2024年5月17日公開の映画『碁盤斬り』。
柳田格之進(草彅剛)が、娘のお絹(清原果耶)と江戸で貧しい生活を送りながらも、武士としての誇りを失わずに生きる物語。古典落語「柳田格之進」をベースにしており、白石和彌監督による初の時代劇作品です。
この記事では、映画『碁盤斬り』のネタバレ解説を劇場鑑賞者が解説していきます。
※前半はネタバレ無し、後半は結末までのストーリーを感想・解説と合わせて紹介します。
どんな映画?おすすめポイントを紹介!
碁盤斬り
- 未体験
- 4
- 感情移入
- 4
- 再鑑賞
- 3
- 予測不可
- 3
- サウンド
- 4
武士の生き様を見届けたくなる作品!囲碁がわからなくても演技に引き込まれる中、特に草彅剛の熱演に見入ってしまう作品です。
評価は年間100作品以上を鑑賞する執筆者こでぃもの実体験をもとにしています。
ストーリー
柳田の過去が徐々に明かされていき、彼の心情を考えさせられるストーリーが見どころですね。娘のお絹との関係が微笑ましい一方で、武士としての生き様を感じさせるでしょう。
演出
囲碁の戦いも何回かありますが、ルールがわからなくても役者の演技から勝負が順調なのかどうかが伝わってきました。役者の表情にズームしたり、碁盤が良く見えるアングルから映し出したり、カメラワークにもこだわりを感じさせます。
殺陣のシーンも見ものですよ!
その作品ならではの切り口
囲碁と武士の生き様をテーマにした今作ならではの切り口が良かった!囲碁のシーンは丁寧さがあり、生き様を感じるシーンは熱意を感じさせました。
柳田の動向も気になることでしょう。
おすすめポイント
映画館だと碁を打つ音が鳴り響くのが良かった!静寂な館内だからこその響きを感じさせましたね。音楽もすてきだなと思えるシーンが多く、祭囃子や掛け声などのあるシーンが印象的です。
当時の言葉をそのまま使うことが多いので、聞きなれないとストーリーが難しく感じるかも?当時を思わせる雰囲気を楽しみつつ、囲碁や詳細な内容について調べてみるのも良いかもしれませんね。
以下より重要なネタバレを含みます。
ネタバレありで解説!
柳田と囲碁
浪人の柳田は彦根藩を追われ、娘のお絹と共に江戸の長屋で暮らしていました。部屋の借賃の支払いが滞る中、仕事を終えた柳田は1両を入手。帰り際に賭碁の店に立ち寄ると、源兵衛と勝負することに…柳田の勝ちが見える中、唐突に彼は負けを認めて店を立ち去ったのです。賭けでお金を失う中、お絹は父のことを思うのでした。
萬屋を営む源兵衛はある日、客から預かっていた高級な茶碗を欠けさせたとのことで揉めます。そこに柳田が通りがかり、目利きができたため茶碗の価値を言い当てます。客は退き、源兵衛は柳田の元に出向いてお礼を渡そうとしました。
柳田は断ると、源兵衛は囲碁で勝負し、負けたら引き下がると約束。柳田は勝利し、嘘偽りない勝負を心掛けていると話します。その後、柳田と源兵衛は良き友となり、囲碁を楽しむのでした。
ケチな源兵衛が「仏の源兵衛」と呼ばれるようになる心温まる展開でしたね。柳田との関わりを経て、源兵衛は心が洗われたような心地だったのでしょうか。登場時の表情の違いが印象的です。
柳田の囲碁の腕も確かであり、弥吉たちに教える際には的確だったなと思いました。(囲碁のルールがわからなかったので、配信後に改めて見たいです…!)
