1997年4月26日公開の映画『イングリッシュ・ペイシェント』
マイケル・オンダーチェのブッカー賞受賞作品『イギリス人の患者』が原作の壮大な恋愛映画です。第69回アカデミー賞で12部門にノミネートされ、そのうち作品賞・監督賞を含む9部門を受賞しました。
この記事では、映画『イングリッシュ・ペイシェント』で流れた音楽16曲をご紹介します。
『イングリッシュ・ペイシェント』で流れた曲とは?
英国王立地理学会のメンバーが歌う曲
Giacomo Puccini - Tosca / Act 3 E lucevan le stelle
英国王立地理学会のメンバーが歌う曲は、Giacomo Pucciniの『Tosca / Act 3 - E lucevan le stelle』です。
アルマシー達が所属する英国王立地理学会のメンバーが砂漠でキャンプファイヤーをし、シャンパンボトルを回すゲームをするシーンです。
『星は光りぬ(E lucevan le stelle)』は、イタリアのオペラ作曲家ジャコモ・プッチーニの代表作『トスカ』(1900年初演)の第3幕で、テノール歌手によって歌われるアリアです。かつて一世を風靡した「三大テノール」ルチアーノ・パヴァロッティ、プラシド・ドミンゴ、ホセ・カレーラスらがそれぞれ十八番とし、フィギュアスケートでもよく使われる人気の曲です。
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ジェフリーが歌い踊る曲
Frank Silver、Irving Cohn - Yes! We Have No Bananas
ジェフリーが歌い踊る曲は、Frank Silver、Irving Cohnの『Yes! We Have No Bananas』です。
キャサリンの夫ジェフリーを演じるコリン・ファースが、「待ってました!」とばかりに立ち上がり、見事なパフォーマンスを見せてくれるシーンです!
『イエス・ウィー・ハブ・ノー・バナナ (Yes! We Have No Bananas) 』は、
1922年にブロードウェイで大ヒットしたレヴュー『Make it Snappy』でのコミックソングで、フランク・シルヴァーとアーヴィング・コーが作りました。このレヴューの脚本も手がけたコミック俳優エディー・カンターが劇中で歌い人気になり、様々なアーティストにカバーされ1920年代を代表するヒット曲になりました。
アルマシーとキャサリンがダンスをするシーン
Shepheard’s Hotel Jazz - Where or When
アルマシーとキャサリンがダンスをするシーンで流れた曲は、Shepheard’s Hotel Jazzの『Where or When』です。
カイロのシェファーズ・ホテルでのダンスシーンという設定です。1841年に建てられたシェファーズ・ホテルは、当時のカイロで最高級の社交場だったそうですが、1952年のエジプト革命で焼失してしまったため、別の場所で撮影されました。
この曲は、作曲家のロジャースと作詞家のハートによるブロードウェイ伝説のコンビ、ロジャース&ハートがブロードウェイ・ミュージカル『Babes in Arms』(1937)のために作った曲です。1939年公開で、大ヒットした映画版『Babes in Arms(邦題:青春一座) 』でも使われています。
何十年にもわたり、多くのアーティストにより歌い継がれているスタンダードナンバーです。
ハナがピアノで演奏する曲
Johann Sebastian Bach - Goldberg Variations, BWV 988: I. Aria
ハナがピアノで演奏する曲は、Johann Sebastian Bachの『Goldberg Variations, BWV 988: I. Aria』です。
修道院の図書館にピアノがあるのを見つけたハナが、傾いたピアノに体の向きをあわせて演奏します。
『ゴルトベルク変奏曲 BWV.988』は、バッハが、不眠症に悩む伯爵のために作った曲で、演奏したバッハの弟子(ヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルク)の名前からゴルトベルク変奏曲の俗称がついたと言われています。バッハ自身による表題は『2段鍵盤付きクラヴィチェンバロのためのアリアと種々の変奏』で、1741年に出版されました。表題の通りアリアを主題とした30の変奏曲で構成されていて、ここではテーマのアリアが演奏されています。
キップが修道院図書館に現れるシーン
Johann Sebastian Bach - Goldberg Variations, BWV 988: Variatio 1
キップが修道院図書館に現れるシーンで流れた曲は、Johann Sebastian Bachの『Goldberg Variations, BWV 988: Variatio 1』です。
爆弾が仕掛けられているかもしれないと、シーク教徒の英国兵キップが現れ、ハナが演奏を止めるシーンです。
ここでハナが演奏している曲は、『ゴルトベルク変奏曲 BWV.988』の第一変奏曲です。変奏曲とは、リズム、拍子、和声などを変えたり、旋律にさまざまな装飾を付けるなどしてテーマを変形させていく曲の形式です。この曲は、第一変奏を含む30種類の変奏を楽しめます… バッハの凄さがわかる素晴らしい作品です!
