1994年4月29日公開の映画『ペリカン文書』
『プリティ・ウーマン』で一躍有名となったジュリア・ロバーツが法学生を演じた硬派なリーガルサスペンスです。『レインメーカー』や『ザ・ファーム 法律事務所』、『評決のとき』などの原作でも知られるジョン・グリシャムによる同名小説が原作です。
この記事では、映画『ペリカン文書』で流れた音楽10曲をご紹介します。
『ペリカン文書』で流れた曲とは?
フレンチ・クォーターでダービーが姿を消すシーン1曲目
Lynn August - Creole Song
フレンチ・クォーターでダービーが姿を消すシーン1曲目は、Lynn Augustの『Creole Song』です。
車の爆発でトーマスが命を落とし身の危険を察したダービーは、人で賑わうフレンチ・クォーターを訪れ、姿を隠します。
『Creole Song』は、アメリカのザディコ・アコーディオン奏者リン・オーガストが1992年にリリースしたアルバム『Creole Cruiser』に収録されています。ザディコ (Zydeco)とは、19世紀中頃にルイジアナの南西部に暮らしていたアフリカ系アメリカ人をルーツに、R&Bやブルースの要素を取り入れて発展してきた音楽で、アコーディオンがメインの楽器として演奏されます。
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フレンチ・クォーターでダービーが姿を消すシーン2曲目
Aretha Franklin - Chain Of Fools
フレンチ・クォーターでダービーが姿を消すシーン2曲目は、Aretha Franklinの『Chain Of Fools』です。
フレンチクォーターは、多数のレストランやライブハウスなどが並ぶ、ジャズの発祥の地ニューオーリンズ観光の中心地です。
この曲は、米・歌手アレサ・フランクリンが1967年にリリースした曲で、アルバム『Honey』(1968)に収録されています。
アレサ・フランクリンは、女性アーティストとして初めて「ロックの殿堂」入りを果たし、グラミー賞の受賞歴18回、また、過去3人の米大統領の就任式でパフォーマンスした、異名の通り誰もが認める「クイーン・オブ・ソウル」です。彼女の半生を描いた伝記ドラマ映画『リスペクト(原題: Respect)』(2021)では、ジェニファー・ハドソンがアレサ・フランクリンを演じています。
バーでバンドが演奏している曲
Irene and The Mikes - Wiggle
バーでバンドが演奏している曲は、Irene and The Mikesの『Wiggle』です。
変装したダービーが、友人アリスに助けを求め待ち合わせたバーで演奏されています。
人気の海外ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』で、主役キャリーの親友で弁護士のミランダ・ホッブスを演じていたシンシア・ニクソンがアリスを演じていました。
『Wiggle』は、ニューオリンズ出身の女性歌手アイリーン・セイジ(Irene Sage)とギタリストのマイク・ダービーが結成したバンド、Irene and The Mikesの曲で、マイク・ダービーがこの映画のために書き下ろした曲です。
男が道の真ん中で突然歌う歌
Walter Donaldson - My Mammy
男が道の真ん中で突然歌う歌で流れた曲は、Walter Donaldsonの『My Mammy』です。
アリスと別れた後、ダービーにしつこく言い寄ってくる男が、店の外まで追いかけてきて、彼女の腕を強く掴み歌い出すシーンです。
『マイ・マミー』は、ウォルター・ドナルドソン(作曲)、ジョー・ヤングとサム・M・ルイス(作詞)が作り、『アイ・ラブ・ルーシー』の夫役で後に有名になるウィリアム・フローリーが1918年にヴォードヴィル風の演目でとりあげ知られるようになりました。
その後、アル・ジョルソンが、ブロードウェイのショー『シンドバッド(原題:Sinbad)』(1918)でこの曲を歌い、アル・ジョルソンを成功へと導いた曲として知られています。
ダービーが怪しい男に追いかけられるシーン
Rod Piazza and The Mighty Flyers - The Upsetter
ダービーが怪しい男に追いかけられるシーンで流れた曲は、Rod Piazza and The Mighty Flyersの『The Upsetter』です。
ようやく怪しい男から逃れられたと思ったダービーを、次に現れた二人目の男が、走って追いかけます。ダービーが感じていた危険は本物だったと確信するシーンです。
マイティ・フライアーズ(Mighty Flyers)は、ブルース・ハーモニカ奏者ロッド・ピアッツァと妻でピアニストのハニー・ピアッツァが率いるバンドで、70 年代初頭から活動しています。バンドリーダーのロッド・ピアッツァが1986年にリリースしたアルバム『Harpburn』にこの曲は収録されています。
怪しい男と街の人の乱闘シーン
Greg Ginn - You Drive Me Crazy
怪しい男と街の人の乱闘シーンで流れた曲は、Greg Ginnの『You Drive Me Crazy』です。
人混みの中を怪しい男から逃げるダービーは、巨漢の男にぶつかってしまいます。いかにも怖そうなその人は、怪しい男を取り捕まえダービーを助けてくれます!
