られ、学校へ行けるチャンスが巡って来ましたが、ヴェルマがそれを邪魔しようとしている…。
しかもアヌジャ自身も「学校へ行く事」の大切さをイマイチ理解していない様子です。
楽しいひととき
街に出てバッグを売ろうとするが、誰も見向きもしない。
途中、アヌジャはパラクから離れ、デパートへ入り客の婦人に「バッグはいりませんか?」と声を掛けた。
そして婦人に400ルピーと言ってバッグを2つ売ろうとしていると、店員が来てアヌジャを捕まえようとする。
婦人は急いでアヌジャにお金を渡し、アヌジャは店員に呼ばれた警備員から逃げた。
しかし、非常階段を下っていると先回りした警備員と鉢合わせしてしまう。
アヌジャが動揺して立ち尽くしていると、警備員は非常口を空けて彼女を逃し、その後ろ姿を見てニッコリと笑った。
ーー
探し回っていたパラクと合流したアヌジャは、バッグ代の800ルピーを得意げに見せる。
2人で大喜びし、映画を観て大好物のジャレビ(砂糖がかかったプレッツェルのようなお菓子)を買った。
そしてアヌジャが「計画を教えて」と言うとパラクは「火曜日に試験を受けると約束するなら」と条件を出し、アヌジャは渋々分かったと伝える。
パラクは、実は売り物にしたバッグは、縫製工場で捨ててしまうはぎれを使ったものだと教えた。
1日にひとつ、見回りのマネージャーの目を盗み、テーブルの下で密かに縫っていたのだ。
アヌジャは「無から有にしたんだね!」と目を輝かせた。

アヌジャは天才少女ですが、パラクもかなり地頭の良い子なのだと思いました。
そして器用な手先は、職人としてもやっていけそうです。
警備員さんが優しい人で良かった。腐敗した街にも善の心を持った人がいて救われましたし、まるで孫を見るような優しい眼差しに安堵しました。
姉妹が仲良く映画を観るシーンには、ほっこりすると共に、この幸せはいつまで続くのだろうと心配に…。
笑顔の2人はとっても微笑ましいのに、なんだかやるせない気持ちになりました。
火曜日の約束と決断
アヌジャは、ヴェルマが「すぐに支払いますから待っててください」と誰かに電話で懇願しているところを見かける。
電話を切ったヴェルマは、彼女を見て「先日来たミシュラさんが、君は数学の天才だと言っていた。それは本当なのか?」と聞いた。
アヌジャが返答に困っていると、「この工場では、24人が1日14時間働いている。1着作るのに30分だとしたら、7日で何着出来る?」と問題を出した。
アヌジャは即座に「4622着」と答えたが、ヴェルマは電卓を弾くと違った答えになったため「もういい」とため息をつく。
しかし彼女は「1日に15分の休憩がありますよね?」と言って、彼を驚かせた。
そしてヴェルマは何かを考え込み「火曜日、作業場ではなくここに来なさい。報酬の良い仕事をやろう。断るなら君たち姉妹は他で働いてくれ」と持ちかける。
その夜、寝付けないアヌジャはパラクに「寄宿学校ってなに?パラクも行ける?」と聞いた。
するとパラクは「賢い子が住み込みで勉強するところよ。私は行けないけど、いいの。あなたが工場で働くのはもったいない」と答え「もう寝なさい」と言う。
アヌジャは、暗い表情で横を向いた。
ーー
そして火曜日、パラクは「しっかりね」と言ってアヌジャにリュックを持たせる。
学校では入学試験会場に続々と子供達が集まり、ミシュラはソワソワしながらアヌジャを待っていた。
同じ頃、ヴェルマもアヌジャが現れるの今か今かと待っている。
当の本人アヌジャは、工場に入って行くパラクを隠れて見ていた。
ーー
8時5分前。
試験会場の入り口で、ミシュラが険しい顔をして辺りを見渡している。
ヴェルマは、作業場で1人働くパラクを見ていた。
するとパラクは、指を針で刺してしまい血の出た指を舐める。
一方アヌジャは、パラクと過ごした温かい日々を思い起こしていたー。

最後、アヌジャがどう選択したのかは描かれませんでしたが、筆者は、やっぱり幼い女の子にとって、たった1人の肉親と離れる事と、学校と天秤にかけた場合、やはり前者を選ぶのだろうなと思いました。
この2人のそばに1人でも大人がいたら。
学校の大切さを教え、それがいつかは2人のためにもなるのだと教えられるのに…。
ミシュラ先生がもっとグイグイ来て、アヌジャを救い、パラクも長所を活かした仕事に就けると良いなと思わずにはいられません!
たった22分の作品なのに、記事はしっかり書けました。それほど内容がしっかりしていました。
アカデミー賞が好きそうな仕上がりだと思います。短編映画、魅力的だなぁ。
『アヌジャ』が好きな人にオススメの映画
映画『アヌジャ』が好きな人にオススメの、ショートムービーをピックアップ。
サイレントチャイルド
第90回アカデミー賞短編映画賞を受賞した、イギリスの話題作。
青味がかった、ちょっと寂しい雰囲気の映像が美しい!
主人公は実際に聴覚障害を持った子役で、また脚本を手がけ、自らも社会福祉士役として出演しているレイチェル・シェントンも、父の耳が聴こえなくなり手話通訳者の資格を取得したという、リアルな作品です。