2025年11月21日公開のアニメ映画『果てしなきスカーレット』は、細田守監督によるオリジナル長編作品です。中世ヨーロッパ風の王国で父王を失った王女スカーレットが復讐を胸に叔父クローディアスを追うのが主なストーリー。「死者の国」で青年・聖と出会い、スカーレットは何のために剣を振るうのかを問い直していきます。
果てしなきスカーレット
- 未体験
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- 感情移入
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- 再鑑賞
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- 予測不可
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- サウンド
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細田守作品の中で賛否両論のダークファンタジーなのは確かで、描き方や演出といったビジュアル面は特に凄かった!
"評価は年間100作品以上を鑑賞する執筆者こでぃもの実体験をもとにしています。
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映画『果てしなきスカーレット』で流れる3曲をシーンごとに解説!
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『果てしなきスカーレット』は人気?どんな人が観ている?

公開直後から、評価はかなり割れているため「どうしてこんなに賛否が分かれるんだろう?」と気になって劇場に足を運ぶ人もいるかもしれませんね。古典や「ハムレット」が好きな人には刺さるのかもと思いつつ、映像と音楽は忘れられない演出が多いのも確かでしょう。
土曜の映画館は席数は多かったですが、人は少なく…細田守監督の作品が好きな人もいたのではと思いました。画面いっぱいに埋まった群衆の動きや、雷を落とすドラゴンのような存在の迫力、歌とダンスによるワンシーンは映画館ならではの迫力があるでしょう。
以下より重要なネタバレを含みます。
『果てしなきスカーレット』をネタバレありで解説!
王女スカーレットと父
中世ヨーロッパ風の王国デンマークで、幼い王女スカーレットは父である国王アムレットと仲良く暮らしていました。アムレット王は国民からも支持されており、スカーレットも心から慕っていた…一方で、母のガートルード王妃はスカーレットを疎ましそうにし、アムレット王の弟クローディアスと親しく過ごしていたのです。
クローディアスは、アムレット王から王位を奪うために陰で計画を進めました。やがてアムレット王は「反逆者」としてでっちあげられてしまいます。アムレット王は民衆の前で死刑に…処刑台からスカーレットに向かって必死に何かを叫びましたが、民衆の騒ぎにかき消されて、スカーレットにはその言葉が届きませんでした。スカーレットは何もできないまま、父の最期を目の当たりにします。
その後、クローディアスは王として権力を握り、民を思わぬ政策を続けます。スカーレットは父の仇を討つことだけを心の支えにし、剣の扱いや戦い方を学ぶことに専念します。成長したスカーレットはクローディアス暗殺を決行。薬を盛ったはずでしたが…逆にクローディアスがスカーレットに毒を盛っていたため、彼女は苦しみながら倒れます。スカーレットが目を覚ますと、枯れた大地と壊れた鎧や武器が転がる、地獄のような死者の国でした。

父と娘の平穏な日々からの処刑の場面となり、父の声だけが届かないという演出が印象に残ります。この場面は映画の最後まで関わっていったり、処刑に関わったクローディアスの側近4人も登場していくのが見どころでしたね。
スカーレットが剣の訓練をする場面や、その後戦うシーンも体の動きがとてもリアル!迫力もあるシーンが多かったです。
聖(ひじり)
スカーレットは出会った老婆から、この世界で二度目の「死」にあたる〈虚無〉のこと、クローディアスもここにいることを知らされます。「見果てぬ場所」と呼ばれる場所にスカーレットは向かい、今度こそ復讐を果たそうと誓いました。
旅の途中、スカーレットは現代日本から来た青年・聖(ひじり)と出会います。聖は看護師だと名乗りますが、スカーレットにはその仕事がよく分かりません。そこにクローディアス側の敵が現れ、スカーレットは剣を抜き、戦いました。
聖は「殺さなくてもいい」とスカーレットを止めようとし、傷つけられた敵を手当てし始めます。クローディアスの側近の1人には歩けるように杖を渡して手当てしたのです。スカーレットには理解できませんでしたが、聖はそれでも彼女と一緒に旅をすることにします。
その後、スカーレットと聖は敵と戦いながら歩みを進め、途中で盗賊に襲われるキャラバン(旅の一行)に出会います。スカーレットたちの荷物も狙われますが、空に現れたドラゴンのような存在が雷を落として状況は一変。スカーレットたちは荷物を取り返します。
その後、聖はキャラバンに誘われました。食事をもらいつつ、聖はマッサージをしたり、怪我の手当てをしたりして、信頼を得ます。キャラバンの人々は聖のおかげで笑顔になり、別れ際には聖に楽器を贈りました。