『You Drive Me Crazy』は、1976年に南カリフォルニアで結成された、ハードコア・パンク・バンド、ブラック・フラッグのギタリスト、グレッグ・ギンが1993年にリリースした曲で、アルバム『Getting Even』に収録されています。
トーマス・キャラハン教授の葬儀のシーン
François Couperin - Troisième leçon de ténèbres: Jod. Manum suam misit hostis
トーマス・キャラハン教授の葬儀のシーンで流れた曲は、François Couperinの『Troisième leçon de ténèbres: Jod. Manum suam misit hostis』です。
身を隠す必要があるダービーは、葬儀に参列できず教会の目の前の建物から祈りを捧げています。友人アリスは、「ダービーは叔母のところにいて秋までもどってこない!」と、頼まれた通りに吹聴して回っていましたね。
ここで使われている曲は、17世紀後半から18世紀にかけて活躍したフランス・バロックを代表する作曲家フランソワ・クープランが1714年の典礼のために書いた宗教声楽曲『ルソン・ド・テネブレ』の第3番『Manum suam misit hostis ad omnia desiderabilia eius.』(宝物のすべてに敵は手を伸ばした)です。
遊園地でバンドが演奏している曲
Larry Shields 、Henry Ragas - Clarinet Marmalade
遊園地でバンドが演奏している曲は、Larry Shields 、Henry Ragasの『Clarinet Marmalade』です。
トーマスの友人、ヴァーヒークに成りすましたカーメルが、ダービーと接触し、何者かによって殺害されるシーンです。
ジャズ界で初の商業用レコード を発表したことで知られるオリジナル・ディキシーランド・ジャズバンドのラリー・シールズとヘンリー・ラガスが1918年に作ったディキシーランド・ジャズスタンダードで、『クラリネット・マーマレード・ブルース』とも呼ばれています。1926年にフレッチャー・ヘンダーソン、1927年にフランキー・トランバウアーによって録音されました。
大統領が教会から出てくるシーン
Johann Sebastian Bach - Cantata “Ich will den Kreuzstab gerne tragen”, BWV 56 - 5. Choral: “Komm, o Tod, du Schlafes Bruder”
大統領が教会から出てくるシーンで流れた曲は、J.S.Bachのコラール『来たれ、おお死よ、眠りの兄弟よ』です。
厳重な警戒のもと教会を訪れた大統領が、報道陣から質問攻めに合うシーンです。
バッハが作曲した全5曲からなる教会カンタータ第56番『われは喜びて十字架を負わん』から、第5曲コラール『来たれ、おお死よ、眠りの兄弟よ』です。教会の礼拝で、特定の日を祝うための作られた曲ですが、バスの独唱カンタータとして人気が高く、多くのバスやバリトン歌手がレパートリーとしています。
大学前でのデモで演奏されている曲
Daniel Emmett - Dixie
大学前でのデモで演奏されている曲は、Daniel Emmettの『Dixie』です。
グランサムが尾行をまくために、ジョージタウン大学にタクシーで乗り付け、デモの中に潜り込むシーンです。
19世紀アメリカではブラックフェイス(黒人に扮した白人芸人)によるミンストレル・ショーが流行していました。『Dixie』は、この分野で活躍していたダニエル・エメットが1859年に作りニューヨークの劇場で披露した曲で、『I Wish I Was in Dixie』とも呼ばれています。アメリカ南部を中心に人気となり、エイブラハム・リンカーンもこの曲を気に入っていたそうです。3年後に起こったアメリカ南北戦争では南軍のテーマ・ソング的に扱われました。