1990年2月17日公開の映画『7月4日に生まれて』
元アメリカ海兵隊員ロン・コーヴィックの同名の自伝小説をオリバー・ストーン監督が映画化した反戦映画です。第62回アカデミー賞で作品賞・主演俳優賞を含む8部門にノミネートされ、監督賞・編集賞の2部門を受賞しました。
音楽は『スター・ウォーズ』や『インディ・ジョーンズ』で知られる映画音楽界の巨匠ジョン・ウィリアムズです。
この記事では、映画『7月4日に生まれて』で流れた音楽18曲をご紹介します。
『7月4日に生まれて』で流れた曲とは?
パレードで流れている曲
Rodney Lay and the Wild West - Rock Around the Clock
パレードで流れている曲は、Rodney Lay and the Wild Westの『Rock Around the Clock』です。
『ロック・アラウンド・ザ・クロック』は、1952年にマックス C. フリードマンとジェームズ E. マイヤーズ が作った曲で、1954年にイタリア系アメリカ人のバンド、ソニー・デイ&ヒズ・ナイツが録音したものがオリジナルです。
1954年にリリースされた、ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツのバージョンが、アメリカ映画 『暴力教室』(1955)で使われ人気を博し、全米チャートで2ヶ月間連続1位を記録しました。これが、50年代後半に巻き起こる「ロックン・ロールブーム」の幕開けと言われています!
ここでは、Rodney Lay and the Wild West が1980年にリリースしたアルバム『Rockabilly Nuggets』の音源が使われています。
スーパーマーケットで流れている曲
Frankie Avalon - Venus
スーパーマーケットで流れている曲は、Frankie Avalonの『Venus』です。
アルバイトをしているスーパーマーケットに客として訪れたドナに、ロンが話しかけるシーンです。
『ヴィーナス(Venus)』は、エド・マーシャルが作り、1959年に、アメリカ出身の歌手、フランキー・アヴァロンがリリースし、全米1位を記録したヒット曲です。フランキーはこの曲でティーン・アイドルとしての地位を築きました。
ロンがドナをプロムに誘おうとするシーン
The Shirelles - Soldier Boy
ロンがドナをプロムに誘おうとするシーンで流れた曲は、The Shirellesの『Soldier Boy』です。
ドナは既にプロムの相手を決めてしまっていました。出遅れたロンが、入隊準備を理由に不参加するとドナに告げるシーンです。
シュレルズ(The Shirelles)は、高校の同級生4人で結成されたコーラス・グループで、60年代ガールズグループの草分け的存在です。教師の勧めで参加した学校でのタレント・ショーを見た友人が、レコード会社を経営する母親に彼女達を紹介したことがデビューのきっかけになったそうです。
『ソルジャー・ボーイ』は、シュレルズが、1962年にリリースした曲で、スタジオアルバム『Baby It’s You』(1962)に収録されています。
ロンの弟がギターで歌っている曲
Bob Dylan - The Times They Are a Changin
ロンの弟がギターで歌っている曲は、Bob Dylanの『The Times They Are a Changin』です。
プロムを欠席したロンのことを家族は気にかけているようですね…。
ボブ・ディランは、デビューから60年以上も活躍する米国の歌手で、2016年には、音楽家として初のノーベル文学賞を授賞しています。
『時代は変る(原題: The Times They Are a-Changin’ )』は、ボブ・ディランが書いた曲で、3作目のスタジオ・アルバム『時代は変る』(1964)のタイトル・トラックとしてリリースされました。
古い価値観が通用しなくなっていることを説くメッセージソングで、その後、ニーナ・シモン、ザ・バーズなど多くのアーティストによってカバーされています。
ずぶ濡れのロンが、ドナと踊るシーン
Henry Mancini - Moon River
ずぶ濡れのロンが、ドナと踊るシーンで流れた曲は、Henry Manciniの『Moon River』です。
思い直したロンは、大雨の中、傘も刺さずにプロム会場に向かいました。
『Moon River』は、映画『ティファニーで朝食を』(1961)のテーマ曲です。主演のオードリー・ヘップバーンの為に作られた曲で、作曲したヘンリー・マンシーニは、ヘプバーンの声域の1オクターブと1音で曲を作ることに最初は苦労したと語っています。
この曲は、アカデミー歌曲賞を受賞し、多くのアーティストによって録音されスタンダードナンバーになりました。アカデミー賞授賞式では、米国を代表するポビュラー歌手、アンディ・ウィリアムズが歌い注目され、以来、アンディ・ウィリアムズのテーマソングにもなりました。
ここでは、マンシーニが1961年にリリースしたオリジナルバージョンがつかわれています。
病院で、ベッドに並べられ、体を洗われるシーン
Van Morrison - Brown Eyed Girl
病院で、ベッドに並べられ、体を洗われるシーンで流れた曲は、Van Morrisonの『Brown Eyed Girl』です。
『ブラウン・アイド・ガール(Brown Eyed Girl)』は、北アイルランド・ベルファスト生まれの名シンガー、ヴァン・モリソンが1967年にリリースした曲で、「ゼム」を脱退後、ヴァン・モリソン初のソロ作品です。アメリカのR&Bガールズ・グループ、スウィート・インスピレーションズがバック・ボーカルをつとめています。