2台のジープが砂漠を進むシーン
Slim & Slam - Flat Foot Floogie
2台のジープが砂漠を進むシーンで流れた曲は、Slim & Slamの『Flat Foot Floogie』です。
現在のアルマシーがこの曲を口ずさみ、過去の回想シーンにつながります。
ジャズミュージシャン、スリム・ゲイラードとスラム・スチュアートのコンビ、スリム&スラムは、1930年代後半から1940年代前半にかけて活動し人気を博していたそうです。『フラット・ フット ・フルージー』は、スリム&スラムの代表作で1938年にリリースされました。
ジープでキャサリンが歌う歌
Sofi Tukker - The Darktown Strutters' Ball
ジープでキャサリンが歌う曲は、Sofi Tukkerの『The Darktown Strutters' Ball』です。
アルマシーがいつも歌を歌っていることを指摘したキャサリンが、ジープの上に乗っていた仲間と共に歌う曲です。
『Darktown Strutters' Ball』は、カナダ生まれのアフリカ系アメリカ人作曲家シェルトン・ブルックスが作った曲で、1917年に出版されました。ヴォードヴィルの女王、ソフィー・タッカーがショーで披露し人気となり、楽譜は300万部以上販売され、人気のジャズ・スタンダードナンバーになりました。
ソフィー・タッカーは、1920年代までにトーキー映画や、イギリスでのコメディ・ミュージカルに出演するなど活動を広げ、1926年には当時の英国王、ジョージ5世の前で演奏するなどその人気はヨーロッパに広がっていたそうです!
浴槽のなかでアルマシーが歌う歌
Harold Arlen - It's Only a Paper Moon
浴槽のなかでアルマシーが歌う曲は、Harold Arlenの『It's Only a Paper Moon』です。
アルマシーが破いてしまったキャサリンのドレスを縫いながら歌う曲です。
1932年にブロードウェイで上演された『The Great Magoo』の挿入歌で、ハロルド・アーレン(作曲)、エドガー・イップ・ハーバーグ(作詞)、ビリー・ロウズ(作詞)らによって作られ、1933年に出版されました。
コメディ映画『当って砕けろ(原題:Take a Chance)』(1933)や、 ロードムービー『ペーパー・ムーン』(1973)の主題歌として起用されたことでも知られる人気のジャズ・スタンダードナンバーです。
クリスマスパーティでイギリス兵が歌う歌
Franz Xaver Gruber - Stille Nacht, Heilige Nacht
クリスマスパーティでイギリス兵が歌う曲は、Franz Xaver Gruberの『Stille Nacht, Heilige Nacht』です。
きよしこの夜(原題:Stille Nacht, Heilige Nacht)』は、世界的に有名なクリスマスキャロルで、1818年のクリスマスにオーストリアの聖ニコラウス教会で初演されました。
オルガンが故障し困ったヨゼフ・モール司祭が、教会オルガン奏者、フランツ・クサーヴァー・グルーバーに自作の詩(ドイツ語)をわたし、ギターで伴奏できる讃美歌の作曲を依頼し、出来上がったのがこの作品だそうです!今では世界中で翻訳され、320の言語で歌われているそうです。
乾杯の後にイギリス兵が歌う歌
Traditional - God Save the King
乾杯の後にイギリス兵が歌う曲は、『God Save the King』です。
キャサリンの夫、ジェフリーがサンタクロースの格好で入ってきます!
『God Save the King(邦題:神よ王を守り給え)』は、イギリスの国歌とされている曲で、起源は不明ですが、1745年におきた国家的危機において、平穏を願う人々の間で広まったのがはじまりとされています。イギリス王室の継承者は男女の性別を問わないので、この讃歌は、君主が国王か女王かによって、歌詞がKingとQueen、him/his やher等と切り替わる特徴を持ちます。
ホテルでアルマシーがかけたレコードの曲
Traditional - Szerelem, Szerelem
ホテルでアルマシーがかけたレコードの曲は、『Szerelem, Szerelem』です。
あまり自分のことを語らないアルマシーがキャサリンにルーツを語るシーンで流す曲です。キャサリンが突然思いっきり叩くのでビックリしました!
