2022年11月11日公開の映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』
『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(2019)で映画監督として鮮烈なデビューを果たしたオリヴィア・ワイルドの2作目の作品です。ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズと『ミッドサマー』のフローレンス・ピューが主演をつとめ、話題となりました。音楽はジョン・パウエルです。
この記事では、映画『ドント・ウォーリー・ダーリン』で流れた音楽27曲をご紹介します。
『ドント・ウォーリー・ダーリン』で流れた曲とは?
オープニングシーン
Ray Charles - The Right Time
オープニングシーンで流れた曲は、Ray Charlesの『The Right Time』です。
バニー宅でのホームパーティーで、頭にグラスをのせた妻たちがレヴューのように振る舞い、それを夫たちが囃し立てるシーンです。
ここでは、ジャズ、ソウルミュージックを代表する盲目のピアニスト、レイ・チャールズが1958年にリリースしたヒット曲『The Right Time』が使われています。
50年代にニューヨークで活躍していたR&Bシンガー、ナッピー・ブラウンが1957年に録音したものがオリジナルで、『Night Time Is the Right Time』のタイトルでも知られています。
ホームパーティで夫婦がグラス片手に踊るシーン
Dizzy Gillespie - Bang Bang
ホームパーティで夫婦がグラス片手に踊るシーンで流れた曲は、Dizzy Gillespieの『Bang Bang』です。
1960年代アメリカでは、ブラック・ミュージックとラテン音楽が混合されたサウンドが特徴のブーガルーと呼ばれる音楽が流行していたそうです。
『Bang Bang』は、ブーガルーの生みの親として知られるプエルトリコ系アメリカ人ミュージシャン、ジョー・キューバとジミー・サバターが作った曲です。ジョー・キューバが率いるバンド、Joe Cuba Sextet が1966年にリリースしたオリジナルは100万部以上を売り上げました。
ここでは、モダン・ジャズのトランペット奏者ディジー・ガレスピーが同年リリースし、こちらも大ヒットしたインスト・バージョンが使われています。
アリスとジャックがふざけて車を運転するシーン
Peggy Lee - Where or When
アリスとジャックがふざけて車を運転するシーンで流れた曲は、Peggy Leeの『Where or When』です。
音楽は、翌朝家が揺れるシーンまで続きます。
この曲は、ロジャース&ハートがブロードウェイ・ミュージカル『Babes in Arms』(1937)のために作った曲で、大ヒットした映画版『Babes in Arms(邦題:青春一座) 』(1939)でも使われていたスタンダードナンバーです。ミュージカルでは、会ったばかりの若い男女が、ちょっとしたハプニングのあと、以前に会ったことがあるかのように感じ、歌うラブソングでした。
ここでは、日本でも人気のペギー・リーがベニー・グッドマン楽団と1941年にリリースしたバージョンが使われています。ペギー・リーは41年から2年間この楽団のメンバーでした。
ジャックの通勤シーン
Mel Tormé - Comin’ Home Baby
ジャックの通勤シーンで流れた曲は、Mel Torméの『Comin’ Home Baby』です。
ジャックや他の夫たちも皆、ビシッとスーツを着こなし、まるで車のCMのようにピカピカの車で出勤していきます。
『カミン・ホーム・ベイビー』は、ジャズの名ベーシスト、ベン・タッカーが1961年に作ったインスト曲で、1961年に米・ドラマー、デイヴ・ベイリー率いるデイブ・ベイリー・クインテットによってリリースされました。
ここでは、「ベルベットの霧」の愛称を持つ米国のジャズシンガー、メル・トーメが1962年にリリースした、女性ボーカルとの掛け合いがクールなボーカル・バージョンが使われています。
アリスが家事にいそしむシーン
Brenton Wood - The Oogum Boogum Song
アリスが家事にいそしむシーンで流れた曲は、Brenton Woodの『The Oogum Boogum Song』です。
ジャックを送り出すと、アリスは家事をテキパキとこなします。浴室も窓ガラスもピカピカです!
