Apple TV+で2025年9月5日から配信の映画『天国と地獄 Highest 2 Lowest』は、スパイク・リー監督とデンゼル・ワシントンによる社会派サスペンス作品。
音楽業界の大物プロデューサー、デヴィッド・キングが、息子の誘拐事件をきっかけに巨額の身代金と会社への思いを天秤にかけられます。
ジェフリー・ライトやイルフェネシュ・ハデラ、A$AP Rockyらも出演し、ニューヨークを舞台に成功者の栄光と試練が描かれます。
天国と地獄 Highest 2 Lowest
- 未体験
- 4
- 感情移入
- 3
- 再鑑賞
- 3
- 予測不可
- 5
- サウンド
- 5
黒澤明監督の映画のシーンを思い出すことが多く、現代版ならではの展開が見どころだった!
評価は年間100作品以上を鑑賞する執筆者こでぃもの実体験をもとにしています。
『天国と地獄 Highest 2 Lowest』は人気?どんな人が観ている?
映画祭でのお披露目後、劇場と配信で一気に話題になった注目作!スパイク・リーとデンゼル・ワシントンの再共演、黒澤明『天国と地獄』を現代に置き換えた物語が関心を集めていますよ。
誘拐事件の緊張感、親子のぶつかり合い、ニューヨークの空気、音楽の盛り上がりといった要素がかけ合わさっているのが見どころとなる今作。映画に詳しくない人でも楽しみやすく、サスペンスや家族ドラマが好きな方におすすめです。
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映画『天国と地獄 Highest 2 Lowest』で流れる12曲をシーンごとに解説!
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以下より重要なネタバレを含みます。
『天国と地獄 Highest 2 Lowest』をネタバレありで解説!
キング
キングは会社に関する話が上手く進んだことで「最高の日だ」と朝からご機嫌でした。そうして妻には「お金を切り詰めたい」と言いつつ、高校生の息子のトレイと車へ。バスケの体験キャンプにトレイを送り、運転手のポールが迎えに来るのを待ちます。
キングは車で自社の「スタッキンヒッツ・レコード」へ。何人かに相談したキングはお金を借りて会社の株を買い戻し、他社に売られるのを防ごうと考えていました。帰宅後、妻に会社の話や出会った頃のことを思い出しながら話をします。
そこに1本の電話があり、トレイを誘拐したと言われるキング。警察を呼び、リビングに捜査本部が作られました。しばらくするとトレイが戻り、カイルがさらわれていたと判明。犯人から電話があり、人違いであるとは承知してるとのこと…明朝に身代金の受け渡し方法を伝えると言って犯人は電話を切りました。

キングは音楽ビジネスが変わった今を嘆き、機械が歌を作るようになったと言っていましたね。そんな彼の過去の栄光や、今は音楽に専念できているのか問われる様子から彼の人となりが伝わってきます。経営のために必要な株を買い戻せれば再起できるのか気になりました。
トレイの誘拐騒ぎでは、彼と間違われたカイルの行方が心配になりましたね。スイス・フランの紙幣でお金を用意させる犯人ですが…運びやすい重量とのことで納得でした。
身代金
ポールはキングに懇願し、身代金の支払いを頼みました。キングはカイルを助けなければニュースでなんと言われるか…キャリアも終わるだろうと悩みます。トレイはSNSなどで批判され、「お金を払えば良いんだ」と父に悪態をつきました。キングは静かに叱り、トレイは父の心の冷たさを吐露。その後、キングは身代金を払うと決めます。
翌朝、犯人から電話があり、指定のマンハッタン行きの電車に乗るよう言われました。数人の警察が付いてくる中、ヤンキースの応援のため賑わう車内。数駅通過すると電話があり、後方の連結部に移動するよう言われます。キングがそこに向かうと、犯人が緊急ブレーキをかけたため、身代金が入ったリュックが落下。犯人は連携して金を運び、警察をまきました。リュックに付けていたGPSが消失し、犯人の行方は分からなくなります。
犯人に解放されたカイルは病院で手当を受け、マリファナの臭いやラップが聞こえたと警察に話しました。お金が戻らない中、キングはゲイヴから「2週間後に金を返さないと差し押さえがある」と言われ追い詰められます。加えて会社を売る話も無くなったと聞き窮地に陥りました。"