源兵衛と弥吉
ある十五夜の日、源兵衛は柳田とお絹を招きます。その際に弥吉は客から五十両を受け取り、源兵衛へ渡しますが柳田と囲碁の勝負に夢中になっていました。次の日、源兵衛はお金の在りかに心当たりが無いと気付きます。
番頭は弥吉に「柳田が持ち去ったのでは?」と言い、使いに出させます。その頃、柳田は藩の仲間である左門から情報を得て、妻の仇を討つため旅に出ようとしていました。そこに、弥吉が来て「五十両を盗んでないか?」と問うのです。
武士としての誇りを持っていた柳田は怒りを露わにし、周りの人たちには誤解されてしまった様子…汚名に耐えられず、切腹しようと考えました。お絹は父から手紙を持たされた際に内容を見て父の切腹を止めます。
五十両を用立てるため、お絹は吉原に身を売る決意をします。柳田は改めて決意を固め、中山道へ…。仇である柴田は宿場などで賭碁をしているという話でしたが、なかなか見つかりません。
道中で左門に会い、同行を共にすることになりました。
何件か回ると柴田は江戸に向かったと判明。大晦日に大きな賭碁の会があり、柳田は責任者である長兵衛に掛け合って中に入れてもらいます。
五十両が失くなったり、左門が柴田のことを知らせに来たり、展開が大きく変わりましたね。柳田を疑いたくはないという感じが弥吉から伝わってきましたが…何より、源兵衛は微塵も柳田を疑ってはいなかったことが気がかりです。
左門の登場により、柴田が要因となって柳田の妻が自殺に追い込まれたと判明しましたね。囲碁の腕に覚えのあった柴田こら逆恨みされ、盗難の罪を柳田になすりつけたとのことです。(柳田は殿に気に入られており、進物番を務めていたようですね)
武士の誇りを持った柳田のために、お絹が吉原へ…大晦日にお金を返せなかったら店に出されてしまうという展開はハラハラしました。
決着
柴田を見つけた柳田と左門。盗んだ品を返せと言うと、藩を追われた人のために売り払ったとのこと…柳田は囲碁で勝負を挑み、首をかけると言いました。柴田は了承し、順調に勝ちに近づいたかと思われましたが…捨て石の戦法により負けが濃厚になります。
柴田は仕込杖を振り回し、柳田は刀を受け取って応戦。柴田の右手を切り落とし、介錯しました。
お絹の元へ向かった柳田ですが、弥吉が五十両を持ってきたことで事態は急変。「五十両が見つかった際には彼と源兵衛の首をもらう」と約束していた…そのため源兵衛は刀を構えますが、側にあった碁盤を斬ってその場を後にします。
柳田は吉原に五十両を返し、お絹を取り戻しました。左門は柴田の件を殿に報告へ。
後日、お絹と弥吉の入籍を祝う中、源兵衛は旅に出ます。
柴田は杖に頼って歩いていたようで、まさか仕込み杖だとは驚きでしたね。碁会で刀を振り回す柴田を止めるため、幾人もが挑みますが叶わず…柳田もなんとか刀をかわしつつ、長兵衛から刀を渡されて戦う!この一連のシーンはアクションが凄かったですね。柴田の首が落ちるシーンまでしっかり描くとは驚きでした。
源兵衛は五十両を持ったままトイレに行こうとし、いったん額の裏に置いとこうと考えていましたね。そのため、どこを探しても五十両は見つからず…年の瀬に額の入れ替えをする時に見つかったのです。このウッカリが命に関わるとは思いもよらなかったでしょうね。
柳田が弥吉たちに刀を向けるシーンはハラハラしましたね。2人が必死に庇い合い、柳田がどうするのか目が離せません。碁盤を斬った柳田の考えは定かではありませんが…柴田と交わした会話や藩の人のその後の話を聞いて思うことがあったのではと感じました。武士として正しく生き抜こうとする一連のテーマを改めて考えさせられる終わりです。
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散り椿
葉室麟の同名小説を原作とした2018年の日本映画。木村大作が監督を務め、瓜生新兵衛(岡田准一)の物語を描きます。藩の不正を訴えた彼が故郷を追われ、妻の篠(麻生久美子)の願いのために再び故郷へ…。人物どうしの関係性にも注目ですよ。
岡田准一演じる武士の姿に見惚れてしまう作品。武士としての誇りと生き様を考えさせられ、正義を取り戻すために命を懸けて戦う姿は見守りたくなるでしょう。
殺陣などの刀を振るう剣術シーンも必見です!
ミッドナイトスワン
内田英治監督による2020年の公開の映画。トランスジェンダーをテーマにし、凪沙(草彅剛)が少女の一果(服部樹咲)と心を通わせていきます。孤独な日々と心の成長などを感じさせるストーリーに注目です。
草彅剛の役回りに驚いた作品!辛そうな表情から、神妙な面持ちなど、見入ってしまう映画でしたね…。トランスジェンダーという難しい役柄と、孤独や痛みが伝わってくる演技が見どころでしょう。