『ウーガム・ブーガム・ソング』は、ソウルR&Bシンガー、ブレントン・ウッドが、1967年にリリースした曲で、アルバム『Oogum Boogum』にも収録され世界的にヒットしました。『あの頃ペニー・レインと』(2000)や『グレイマン』(2020)でも使われています。
引越しの様子を見守りながらの噂話シーン
Pérez Prado - The Freeway Mambo
引越しの様子を見守りながらの噂話シーンで流れた曲は、Pérez Pradoの『The Freeway Mambo』です。
午前中のルーティン家事と、フランクの妻・シェリーのバレエレッスンを終えた妻たちが一息入れています。
『The Freeway Mambo』は、キューバ出身のバンドリーダーで、「マンボ王」の異名をもつペレス・プラードが1956年にリリースした曲です。マンボとは、ルンバをベースにジャズの要素が取り入れられたキューバ発祥のダンス音楽です。
ペレス・プラードがメキシコで結成したペレス・プラード楽団は、メキシコで成功をおさめた後、アメリカへ進出し、1950年代に世界中でマンボ旋風を巻き起こしました。
アリスが卵を押しつぶすシーン
Little Anthony & The Imperials - Tears on My Pillow
アリスが卵を押しつぶすシーンで流れた曲は、Little Anthony & The Imperialsの『Tears on My Pillow』です。
フランクのラジオを聴きながら料理をしていたアリスが、違和感を感じるシーンです。
『ティアーズ・オン・マイ・ピロー』は、1950年代に結成されたNY出身のR&Bドゥーワップ・グループ、リトル・アンソニー&ジ・インペリアルズが1958年にリリースしたデビューシングルで、ミリオンセラーを記録しました。1990年には、豪・メルボルン出身のシンガー・ソングライター、カイリー・ミノーグが、自身の初主演映画『カイリー・ミノーグ 恋に走って』の挿入歌に使用し、全英シングルチャート第1位を獲得するなど、広くカバーされています。
ジャックの帰宅シーン
The Platters - Twilight Time
ジャックの帰宅シーンで流れた曲は、The Plattersの『Twilight Time』です。
アリスがドレスアップしてジャックを出迎えるシーンです。
この映画で使われている『Twilight Time』は、ジャズのスタンダード・ナンバー『Only You』のヒットで知られている米・ボーカル・グループ、プラターズ(The Platters)が演奏しています。
『Twilight Time』は、米・シンガーソングライター、バック・ラム(作詞)とザ・スリー・サンズ(作曲)が作った曲です。作曲したザ・スリー・サンズがインストバージョンを1944年にリリースし、彼らの初ヒットレコードになりました。歌がついたバージョンは、プラターズが1958年にリリースし、全米1位全英3位の大ヒットを記録しました。
プールサイドでのランチシーン
The Chords - Sh-Boom
プールサイドでのランチシーンで流れた曲は、The Chordsの『Sh-Boom』です。
アリスとバニー、帽子とガウンで日焼け対策バッチリのヴァイオレットが、プールサイドでランチを食べています。
『シュブーン』は、1950年代の米・NY出身のドゥーワップ・グループ、ザ・コーズが1954年にリリースした曲です。彼らにとっての唯一のヒット作ですが、後に多くのミュージシャン達によってカバーされているスタンダードナンバーです。
冒頭の歌詞から『Life Could Be a Dream』(訳:人生は夢かもしれない)という別名でも知られています。
アリスがジオラマを指でなぞるシーン
Xavier Cugat and His Orchestra - El Merengue
アリスがジオラマを指でなぞるシーンで流れた曲は、Xavier Cugat and His Orchestraの『El Merengue』です。
アリスは、フランクが創造したユートピア「ヴィクトリー」のジオラマを指でなぞり、ぼんやりと見つめています。
『El Merengue』は、“ルンバの王様”と呼ばれたスペイン出身の演奏家、ザビア・クガートが率いる、ザビア・クガート&ヒズ・オーケストラが1955年にリリースした曲です。
ワールド・ツアーを行い世界中の観客たちを熱狂させたザビア・クガートは、愛犬チワワを脇に抱えながらオーケストラの指揮をしていたことで知られています。このことは、世界最小犬種のチワワの知名度と人気を引き上げる要因になったとか!
