音楽は空間を彩り、お客様の心を動かすお店にとってとても重要な要素のひとつです。
カフェで流れる心地よいジャズ、オフィスで集中力を高めるクラシック、ホテルラウンジで鳴り響くスムーズジャズなど、それぞれのシーンに最適なBGMは、その場の雰囲気を一変させる力を持っています。
この記事では、あらゆるシーンで音楽が担う役割を考え、業態や場面、目的に応じて最適な選曲についてご紹介していきます。
ミュージックソムリエ 石井浩之さん
この記事の作成・監修を務めているのは、CDショップ大賞などを運営するNPO法人ミュージックソムリエ協会のメンバーでもある石井 浩之さんです。
豊富な知識と経験を活かして、その独自の視点と深い理解をもとに各場面や業態にどのように音楽がフィットするのか、その魅力と効果を解説していただきます。
【2024年版】おすすめ店舗BGMサービス11個を比較!料金や著作権も解説!
続きを見る
業態・施設別のBGM
ここでは以下6つの特定の業態や施設に焦点を当て、そのそれぞれに最適な音楽選びについて詳しく掘り下げていきます。
BGMの選曲は、その場の雰囲気や訪れる人々の感情を大きく左右します。音楽は言葉を超えた表現手段であり、私たちが体験する空間を豊かに彩る力を持っています。
そんな音楽の持つ力を最大限に引き出すための各業態や施設にふさわしい楽曲選びのポイントをそれぞれ解説していきます。
- カフェ
- オフィス
- サロン
- 居酒屋
- ホテルラウンジ
- 歯科医
カフェ
カフェのお客様は比較的長く滞在し、会話や読書、仕事や勉強といった行為が多いと思います。
「とりあえずジャズ」といった空間にしばしば触れますが、ジャズにはソロパートが多く、何も考えていないと長いドラムソロが続いたり、トランペットが耳についたりといったシーンも見受けられます。
これらは本来芸術的なパフォーマンスであり、当然作品としては素晴らしいのですが、シーンと音楽という観点からは他のシーンの方が使える楽曲でしょう。
カフェでのオススメ・ソングはアンプラグドな楽曲で、例えばジャック・ジョンソンやドノヴァン・フランケンレイターといったアーティストを曲調に合わせて朝・昼・夕と分けるとよいと思います。
Jack Johnson - One Step Ahead
Donavon Frankenreiter - Free
オフィス
オフィスBGMは従業員の働き方を改善するのに非常によいと言われています。
しかし、朝からガンガン持ち上げるような楽曲は向いていません。
同質効果として、気分に寄り添う楽曲をクラシックやジャズなどのジャンルにするのがよいでしょう。
周りのノイズが気になりにくくなるマスキング効果を期待して、クラシックであればミディアムスローな室内音楽などが軽く聞き流せる感じでオススメです。
一方、クラシックと一言で言っても、子供の頃に学校で何度も聞いたような名曲は集中力を削いでしまう可能性もあるので注意が必要です。
サロン
サロンはオシャレになれる非常にポジティブな空間です。
同時に文化的でもあり、サロンのコンセプトに合わせて多様な選曲の切り口があると思います。
特にカリスマ美容師によると選曲のBPMにこだわりを持っていたり、有名曲のリミックスのみを選曲したりと独自性と効率性からブランディングをされていることが多いようです。
一方で、流行ファッションというシンプルな切り口は共通しやすいため、最近ではオリヴィア・ロドリゴやアリアナ・グランデなど音楽的にも人物的にもアイコンとなるアーティストからミッドテンポな楽曲を選定するのがオススメです。
Olivia Rodrigo - good 4 u
Ariana Grande - 34+35
居酒屋
居酒屋はかなり多くのタイプがあり、ラジオやTV放映からJ-POP、昭和歌謡などなど様々なジャンルが使用されています。
ここではやはりお店のコンセプトが重要となってきますが、「新歓コンパ用」でアップテンポでダンサブルな楽曲群を集める、「大人の記念日用」にスムースジャズのプレイリストを用意するといったシーン別のプレイリストがあると更にお店の運営とBGMを結びつけてユニークなお店を演出できると思います。
ホテルラウンジ
ホテルのラウンジでは、大体の方が時間をゆったり過ごすためにいらっしゃると思います。
カフェよりも更にゆったりとして空間を醸成することがよいので、基本的に楽曲はスローテンポやインストものが多くなります。
同時にボサノヴァやジャズ(といってもイースト・コーストとウェストコーストの切り口を重要視しながら)を時間帯に分けて切り替えると繰り返し利用されるような方にも満足してもらえる空間になると思います。