『Szerelem, Szerelem』は、ハンガリー民謡です。ハンガリーのフォークボーカリストで作曲家・女優でもあるマルタ・セバスチャンが1984年に録音した音源が使われています。マルタ・セバスチャンは、ハンガリー、トランシルバニア地方の民謡を継承する国民的歌姫といわれています。
この曲はオープニングシーンでも使われています。
アルマシーの部屋でカラヴァッジョがかけていたレコード
Irving Berlin - Cheek to Cheek
アルマシーの部屋でカラヴァッジョがかけていたレコードで流れた曲は、Irving Berlinの『Cheek to Cheek』です。
アルマシーがキャサリンと市場を歩き、指抜きを買うシーンから流れています。カラヴァッジョがアンソニーにこの曲の作曲者についてクイズを出していました。
この曲は、アルマシーが言うとおり、史上最高のダンシングペア、アステア&ロジャースによる共演第4作目のミュージカル映画『トップ・ハット(原題:Top Hat)』(1935)の挿入歌です。アーヴィング・バーリンが作ったこの曲は、アステア&ロジャースの名声を不朽のものにしたといわれています。
アルマシーがレコードの曲名をあてるシーン
Paul Whiteman & his Orchestra - Wang Wang Blues
アルマシーがレコードの曲名をあてるシーンで流れた曲は、Paul Whiteman & his Orchestraの『Wang Wang Blues』です。
カラヴァッジョが盗んだレコードをかけると、すぐに曲名を当てるアルマシー。本当に音楽好きなんですね!
この曲は、「キング・オブ・ジャズ」ことポール・ホワイトマン率いる Paul Whiteman & his Orchestra が1920年にリリースした曲で、ビルボードのポップシングルチャートで 6 週間連続1位を記録しました。映画の中ではベニー・グッドマンが演奏したバージョンが使われています。
野外シネマのシーン
Harry Warren - Pettin' in the Park
野外シネマのシーンで流れた曲は、Harry Warrenの『Pettin' in the Park』です。
アルマシーとキャサリンは人目を避け、夜の野外シネマで待ち合わせをしていました。
野外シネマで流れている映画は、1933年に公開された米・ミュージカル映画『ゴールド・ディガース(原題:Gold Diggers of 1933)』の人気ナンバーです。当時ヒット曲を次々生み出していたハリー・ウォーレン(作曲) とアル・ダブリン(作詞) のコンビが作ったデュエット曲で、映画ではルビー・キーラーとディック・パウエルが歌っています。
カイロでの最後のディナーパーティーで演奏されている曲
Richard Rodgers - Manhattan
カイロでの最後のディナーパーティーで演奏されている曲は、Richard Rodgersの『Manhattan』です。
遅刻してきたアルマシーは既にすっかり酔っています…ディナー会場では、バンドがこの曲を演奏していました。
この曲は、リチャード・ロジャース(作曲)とロレンツ・ハート(作詞) による伝説のコンビ、ロジャース&ハートがレヴュー『The Garrick Gaieties』(1925)のために書いた曲で彼らの最初のヒット曲です。冒頭のセリフから「We'll Have Manhattan」と呼ばれることも多いです。
以降ロジャース&ハートは人気作家コンビとして大活躍し、ハートが亡くなる1943年までミュージカル作品28本、500曲以上を作詞作曲しました!
ドイツ軍降伏の知らせを知るシーン
Irving Berlin - Cheek to Cheek
ドイツ軍降伏の知らせを知るシーンで流れた曲は、Irving Berlinの『Cheek to Cheek』です。
ドイツ軍が降伏したという知らせを知ったシーンではアルマシーの病室でカラヴァッジョがかけていたレコードの曲が流れています。
終戦後の夜、カラヴァッジョとハナが踊る曲
Count Basie - One O'Clock Jump
終戦後の夜、カラヴァッジョとハナが踊る曲は、Count Basieの『One O'Clock Jump』です。
キップが踊らないので、ハナがカラヴァッジョと踊っているシーンです。
この曲は、カウント・ベイシーが1936年に結成したビッグバンド「カウント・ベイシー・オーケストラ」を一躍スターダムに押し上げた曲で1937年にリリースされ、バンドのテーマ曲となりました。
その後、さまざまなアーティストにカバーされましたが、ここではカウント・ベイシーと並ぶスウィング・ジャズの代表的存在ベニー・グッドマンの演奏が使われています。
砂漠を歩くアルマシーが歌う曲
Sofi Tukker - The Darktown Strutters' Ball
砂漠を歩くアルマシーが歌う曲は、Sofi Tukkerの『The Darktown Strutters' Ball』です。
アルマシーは瀕死の重症を負ったキャサリンを助ける為に砂漠を3日間歩き続けます。この曲は、映画前半、ジープの中でキャサリンが歌っていた歌です。
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