1967年3月8日公開の映画『ロシュフォールの恋人たち』
『シェルブールの雨傘』(1964)でパルムドールを受賞したジャック・ドゥミが再びミシェル・ルグラン、カトリーヌ・ドヌーヴとタッグを組んだミュージカル『ロシュフォールの恋人たち』。ドヌーヴの実姉フランソワーズ・ドルレアックが双子の姉妹を演じています。
この記事では、映画『ロシュフォールの恋人たち』で流れた音楽19曲をご紹介します。
『ロシュフォールの恋人たち』で流れた曲とは?
橋に着いたシーン
Michel Legrand - The Transport Bridge
橋に着いたシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『The Transport Bridge』です。
オープニングはトラックがロシュフォール運搬橋に到着したシーンからはじまります。ムーディーな音楽がさりげなく流れると、音楽に合わせてゆっくりと伸びをするように踊りはじめるのでびっくりした方も多いのではないのでしょうか?(私はびっくりしました!)
『ラ・ラ・ランド』のオープニング『Another Day of Sun』は橋の上の渋滞シーンでしたが、やはり『ロシュフォール恋人たち』へのオマージュだと言われています!
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広場のシーン
Michel Legrand - キャラバンの到着
広場のシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『キャラバンの到着』です。
50年以上前に作られた映像だとは思えないほどポップで目が離せない名シーンです!棒を持ってのダンスもひとりひとりの動きは全然揃っていないのに、画面に映る全員が生き生きしていて、喜びを体全体で表現するようなダンスに感動させられます!
『キャラバンの到着』は吹奏楽やクラシックのコンサートでもお馴染みの映画音楽ですし、TV CMやフィギュアスケートで使われたことでも有名です!
双子登場のシーン
Michel Legrand - 双子姉妹の歌
双子登場のシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『双子姉妹の歌』です。
映画のジャケットになってる事も多いこのシーン、ピンクと黄色の色違いでお揃いの衣装を身につけた2人が歌って踊るのは『双子姉妹の歌』です。ブロンドの方がカトリーヌ・ドヌーブ、赤毛の方が姉のフランソワーズ・ドルレアックです。そっくりですよね!
THE 60’sシルエットのお揃いミニワンピース、隠しプリーツやウエストのラインがとってもキュートです!
カフェでマクサンスが歌うシーン
Michel Legrand - マクサンスの歌
カフェでマクサンスが歌うシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『マクサンスの歌』です。
金髪の美少年マクサンスが、心に浮かべた理想の女性に会えないと嘆くシーンで歌う歌です。
マクサンスは水兵としてロシュフォールに駐屯中との事ですが、ロシュフォールはフランスの大きな軍港として栄えた街だったそうです。この頃のフランスはド・ゴール政権の末期ですので、まだまだ軍事的緊張感が高かった時代です。
前作『シェルプールの雨傘』はアルジェリア戦争での悲恋が描かれていましたが、今作品でもキャラバンとすれ違う軍人達や街中の水兵達など、戦争の影をどこか感じさせられる演出が随所に挟まれています。
デルフィーヌの口喧嘩シーン
Michel Legrand - デルフィーヌとランシアン
デルフィーヌの口喧嘩シーンで流れた曲は、Michel Legrandの『デルフィーヌとランシアン』です。
曲の前半は街を颯爽と歩くデルフィーヌを中心としたダンスシーンの音楽となっています。通りを歩くデルフィーヌを追いかける長回しのシーンは短いながらも印象的です!
曲の後半はデルフィーヌが画商のランシアンと口喧嘩するシーンです。早口のフランス語で捲し立てられるデュエット曲は、ミュージカルナンバーとしてはかなり斬新で、喧嘩のシーンなのに聞いてて楽しくなってしまいますね!
カフェで男たちが自己紹介するシーン
Michel Legrand - 町から町へ
カフェで男たちが自己紹介するシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『町から町へ』です。
オレンジ&水色シャツの二人がようやく自己紹介をする『街から街へ』、エチエンヌ達の見せ場です!
オレンジシャツのエチエンヌ役を演じたジョージ・チャキリスは『ウエスト・サイド物語』(1961)のプエルトリコ系不良グループ『シャーク団』のリーダーを演じ、アカデミー助演男優賞を受賞した俳優です。ダンスが上手なだけじゃなく、踊りが表現になっているのがすごいですよね!
