2025年10月31日公開の映画『爆弾』は、監督は永井聡、主演は佐藤二朗。共演に、山田裕貴、伊藤沙莉、染谷将太、渡部篤郎らが名を連ねます。物語は、逮捕されたスズキタゴサクが警察に協力して爆弾騒ぎを予知することから始まります。取調室で尋問を担う警視庁捜査一課の刑事たちですが…スズキの謎めいた心理戦が始まります。
爆弾
- 未体験
- 5
- 感情移入
- 4
- 再鑑賞
- 5
- 予測不可
- 5
- サウンド
- 3
山田裕貴と佐藤二朗の対比が特に印象的!言葉一つで命が揺れるような、静かな戦争が見どころ。
評価は年間100作品以上を鑑賞する執筆者こでぃもの実体験をもとにしています。
『爆弾』は人気?どんな人が観ている?

公開直後から口コミが広がり、「取調室の会話は緊張感がある!」「佐藤二朗の演技がすごかった!」といった声がありましたね。派手なアクションではなく、“言葉の攻防”だけで緊張を生み出す構成は想像力を刺激し、観終わってからもいろいろと考えてしまいます。
土曜の映画館で観ましたが、男性の比率が多めで席は7割ほど埋まっていましたね。サスペンスやミステリー好き、友人どうしで作品について語り合いたい人も多かったのではと思います。原作を読んでから観る人もいれば、あえて何も知らずに“心理戦の体験”をする人もいたのではないでしょうか。
明かりの落ちた劇場で、取調室の狭い空間で交わされる言葉を聞いていると、観客自身も“もう一人の聞き手”になれるような没入感があるのが見どころ!わずかな表情の揺れを見逃さないように目を凝らしているうちに、心の奥まで静かに侵入してくるような感覚も味わえるでしょう。
観終えたあと、帰り道で「自分ならあの言葉を信じたかな」と、誰かと語り合いたくなるかもしれませんよ。
以下より重要なネタバレを含みます。
『爆弾』をネタバレありで解説!
等々力とスズキ
野方警察署の刑事・等々力は、酔って暴行を働き逮捕された男・スズキ取り調べていました。刑事の伊勢が見張り役を務め、スズキから話を聞いていきますが…スズキは「霊感がある」と語り、22時に秋葉原で爆発が起きると言ったのです。22時になると爆破が発生し、23時にも東京ドーム付近で第二の爆発が起こります。立て続けに事件が起きたことで、警視庁捜査一課強行犯捜査係の類家と上司の清宮が捜査を引き継ぎ、鈴木に対し本格的な取り調べが始まりました。
スズキは清宮に9つの質問をする“九つの尻尾”というゲームを提案。清宮が質問に答えていくと長谷部有孔という人物の名が浮かび上がりました。長谷部はかつて警察内で不祥事を起こして自殺したのですが…スズキは彼について語らず、次の爆弾の場所を示唆します。意味不明な言葉に聞こえるスズキの発言を類家が解読。九段下の新聞販売店に爆弾があると突き止め、無事に発見されました。

物語の序盤では、等々力がスズキを事情聴取し、その後に清宮へと引き継がれる流れが印象的でした。捜査の主導権が移る展開に緊張感があり、取調室の空気の変化がはっきりと伝わってきます。等々力がスズキの印象を「無邪気な子ども」と表したり、爆弾の場所を解く際の手掛かりを伝えたりするのも良かったですね。
スズキが提案したゲームに乗った清宮ですが、質問を通して心の形を暴かれていく展開にも注目です!
清宮とスズキ
4時を回り、スズキは次の爆破場所を暗示します。清宮は幼稚園や保育園が狙われていると推測し、代々木方面の捜査が始まりました。園の爆弾が発見される中、代々木公園で爆発が起こり、多くのホームレスらが犠牲になります。清宮は読み違えたこと、スズキに心の歪みを突きつけられたことから類家に担当を代わることに…そうした中、スズキは「2回戦」が始まると言いました。
この少し前、スズキからスマホの所在を聞いていた伊勢は、交番勤務の倖田と矢吹に取りに行かせました。スマホに貼られていた住所を訪ねた2人は家内を捜索。奥の部屋で男の死体を発見しますが…設置されていた爆弾の罠に巻き込まれ、矢吹は倖田を庇って足を損傷しました。倖田は救援を呼び、家の捜索が始まります。
類家はスズキの取り調べを始め、シェアハウスの状況をもとに彼の素性を探ります。そうした中、スズキは予め仕込んでいた動画を2本公開し、爆破の恐怖に駆られた市民が野方警察署に押し寄せました。