死者の国の世界観が凄かった!空を見れば海のようにも思えたり、ドラゴンのような何かがいたり…暗示しているものも多そうだと感じました。そして、スカーレットが騙されたり、聖の優しさに触れたりするのも見どころですね。スカーレットは「敵は倒すもの」と思い、聖は「怪我をした人は助ける」と思っている中、彼女の変化にも注目でしょう。
スカーレットが聖の行動を見て、キャラバンに受け入れられていくことに対し、「見直した」と言うのが印象的でした。彼女も時代や場所が違えば彼のように優しく誠実に生きていたのではと思いますが…その「別世界で生きる自分」を想像させる歌とダンスのシーンも印象に残りました。
見果てぬ場所
キャラバンと別れたあと、スカーレットと聖は「見果てぬ場所」へ歩みを進めました。途中の市場のような場所でスカーレットは一人の少女に出会い、考えを変え始めます。その後、人々は救いを求めて「見果てぬ場所」に向かうため、火山のような山へ。クローディアス側の兵士たちは、大きな壁を作っていましたが人々はそれを破壊。群衆が雪崩れ込み、クローディアス軍と戦いを繰り広げます。
その混乱の中で、スカーレットはクローディアスの側近を倒し、透明な階段の存在を知ります。その先には巨大な扉があり、クローディアスが立ちつくしていた…クローディアスは、扉があかないことで自身の行いを悔いているようで、スカーレットはアムレット王殺害の件も呼びかけました。
するとクローディアスはスカーレットに唾を吐きかけ、彼女は殺意を露にします。しかし、アムレット王が「許せ」と言っていたことを思い出して手を止めました。そうして空から雷が落ち、クローディアスに直撃。クローディアスは虚無となりました。
聖や人々が扉にたどり着く中、老婆が再び姿を現しました。そして、スカーレットはまだ死んでいないと告げられ、聖は戦いの中で追った傷のせいで虚無に…聖はスカーレットに生きて欲しいと強く願い、彼女はそれに応えます。現実世界に戻ったスカーレットは未来のためにも、王女として平和な今を作り上げると決意して物語は幕を閉じます。

聖は死んだと思っていませんでしたが、通り魔から子供をかばっていた…身体が先に動いたことで殺された自覚はないようでしたね。逆にスカーレットは毒で苦しんでいましたが、昏睡状態だったようです。現実世界で目覚めた際に侍女が「解毒剤が効いた」と言い、みんなを呼んでいたのが印象に残ります。
ラストのシーンでスカーレットは聖を強く抱きしめ、別れを惜しむのも良かったですね。彼女が復讐しか考えず生きてきた中、聖のおかげで変わったのだと実感したラストです。
『果てしなきスカーレット』に関連する作品ならこちらもオススメ!
『果てしなきスカーレット』に関連する細田守作品や死者の国をテーマにした以下の2作品もおすすめ!
竜とそばかすの姫
『竜とそばかすの姫』は、細田守が原作・監督・脚本を務めた長編アニメーション映画です。主人公は、高知の田舎町で暮らす内気な女子高生・内藤鈴(すず)。声と歌の担当はミュージシャンの中村佳穂さんです。
物語は、幼い頃に母を事故で亡くしたすずが、トラウマから人前で歌えなくなった…そんなすずが、全世界で10億人以上が参加する巨大な仮想世界〈U〉で「ベル」というアバターで人気者になっていきます。
すずが、〈U〉の中で堂々と歌えるようになり、ベルとして一躍人気の歌姫になる中、全身傷だらけの存在「竜」との出会いから物語が変化していきます。

壮大なバーチャル世界を舞台にした青春ファンタジー作品!「自分の声を取り戻す物語」として観たあとにじっくり語り合いたくなる映画です。「喪失」と「自己肯定」、そして「誰かを守るための勇気」をテーマにした物語は心に響きますね。
仮想世界〈U〉の演出はベルの歌と色彩豊かな世界観が印象的。誰かを助けるために、自分ならどこまで踏み込めるだろうかと考えさせられるのも魅力でしょう。
喪失を抱えた少女が、別の世界で自分の声を取り戻し、暴力の連鎖を前に「どう生きるか」を選び直す物語という点が『果てしなきスカーレット』と響き合うからおすすめです。
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『竜とそばかすの姫』で流れる7曲をシーンごとに解説!
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リメンバー・ミー
『リメンバー・ミー』は、ディズニー/ピクサー制作の長編アニメーションで、監督はリー・アンクリッチ、共同監督はエイドリアン・モリーナです。主人公は、メキシコの小さな町に暮らす少年ミゲル。日本語吹き替え版では石橋陽彩さんが担当。
物語は、ミゲルの一族に「音楽禁止」の掟がありながら、ミゲル本人は音楽を心から愛していて、伝説の歌手のようなミュージシャンになることを夢見ている、という家族とのズレから始まります。
先祖の魂を迎える祝祭「死者の日」の夜、ミゲルは家族との対立から家を飛び出し、ある出来事をきっかけに“死者の国”に迷い込んでしまいます。ミゲルの出会いと音楽を通じた交流が繰り広げられます。

カラフルな死者の国を舞台にしたファンタジー・アドベンチャーで、「家族の記憶と、忘れられることの怖さ」をやわらかく、でもしっかりと描いた作品です。
テーマになっているのは、「家族の物語をどう受け継ぐか」「許されないと思っている過去を、どう抱きしめ直すか」といった、世代をまたぐ感情。観ているあいだは歌や色彩にワクワクしつつ、ふとした瞬間に「自分の家族にも、語られていない話があるのかもしれない」という切なさが訪れますね。
ミゲルとヘクターが一緒にステージに立ち、音楽を通じて信頼を深めていく流れが見どころで、歌などの演出にも注目ですよ。映画『果てしなきスカーレット』とは違った死者の国の世界を楽しみたい人におすすめです。
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『リメンバー・ミー』で流れた挿入歌10曲を解説!
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