デルフィーヌが家で歌うシーン
Michel Legrand - デルフィーヌの歌
デルフィーヌが家で歌うシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『デルフィーヌの歌』です。
浮かない顔したデルフィーヌが画商で見た絵の作者に恋してしまったと歌うシーンです。
※以下ネタバレ注意※
デルフィーヌの歌のメロディ…聞き覚えがありませんか?実は『マクサンスの歌』と同じなんです!
この時点では絵を描いたのがマクサンスだとはっきりとは明かされていませんが、画商にあった絵こそがマクサンスの理想の女性だということが、曲によって暗示されているのです。こういった仕掛けがミュージカルの醍醐味ですよね…!
ムッシュ・シモンが過去の恋を話すシーン
Michel Legrand - シモンの歌
ムッシュ・シモンが過去の恋を話すシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『シモンの歌』です。
楽譜屋さんのシモン・ダムが過去の恋を歌うのが『シモンの歌』です。過去の恋人は「マダム・ダム(ダム夫人)」になるのが嫌だという理由で、子供も出来たのに離れていってしまった…と歌います。
マダム・ダム…日本人でも笑ってしまう名前ですね!でもそんな理由で別れてしまうなんて、とも思います。
アンディーが歌って踊るシーン
Michel Legrand - アンディの歌
アンディーが歌って踊るシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『アンディの歌』です。
ハリウッドを代表するミュージカル俳優ジーン・ケリーの登場です!『雨に唄えば』や『巴里のアメリカ人』で知られるジーン・ケリー、アメリカ人らしく軽快な足捌きやタップダンスを見せてくれます。監督のジャック・ドゥミはアンディ役にどうしてもジーン・ケリーをキャスティングしたく、撮影を彼のスケジュールに合わせたと言われています。
2人組の男女が別れるシーン
Michel Legrand - 水夫、友達、恋人、または夫
2人組の男女が別れるシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『水夫、友達、恋人、または夫』です。
遊ばれるのはうんざりと踊り子達が辞めると言い出すシーンです。目が青く無いから振るのは…あんまりだと思いますが、似たもの同士の男女という感じがよく出ていて面白いですね!
歌詞の内容的にも『町から町へ』へのアンサーソングなのかなぁと思います。ダンサー達がメインのシーンだけあって、キレが良くオシャレなシーンです。
母イヴォンヌが過去の恋を話すシーン
Michel Legrand - イヴォンヌの歌
母イヴォンヌが過去の恋を話すシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『イヴォンヌの歌』です。
カフェの店主で双子の母イヴォンヌが過去の恋を歌うシーン、ムッシュ・シモンの相手は母であったことが明かされます。曲も『シモンの歌』と同じメロディーですね!
イヴォンヌ役を演じたダニエル・ダリューはトーキー時代から活躍したフランスを代表する名女優です。今作品でも唯一吹き替えなしで歌を披露しています。
ソランジュが家で歌うシーン
Michel Legrand - ソランジュの歌
ソランジュが家で歌うシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『ソランジュの歌』です。
ソランジュが恋心を歌うこの歌、アンディの歌と同じメロディですがソランジュが歌うとすっかりフランス風になるのが驚きです!リズミカルで楽しい歌です。
ソランジュ役のフランソワーズ・ドルレアックは映画公開年の悲運な自動車事故により25歳の若さで亡くなってしまいました。カトリーヌ・ドヌーブ同様の素晴らしい女優になったでしょうに…とても残念です。
双子と男達が家で歌うシーン
Michel Legrand - From Hamburg To Rockefort
双子と男達が家で歌うシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『From Hamburg To Rockefort(ハンブルグからロシュフォールへ)』です。
踊り子達がいなくなってしまったから、お祭りで踊ってくれと頼まれた双子が披露する歌が『From Hamburg To Rockefort』です。陰気すぎると言われ、結局双子の歌を披露し4人で歌い踊るシーンに移り変わります。
後半は広場や画商、カフェなど次々と流れるように場面と曲が移り変わり、キャスト全員が自分のテーマを歌う映画前半のまとめのような作りになっています。カラフルでとっても楽しい曲ですね!