また、ナチュラルな空間にはチェロを中心とした楽曲を使用することで、落ち着きや高級感を出すことができオススメです。
歯科医
歯科医院ではエア・タービンという機械の発するノイズが響く、患者さんにとっては特殊な空間でもあります。
ノイズキャンセリングという手法をとっても骨伝導の影響の方が強いため、どちらかというとイメージ誘導効果を狙って落ち着いた楽曲をおすすめします。
例えばクラシックでは、交響曲のようなダイナミクスの大きな選曲ではなく、テンポの低い曲で楽器もピアノやヴァイオリンなどのシンプルな編成のものがよいでしょう。
場面・状況に対応したBGM
特定の場面や状況に合わせたBGMの選曲は、その瞬間のムードや感情を高め、人々に深い印象を残す力を持っています。
クリスマス、閉店、誕生日といった特別なタイミングに対応した音楽は、その場の雰囲気を一変させ、思い出深い瞬間を作り出します。
ここでは、それぞれの場面や状況に対応した音楽選びの要点を深掘りし、その魅力と効果を引き立てるためのポイントを提案します。
- クリスマス
- 閉店
- 誕生日
クリスマス
マライア・キャリー「恋人たちのクリスマス(原題:All I Want For Christmas Is You」
BGMが季節感の醸成と顧客の高揚感を上げる最大の機会がクリスマスです。
いくつか名曲はありますが、やはりオススメはこの曲です。
「もう古いのでは?」と思われる方、ジャスティン・ビーバーとのフィーチャリング版もあるので是非聞いてみてください。
ジョン・レノン&ヨーコ・オノ「ハッピー・クリスマス」
こちらも言わずと知れた名曲です。
この曲の歌詞には平和へのメッセージが込められていて、今まさに世界中の人々に届いて欲しい楽曲です。
バンド・エイド「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス」
イギリスとアイルランドの有名アーティストが集まって結成されたチャリティー・プロジェクト・ソング。
1984年、1989年、2004年、2014年とリメイクされながら時代と共に様々なバリエーションを感じさせる名曲です。
閉店
「別れのワルツ」は、お店が閉店する前によく使われる誰しもが知っている音楽ですが、タイトルは「蛍の光」と間違われがち。蛍の光は4分の4拍子なのに対して別れのワルツは4分の3拍子なのです。
お客様に対して自然な流れで退店を促すことができるので非常に高い頻度で使用されている音楽です。
誕生日
スティーヴィー・ワンダー「ハッピー・バースディ」
1980年発表のアルバム『ホッター・ザン・ジュライ』に収録された楽曲。歌詞の裏側には深いエピソードがありながらも、サビの曲調は分かりやすく単純なバースディ・ソングをかける以上の演出ができる作品です。
目的・気分別のBGM
ここでは、特定の目的や気分に合わせた音楽の選び方について探求し、それがどのように私たちの心や空間に影響を与えるのかについて考察します。
- リラックス
リラックス
ヒーリング音楽というジャンルが有名で非常に効果的ではありますが、他にもアンビエントという選択肢があります。
代表的なアーティストではブライアン・イーノで『サーズデイ・アフターヌーン』というアルバムは1曲のみの収録ながら1時間以上の尺があり、且つ幻想的な空間を演出できる点からオススメです。
音楽の種類に基づいたBGM
ここでは洋楽のBGMを中心に、どのような雰囲気を醸し出し、その場の環境や気分にマッチするのかについて探求し、空間をどのように豊かにするのかについて解説します。
- 洋楽BGM
洋楽BGM
洋楽BGMの場合、幅広い選択肢があり幅広いシーンに活用できます。
例えば「最新洋楽特集」「年代別ヒッツ」といった時間軸や、「ファンク」、「ディスコ」、「AOR」といった当時の流行ジャンル軸でお客様の年齢層や空間のコンセプトに合わせた雰囲気を演出する方法があります。
また、「ボサノヴァ」、「R&B」、「ヒップポップ」、「レゲエ」、といったジャンルの選択でもそれぞれの文化と店内サービスのリンクを図るとお客様の気分も高揚するはずです。
世界各国の料理を扱う飲食店ではBGMとの世界観を合わせることは非常に有益です。イタリア料理と一口にいってもカンツォーネのような伝統的なものから、オペラのように日本人がイタリアを連想させるような音楽まであり、一度実際に店舗に流すことが最も重要です。
執筆担当:ミュージックソムリエ 石井浩之
【2024年版】おすすめ店舗BGMサービス11個を比較!料金や著作権も解説!
続きを見る