息子のためなら身代金を払っていたということと、ポールの子なら見捨てるのかということがじっくり問われていく映画の中盤。これまでの功績などを踏まえ、キングがじっくり考えていくのも分かるなと思いました。
そうして身代金の受け渡しが始まり、電車で何が起こるのかハラハラしましたね。パレードの騒ぎに乗じて犯人たちが逃げ切るのも見ものでした。黒澤明の映画『天国と地獄』の電車のシーンをもう一度見たくなるワンシーンでした。
犯人
キングは街を歩きながら歌を聞いていると、カイルが聞いたという歌を発見。ヤング・フェロンというアーティストを探して欲しいと警察に言いますが、捜査を後回しにされます。話を聞いたポールは町の情報からヤング・フェロンの住所を突き止めることに成功。キングはポールとその場所に向かい、ヤング・フェロンの妻から彼はスタジオにいると聞きました。
キングはヤング・フェロンの元に行って対話を試みますが…彼は銃を撃ってきて逃走。キングはヤング・フェロンを追いかけ、電車で追い詰めつつ彼を気絶させました。
その後、彼の部屋から身代金が見つかり、彼は収容されました。キングはヤング・フェロンの面会に行くと、「スタッキンヒッツ・レコード」と契約を持ち掛けられます。キングは小さな自分のレーベルを作ったと言い、彼の提案を拒否。
その後、キングは妻と息子と共にスーラの歌を聞きます。歌い終えたスーラに覚悟を問いかけ、『天国と地獄』という曲名を改めて噛みしめながら「始めよう」と言って物語は終わります。

最後のスーラの歌声が凄かったなと思いつつ、キングに歌を聞いてもらいたい人が多かったことも実感できましたね。ヤング・フェロンもキングに聞いてもらえて良かったかと思いきや…面会時の様子から「こうなったか」とも感じました。
何人かの歌が披露されたり、ピアノベースのBGM(サントラ)のみのパートがあったり、音楽にもこだわってた作品だなと思いました!Fergus McCreadieらによるサントラの曲『The Chase』が特に印象的です。
『天国と地獄 Highest 2 Lowest』に関連する作品ならこちらもオススメ!
『天国と地獄 Highest 2 Lowest』に関連する以下の2作品もおすすめ!
天国と地獄(1963年)
黒澤明監督による映画で、三船敏郎、仲代達矢、香川京子が出演します。横浜の丘の上に邸宅を構える靴会社の重役・権藤は、息子を誘拐したという電話が入り、警察が動き出すのが物語の前半。
そこから犯人の取り違いを知り、権藤は身代金を支払うべきか、会社の未来を守るべきかで葛藤します。倫理と資本、家族の責任が交差する社会派サスペンスです。

舞台は高台の洋館、湾岸の工場地帯、下町の路地、特急列車の車内など多彩!序盤のリビングで繰り広げられる張り詰めた会話劇、列車での受け渡しの緊迫感などが楽しめます。
黒白の強いコントラストで“天国(高台)”と“地獄(下町)”を画面構図で対比する撮影が巧みですよ。身代金を介した道徳的ジレンマと都市の階層を描く点が『天国と地獄 Highest 2 Lowest』を見た上でおすすめできる点と言えます。
BETTER MAN/ベター・マン
監督は『グレイテスト・ショーマン』のマイケル・グレイシー、出演はロビー・ウィリアムズ、ジョノ・デイヴィス、スティーヴ・ペンバートンらです。
ロビー・ウィリアムズの半生をミュージカルとして描く今作は、ボーイズグループでの成功が起点。ソロ転向後の飛躍を目指す彼は、名声と私生活のはざまで揺れていきます。

舞台はロンドンの街角、スタジオ、アリーナ、ツアーの楽屋など音楽ならではの要素がたくさん!大観衆の前でのダイナミックなステージ、練習場での振付合わせ、移動車内での静かな独白といった見どころがあります。
名曲が流れる中、高揚感のある展開やスターの光と影を体感させる今作。音楽産業に身を置く者が世評と向き合い、名声と代償を秤にかけるテーマは『天国と地獄 Highest 2 Lowest』と繋がることでしょう。