フランク宅で行われたパーティでの談笑シーン
Jo Stafford - You Belong to Me
フランク宅で行われたパーティでの談笑シーンで流れた曲は、Jo Staffordの『You Belong to Me』です。
フランクとシェリーの家で、ビルとヴァイオレットを歓迎するパーティーが開かれています。
『You Belong to Me』は、アメリカの女性ポップ&カントリー歌手、スー・トンプソンが1952年にリリースしたものがオリジナルで、ここでは女優としても活動した、米国のジャズシンガー、ジョー・スタッフォードが1952年にリリースしたバージョンが使われています。
ジョー・スタッフォードのバージョンは、米国と英国のチャートで首位になり、全英シングルチャートでは女性アーティストによる初の第1位を記録し大ヒットしました。
アリスがジャックを探しに家の中に入るシーン
Ruth Brown - 5-10-15 Hours
アリスがジャックを探しに家の中に入るシーンで流れた曲は、Ruth Brownの『5-10-15 Hours』です。
ジャックを探すため、パーティー会場を離れたアリスは、マーガレット夫婦の言い争いを目撃します。
『5-10-15 Hours』は、 米国のジャズシンガー、ルース・ブラウンが1952年にリリースした曲です。ルース・ブラウンは、50年代にポピュラー音楽のスタイルをR&Bに持ち込んだ曲をアトランティック・レコードから数多く発表し「アトランティックの看板娘」と呼ばれ、レコード会社のビルが「ルース御殿」と呼ばれる程大活躍しました。
妻たちのお買い物シーン
Connie Francis - Who’s Sorry Now
妻たちのお買い物シーンで流れた曲は、Connie Francisの『Who’s Sorry Now』です。
バニー曰く「いつも妊娠している人」ペグが、「ここでは、つけるだけで買い物ができる」とあっけらかんと言う、ショッピングシーンです。
イタリア系アメリカ人歌手、コニー・フランシスが1958年にリリースした曲で自身初のミリオンセラーを記録しました。ヒット曲に恵まれず窮地に立たされていたコニーはこの大ヒットにより歌手を続けられることになったそうです!
コニー・フランシスは、この後、ヒット作を量産しオールディーズの大御所女性シンガーとして日本でも人気を博しました。
アリスが気分転換にバスに乗るシーン
The Teddy Bears - To Know Him Is to Love Him
アリスが気分転換にバスに乗るシーンで流れた曲は、The Teddy Bearsの『To Know Him Is to Love Him』です。
『逢った途端にひとめぼれ(原題:To know him is to love him)』は、アメリカの名プロデューサー、フィル・スペクターが作った曲で、自身が結成したグループ、テディ・ベアーズが1958年にリリースし全米1位のヒットを記録しました。数多くのアーティストにカバーされ、今ではポップス・オールディーズの名曲として知られているスタンダード・ナンバーです。『つのる想い』の題名でも知られています。
フィル・スペクターは、2003年に女優を殺害した容疑で有罪となり刑務所に収監されていましたが、2021年新型コロナウイルス感染に伴う合併症で、刑務所から移送された病院で亡くなりました。彼の半生は、アル・パチーノ主演の伝記テレビ映画『フィル・スペクター』(2013)で知ることができます。
ジャックが食事を作るシーン
Bobby Freeman - Little Girl You Don’t Understand
ジャックが食事を作るシーンで流れた曲は、Bobby Freemanの『Little Girl You Don’t Understand』です。
本社で気を失ったアリスは、目を覚ますと自宅のベッドに横たわっていました。キッチンではジャックが慣れない手つきでコース料理を作っています。
『Little Girl You Don’t Understand』は、サンフランシスコ出身のR&Bシンガー、ボビー・フリーマンが、1958年にリリースしたアルバム『Do You Wanna Dance』に収録されている曲です。
ボビー・フリーマンは、多くのミュージシャンにカバーされたロックンロールの名曲『踊ろよベイビー(原題:Do You Want to Dance)』のオリジナルを歌ったことで知られています。