スズキの取り調べだけでなく、爆弾を探す警察の動きや、交番勤務の倖田と矢吹の行動にも緊張感がありましたね。散らかった家(シェアハウス)を捜索する場面では、奥に座らされた男の姿があり、それが長谷部の息子であったことが明らかになる瞬間には強い衝撃を受けました。
シェアハウスの情報から類家が推理を進め、スズキに言葉を突きつけていく展開はテンポがよく、見応えがありました。清宮の取り調べはじっくりと進んでいくのに対し、類家の取り調べはスピーディーで論理的な感じの対比が見どころでしたね。
類家とスズキ
爆破されたシェアハウスには、長谷部の息子を含む3人の遺体がありました。等々力は元住人から証言を得て、駅の自動販売機に爆弾が仕掛けられていると推理。類家も阿佐ヶ谷駅に爆弾があることまでは突き止めていましたが…爆弾発見は間に合わず、阿佐ヶ谷駅と環状線の各駅利用者が犠牲になります。
スズキは「3回戦目」を用意していると考えた類家は、再び推理を重ねました。類家は、長谷部の妻が爆弾を持って署に現れると予想。不祥事があった長谷部は阿佐ヶ谷駅で自殺しており、その際に一家は離散。妻はホームレスとなり、スズキと出会った…妻は、シェアハウスで息子が環状線の駅の爆破を目論んでいること、彼が二人の同居人を殺害したことを知って息子を刺殺。その際にスズキを呼んだ…スズキは爆弾計画の主犯となり、秋葉原などに爆弾を仕掛けて動画を公開したと類家は推測したのです。
長谷部の妻が爆弾を持って署に現れますが、起爆装置は作動しませんでした。スズキは「爆弾はまだもう一つ残っている」と言い残し、逮捕されて物語は幕を閉じます。

類家の推理はどこまで当たっていたのか、余韻が残る映画でしたね。スズキは「催眠術をかけられて記憶を失った」と言い張る以上、事件の真相は分からないようです。長谷部の妻はスズキに庇って欲しいと言ったのかが特に気になりましたが…類家とスズキの会話も見逃せなくて観ている時間があっという間という感じもしましたね。
佐藤二朗が「無邪気に、淡々と、熱を帯びて」というような様々な演技を使い分けて観客を引き込むのが凄かったです。
原作が気になる映画だったので、読んでみようかなと思いました!
『爆弾』に関連する作品ならこちらもオススメ!
『爆弾』に関連する以下の2作品もおすすめ!
俺ではない炎上
監督は山田篤宏、脚本は林民夫、原作は浅倉秋成。主演は阿部寛で、共演に芦田愛菜、藤原大祐、長尾謙杜、夏川結衣、浜野謙太、三宅弘城らです。物語は、大手ハウスメーカーの営業部長・山縣泰介が、ある女子大生殺人事件の「犯人」としてSNS上で突然名指しされることから始まります。
山縣は身に覚えのない罪を否定しながらも、匿名の拡散によって実名や写真が次々と晒され、職場や家庭を含む生活圏が一気に浸食されていく…「自分は無実である」という事実を示すため、逃走劇を繰り広げながら事件の真相を追います。
「疑いが事実を凌駕する」局面で人が取りうる選択を、現実的な視点も含めて構成していく社会派サスペンス作品です。

現代の炎上社会をテーマにした社会派サスペンスであり「名指しされた瞬間に世界が反転する恐怖」を可視化してくれるのが見どころ!根拠が薄い噂が“多数決の真実”に置き換わるとき、怒りと無力感が交互に押し寄せるような心地がありますね。
阿部寛が演じる山縣は、理不尽さに耐えるだけの被害者像ではなく、逃げ、迷い、時に賭けに出る!彼の焦燥と決意の温度差を追体験できるのも特徴です。スマホ画面を横切る通知の奔流、路上での追走、身元確認を迫る群衆からの退避、そして家族の視線がすれ違う静かな対話にも注目ですよ。
芦田愛菜、藤原大祐、長尾謙杜らがそれぞれの立場から「信じる/疑う」視点をもとに、見る側も推理していけるのもおもしろいですよ。もし自分や大切な誰かが名指しされたら、あなたは最初の一報をどう扱うでしょうか…?
映画『爆弾』のように犯人探しや群衆の動きで作られる緊迫感が味わえる作品です。
ラストマイル
監督は塚原あゆ子、脚本は野木亜紀子。主演は満島ひかり、共演に岡田将生、ディーン・フジオカ、広末涼子、阿部サダヲ、吉岡秀隆、江口のりこらが名を連ねます。ドラマ『アンナチュラル』『MIU404』と世界観を共有する作品です。主題歌は米津玄師「がらくた」。
世界規模のショッピングサイトの関東センターから配送された荷物が爆発し、同様の事案が連鎖していくのが物語の始まり。舟渡エレナ(演:満島ひかり)は被害の拡大を止めようと奔走します。
巨大化した物流システムの複雑さ、情報が錯綜する社内外の圧力、運送会社と委託ドライバーの現実などに注目です。「届ける」という日常行為の裏側にある責任と負債を、現実的な視点で積み重ねていく群像サスペンス作品です。

社会派サスペンス作品として「便利の裏にある痛みを可視化してくれる」感じがありますよ。信頼、責任、贖罪というテーマを感じさせ、荷物が相手の手に届くまでの“最後の区間”に、人間の誇りや葛藤が凝縮しているのも心に響くことでしょう。
フィクションでありながら“いま起きているかもしれない”リアリティを感じさせ、見た後に「正しい届け方とは何か」と問われる気持ちになりますね。映画『爆弾』と共通する「爆弾をテーマにした作品」として楽しめるでしょう。