アメリカのラジオ局では1,000万回以上放送されたクラシック・ロックの定番で、幾度となくカバーされてきた人気の曲です。ボリス・ジョンソンにジョージ W. ブッシュ、ビル・クリントンと、大国のリーダーを務めた政治家がお気に入りの曲と公言しているのも、この曲の人気の高さをものがたっていますね。
ロンがリハビリをするシーン
Don McLean - American Pie
ロンがリハビリをするシーンで流れた曲は、Don McLeanの『American Pie』です。
医師からの辛い宣告を受けた後も、リハビリを頑張り続け、開放骨折の重傷を負ってしまうシーンでも流れています。
1959年2月3日、当時人気絶頂の最中だったロックンローラー、バディ・ホリーとリッチー・ヴァレンス、J・P・リチャードソンが飛行機墜落事故で亡くなりました。『American Pie』は、その事故を題材に書かれた歌だと言われています。
曲中で何度も繰り返される「The day the music died(音楽が死んだ日)」という歌詞から、この飛行機事故のことを「音楽が死んだ日」というようになったそうです。
入院患者が大部屋に娼婦を引き入れているシーン
The Temptations - My Girl
入院患者が大部屋に娼婦を引き入れているシーンで流れた曲は、The Temptationsの『My Girl』です。
『My Girl』は、米ミシガン州デトロイトで結成された5人組のソウル・コーラス・グループ 、テンプテーションズ(The Temptations)の代表曲で、同じモータウン所属のグループ、ミラクルズのメンバー、スモーキー・ロビンソンとロナルド・ホワイトが書き下ろした曲です。
1964年にリリースされ、翌年にはアメリカのBillboard Hot 100とR&Bシングル・チャートの両方で、テンプテーションズにとって初の1位を獲得しました。更に、初の全英シングルチャート入りも果たし、テンプテーションのみならずモータウンを代表する曲として知られています。
ロンの友人が経営しているハンバーガーショップで流れている曲
Paul Mauriat And His Orchestra - Love is Blue
ロンの友人が経営しているハンバーガーショップで流れている曲は、Paul Mauriat And His Orchestraの『Love is Blue』です。
『恋はみずいろ(原題:L’amour est bleu)』は、1967年のユーロビジョン・ソング・コンテストで、ギリシャ生まれの17歳、ルクセンブルク代表のヴィッキー・レアンドロスがフランス語で披露した曲です。惜しくも入賞は逃しましたが、英語の訳詞が書かれ『Love Is Blue』として知られるようになり、日本語を含む沢山の言語で録音・発売され、世界中のファンを魅了しました。
フランスのポール・モーリア楽団が1968年にリリースしたインストゥルメンタルバージョンは、5週連続で全米第1位を獲得し、現在でもイージーリスニング音楽やBGMの定番として世界中の多くの人々に親しまれています。
ロンが参加した独立記念日パレードで流れている曲
The 5th Dimension - Up, Up and Away
ロンが参加した独立記念日パレードで流れている曲は、The 5th Dimensionの『Up, Up and Away』です。
『ビートでジャンプ(原題:Up, Up and Away)』は、アメリカのコーラス・グループ、フィフス・ディメンション(The 5th Dimension)が1967年にリリースし、すぐに、ダイアナ・ロス、ビング・クロスビー、ナンシー・シナトラなど沢山のアーティストにカバーされ、瞬く間にスタンダードとなった曲です。
この曲は、1967年のグラミー賞で主要2部門を受賞し、フィフス・ディメンションだけではなく、この曲を作った21歳の天才ソングライター、ジミー・ウェッブの名を一気に世界中に知らしめました。
ロンがドナと再会するシーン
Bob Dylan - A Hard Rain’s a Gonna Fall
ロンがドナと再会するシーンで流れた曲は、Bob Dylanの『A Hard Rain’s a Gonna Fall』です。
心に傷を負ったままのロンは、ニューヨーク州シラキュースのドナを訪ね、2人の思い出を語ります。
『はげしい雨が降る(原題:A Hard Rain’s a-Gonna Fall)』は、ボブ・ディランが書いた曲で、セカンド アルバム『The Freewheelin’ Bob Dylan』 (1963) に収録されています。
2016年12月、ノーベル賞授賞式で、式を欠席した受賞者ディランの代わりに、友人で歌手のパティ・スミスがオーケストラをバックにこの曲を歌い、大きな話題となりました。
バーでバンドが演奏している曲
Creedence Clearwater Revival - Born on the Bayou
バーでバンドが演奏している曲は、Creedence Clearwater Revivalの『Born on the Bayou』です。
反戦デモに対する弾圧を目撃し衝撃を受けたロンが、自堕落な生活を送るようになってしまったシーンです。
バーでバンドが演奏している『ボーン・オン・ザ・バイヨー』は、サザン・ロックの先駆的存在といわれているバンド、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(略称CCR)が1969年にリリースした曲です。