アリスがジャックに奇妙な夢を見たと打ち明けるシーン
Little Willie John - Need Your Love So Bad
アリスがジャックに奇妙な夢を見たと打ち明けるシーンで流れた曲は、Little Willie Johnの『Need Your Love So Bad』です。
あれは夢だったのかもとアリスに告げられると、ジャックは安心したようでした。
『Need Your Love So Bad』は、R&Bシンガー、リトル・ウィリー・ジョンが1955年にリリースした曲で、ビルボードR&Bで5位を記録したヒット曲です。『I Need Your Love So Bad』としても知られています。
映画の冒頭、アリスとジャックが車を運転するシーンの『Where or When』を歌っていたペギー・リーのミリオンセラー・ヒット曲として知られている『Fever』のオリジナルは、このリトル・ウィリー・ジョンが1956年に出したバージョンでした。彼は、天才ソウル・シンガーといわれヒット曲を沢山残しましたが、1964年、過失致死罪で刑務所に収監され、服役中に心臓マヒで亡くなりました。
アリスが窓ガラスを拭いているシーン
Skeeter Davis - The End of the World
アリスが窓ガラスを拭いているシーンで流れた曲は、Skeeter Davisの『The End of the World』です。
アリスが窓ガラスに押しつぶされそうになるシーンです。
『この世の果てまで(原題:The End of the World)』は、 50年代から60年代にかけて活躍した、ポップ・カントリーの歌姫ことスキーター・デイヴィスが1962年にリリースし、世界的にヒットしたスタンダード・ナンバーです。作曲は アーサー・ケント 、作詞は シルビア・ディーで、大切な人との死別の悲しみが歌われています。
アリスが顔にラップを巻くシーン
Santo & Johnny - Sleep Walk
アリスが顔にラップを巻くシーンで流れた曲は、Santo & Johnnyの『Sleep Walk』です。
『Sleep Walk』は、ニューヨーク州ブルックリン出身のロックンロール・ギター・デュオ、サント&ジョニーが1959年にリリースしたインスト曲で、全米1位を記録し、カナダ、英国でもヒットしました。
二人は兄弟で、兄のサントが演奏するスチール・ギターに注目が集まりました。ハワイで生まれたスチール・ギターは、楽器を水平に置き、左手の指やバーで弦を押さえ、右手のピックで演奏するという通常のギターに比べると演奏が難しいとされる楽器で、ハワイアンだけではなくカントリーミュージックでも欠かせない楽器です。
アリスの入浴シーン
Ricky Nelson - Poor Little Fool
アリスの入浴シーンで流れた曲は、Ricky Nelsonの『Poor Little Fool』です。
ジャックが、子供を持ちたいと言い出し、アリスを戸惑わせるシーンです。
『プア・リトル・フール』は、子役出身のロックン・ローラー、リッキー・ネルソンが1958年にリリースし、全米1位を記録したヒット曲で、女性ソングライター、シャロン・シーリーが作りました。
エルヴィス・プレスリーに勧められ曲を書く仕事をはじめたシャロン・シーリーは、1960年人気絶頂のさなか、自動車事故により21歳の若さで他界したロックンローラー、エディ・コクランの恋人だったことでも知られています。
パーティでバンドが演奏している曲
Louis Prima - Sing, Sing, Sing (With a Swing)
パーティでバンドが演奏している曲は、Louis Primaの『Sing, Sing, Sing (With a Swing)』です。
30年代から40年代初めにかけて、白人主体で作られたビッグ・バンドによる「スウィング・ジャズ」が大流行しました。『Sing, Sing, Sing』はスウィング・ジャズ の代表曲で、日本でも吹奏楽等で演奏されることが多い人気曲です。
この曲は、クラリネット奏者ベニー・グッドマン率いるベニー・グッドマン楽団のレパートリーとして知られていますが、オリジナルは、この曲を作ったトランペット奏者のルイ・プリマが率いる「ニューオーリンズ・ギャング」が1936年にリリースしたものです。
ベニー・グッドマンとルイ・プリマは、二人とも「スウィングの王様」(King of Swing)と呼ばれていました!