カフェでバラバラ事件の話をするシーン
Michel Legrand - バラバラ事件の女
カフェでバラバラ事件の話をするシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『バラバラ事件の女』です。
バラバラ事件があったと新聞を読みながらイヴォンヌが歌うシーンの曲です。被害者はローラ・ローラ、踊り子だったと話しています。
このローラ、実はジャック・ドゥミ監督のデビュー作『ローラ』の主人公ローラの事だそうです。港町ナントが舞台の恋愛映画です。マクサンスはこれからナントにいくところでしたね。
ちなみに、前作『シェルプールの雨傘』では、「ローラはシェルプールに行った」と歌の中で名前が出てきています。
双子とマクサンヌ、アンディーそれぞれが出会うシーン
Michel Legrand - the meeting
双子とマクサンヌ、アンディーそれぞれが出会うシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『the meeting』です。
※以下ネタバレ有り※
双子の運命の人であるマクサンスとアンディーが出会うシーン、それぞれのテーマが入り乱れてハッピーな雰囲気の曲です。
そっくりで仲良しの双子として描かれていますが、理想の男性像はまるで違う二人、相手の運命の相手に出会っても何も感じず、むしろつれない態度なのが面白いですね!
お祭りで双子が歌い踊るシーン
Michel Legrand - 夏の日の歌
お祭りで双子が歌い踊るシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『夏の日の歌』です。
男の踊り子達がバスケをしながら踊ったり双子のバレエ教室の生徒達が歌と踊りを披露したりと盛りだくさんのお祭りで楽しそうですね!
双子が着飾って舞台で披露するのが『夏の日の歌』です。愛に生きる2人にぴったりの曲ですね。
映画に用いられた全曲を作曲したミシェル・ルグランは映画に使われたメロディー以外にも複数パターンのメロディーを作曲したそうです。他のパターンは映画内では使われなかったものの、音源としては残されているので、興味がある方は是非そちらもチェックしてみてくださいね!
双子が男達の下心にガッカリするシーン
Michel Legrand - いつもいつも
双子が男達の下心にガッカリするシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『いつもいつも』です。
「男ってこうよね」みたいに双子が歌うシーン、男と女の違いがよく描かれていますね。『シェルブールの雨傘』はラストまで切ない恋物語でしたが、『ロシュフォールの恋人たち』はすれ違いさえもコミカルに描いています。
にぎやかなお祭りの後の静けさは、いつも少し寂しいものですよね。
ソランジュとアンディが出会うシーン
Michel Legrand - Concerto Ballet
ソランジュとアンディが出会うシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『Concerto Ballet』です。
本物の愛を探しにパリに向かおうとする双子たちでしたが、ムッシュ・シモンが呼びにきた事で物語が加速します。アンディが待っていると聞き、会いに行ったソランジュが運命の人に再会し、踊るシーンで流れる音楽はソランジュが作曲したこのピアノコンチェルトです。
今までずっとカラフルだったのに、このシーンだけ白を基調としていて印象的です!
キャラバンが出発した後の広場のシーン
Michel Legrand - キャラバンの出発
キャラバンが出発した後の広場のシーンで流れた曲は、Michel Legrandの『キャラバンの出発』です。
ソランジュはアンディと一緒に、母イヴォンヌはムッシュ・シモンと再会したものの、デルフィーヌはそんなことを知らずパリに向かうことになります。デルフィーヌだけ可哀想に…と思いきや、キャラバンにマクサンスが乗り込むところで映画が幕を閉じます。この二人が出会うところを移さないのが粋ですよね!
筆者の感想
『ラ・ラ・ランド』を映画館で観て感動し、デミアン・チャゼル監督のインタビュー記事を読んでいたら『ロシュフォールの恋人たち』から影響を受けたと話していたので観てみたら…こんなにハッピーでおしゃれな映画を今まで見ていなかったなんて!て衝撃を受けました。
オープニングのモダンジャズバレエから名曲『キャラバンの到着』、姉妹が楽しく歌う『双子姉妹の歌』…曲やダンスの雰囲気など、アメリカのミュージカルとは一味違っているので、見比べてみると面白いと思います。またサントラ版には名曲のインスト版なども収められているので、こちらも要チェックですよ!
仕事がうまくいかずちょっと落ち込んでいる時や恋に悩んでいる時にぜひ見てほしいイチオシ作品です!