1969年に「平和と音楽の三日間」と宣伝され、約40万人の観客を集めた伝説の野外ロックフェス「ウッドストック・フェスティバル」で、CCRはこの曲を演奏しました。
ロンが車椅子で動き回りながら歌う曲
Del Shannon - Runaway
ロンが車椅子で動き回りながら歌う曲は、Del Shannonの『Runaway』です。
バーで、酔ったロンが「もっとハートにしみる歌はないのか?」と言ってうたう『Runaway』は、ガールフレンドに振られた男性の視点から歌われている失恋ソングです。
この曲は、米国ミシガン州出身のポップス歌手、デル・シャノンが1961年にリリースした曲で、デビューアルバム『Runaway with Del Shannon』(1961)に収録されています。全米1位を記録し、日本でも『悲しき街角』のタイトルで大ヒットしました。
ロンがメキシコでチャーリーと知り合うシーン
Luis Alberto del Paraná - Hace un Ano
ロンがメキシコでチャーリーと知り合うシーンで流れた曲は、Luis Alberto del Paranáの『Hace un Ano』です。
メキシコには、ロンと同じように車椅子にのった帰還兵達がいました。彼らとビーチ近くの店でカードゲームをするシーンです。
『Hace un Año』は、ルイス・アルベルト・デル・パラナーが1963年にリリースした曲で、アルバム『Mi Guitarra Y Mi Voz』(1962)に収録されています。
ルイス・アルベルト・デル・パラナーは、パラグアイ出身の歌手・ギタリストで、「Los Paraguayos」のカリスマ的なフロント・マンとして広く知られています。 50年代から70年代初頭にかけて、世界中をツアーでまわり、パラグアイ音楽を普及させ、これまでで最も売れたパラグアイのミュージシャンといわれています。
ロンのメキシコ娼館2階でのシーン
Luis Alberto del Paraná - Maleguena
ロンのメキシコ娼館2階でのシーンで流れた曲は、Luis Alberto del Paranáの『Maleguena』です。
『マラゲーニャ(Maleguena)』は、メキシコのワステカ地方の民謡で、この曲を採譜した音楽家エルビディオ・ラミレスと作詞家ペドロ・ガリンドによって1938年に作られました。
メキシカンハットにポンチョ、ギターを抱えるというスタイルで、世界中に愛されたラテン音楽グループ、トリオ・ロス・パンチョスの十八番です。
この曲は、ファルセット(裏声)を聞かせるのが、特徴の一つになっていて、日本では、ビジーフォーのグッチ裕三さんの持ちネタの曲としてご存じの方もいるかもしれませんね。
娼館を出たロンが車椅子で街に出るシーン
Quirino Mendoza y Cortés - Cielito Lindo
娼館を出たロンが車椅子で街に出るシーンで流れた曲は、Quirino Mendoza y Cortésの『Cielito Lindo』です。
『シエリト・リンド(Cielito Lindo)』は、1882年に、メキシコの作曲家キリノ・メンドーサ・イ・コルテスによって作られた曲です。タイトルは「美しい空」の意味ですが、メキシコでは美人を讃える言葉として使われていたそうです。
世界中のメキシカンコミュニティや、オリンピック・FIFAワールドカップなどの国際イベントで歌われることが多いメキシコを象徴する曲です。
Jリーグに加盟するジェフユナイテッド市原・千葉のチャント「奴らのゴール揺らせ」で使用されています!
ウィルソンの遺族との対面を終え帰宅するシーン
Traditional - When Johnny Comes Marching Home
ウィルソンの遺族との対面を終え帰宅するシーンで流れた曲は『When Johnny Comes Marching Home』です。
帰宅するシーンから続く、ベトナム参戦兵士による戦争反対デモで、バンドが演奏している曲です。
『ジョニーが凱旋するとき(原題:When Johnny Comes Marching Home)』は、戦争で戦っていた友人や家族の帰還を切望する思いが表現されている曲です。
南北戦争最中の1863年、北軍の軍隊長パトリック・ギルモアが、北軍で歌われていた酒宴の歌(Johnny Fill Up the Bowl)のメロディに新しい歌詞をつけてバンド曲に編曲したものです。北軍のみならず南軍でも歌われ、また英国でもヒット曲となったそうです。
『博士の異常な愛情』や『ダイ・ハード3』、『風と共に去りぬ』などでも使われています!
ロンが民主党全国大会で演壇にむかうシーン
George M. Cohan - You're a Grand Old Flag
ロンが民主党全国大会で演壇にむかうシーンで流れた曲は、George M. Cohanの『You're a Grand Old Flag』です。
『あなたは偉大な古い旗(You’re a Grand Old Flag)』は、アメリカの愛国行進曲で、最も人気のある米国マーチングバンド曲の 1 つです。映画の冒頭で、少年ロンが見ていた独立記念日パレードでも演奏されています。
1907年のブロードウェイミュージカル『George Washington, Jr. 』の為に作曲家ジョージ・M・コーハンが作った曲で、楽譜は100万部以上を売り上げました。
作曲者のジョージ・M・コーハンは、「ブロードウェイの父」と称えられ、彼の銅像はタイムズ・スクエアの名物になっています。