パーティでのダンスショーの曲
Red Prisock - Purple Wail
パーティでのダンスショーの曲は、Red Prisockの『Purple Wail』です。
フランクの妻シェリーがパーティの為に用意したゲストのダンスシーンです。
アメリカの伝説的バーレスクダンサー、「バーレスクの女王」ことディタ・フォン・ティースがマティーニグラスショーを見せてくれます!ディタ・フォン・ティースは、マリリン・マンソンの元妻としても知られています。
『Purple Wail』は、R&Bサックス奏者、レッド・プライソックが演奏していて、2005年にリリースされたアルバム『Tease: The Beat Of Burlesque』に収録されています。
パーティー会場の化粧室でのシーン
Helen Foster & The Rovers - You Belong to Me
パーティー会場の化粧室でのシーンで流れた曲は、Helen Foster & The Roversの『You Belong to Me』です。
昇進を果たし盛大にお祝いされるジャックに対して、取り乱しパーティ会場を後にしたアリスが化粧室で親友バニーと話すシーンです。
冒頭、フランク宅で開かれたホームパーティと同じ曲が使われていますが、ここでは、2015年公開のケイト・ブランシェットとルーニー・マーラ、ダブル主演のドラマ映画『キャロル』で使われた、ヘレン・フォスターのバージョンが流れています。
この曲は、愛しい相手のことを、離れた場所で思いながら、また自分にふりかかる事態に嘆息しながら、何があっても「あなたは私のもの (you belong to me)」と歌うポップバラードだそうです…。
ジャックがダンスをするシーン
James Horner - Joshua Fit the Battle of Jericho
ジャックがダンスをするシーンで流れた曲は、James Hornerの『Joshua Fit the Battle of Jericho』です。
昇進祝いで舞台に上げられたジャックが、フランクにあおられダンスを披露するシーンです。
この曲は、19世紀前半、“奴隷“によって作られたとされる黒人霊歌で、邦題は『ジェリコの戦い』です。旧約聖書の、Joshua(ジョシュア:預言者モーセの後継者ヨシュアの英語名)のジェリコ攻略を背景に、奇跡をおこしたJoshuaを称える内容で、自由を求める戦いの歌です。
1950年に人気ビッグバンドのリーダー、ラルフ・フラナガンが『Joshua』のタイトルでリリースし人気となり、ビング・クロスビー、エルヴィス・プレスリーなど様々なアーティストにカヴァーされ、ジャズのスタンダード・ナンバーとしても有名になりました。
ジャックとアリス主催のホームパーティーシーン
Johnny Otis - Mambo Boogie
ジャックとアリス主催のホームパーティーシーンで流れた曲は、Johnny Otisの『Mambo Boogie』です。
このホームパーティーには、フランク夫妻も招待されています。夫たちは着るものにまで気を配り、カリスマ経営者フランクに気に入られようとしているのがわかるシーンでした。
ここで使われている『Mambo Boogie』は、ジョニー・オーティスが1951年にリリースした曲で、コンガ、マラカス、クラベスといった南米の打楽器のリズムがコミカルで、印象に残る曲です。
バンド・リーダーでマルチな楽器奏者でもあるジョニー・オーティスは、「R&B界のゴッドファーザー」と呼ばれるほどの超大物として知られています。
キッチンでアリスがパーティー料理を準備しているシーン
Stan Getz & Charlie Byrd - Desafinado
キッチンでアリスがパーティー料理を準備しているシーンで流れた曲は、Stan Getz & Charlie Byrdの『Desafinado』です。
いきなり入ってきたフランクにアリスが動揺させられるシーンです。
『Desafinado』は、1959年に発表されたボサノヴァの曲で、1962年にスタン・ゲッツ&チャーリー・バードがリリースすると大ヒットし、全米にボサノバ・ブームを巻き起こしました。
フィラデルフィア出身の世界的テナー・サックス奏者スタン・ゲッツと、ガット・ギターでジャズにボサ・ノヴァをもち込んだとされるチャーリー・バードが共演したこの録音は、彼らのグラミー賞受賞アルバム『Jazz Samba』(1962)に収録されています。
パーティでの会食シーン
Ella Fitzgerald - Someone to Watch Over Me
パーティでの会食シーンで流れた曲は、Ella Fitzgeraldの『Someone to Watch Over Me』です。
アリスが、フランクの挑発に乗り、みんなの前で思いを吐き出してしまうシーンです。
この曲は、ジャズとクラシックを融合させた天才作曲家ジョージ・ガーシュウィンが弟のアイラ・ガーシュウィン(作詞家)と作り、『誰かが私を見つめている』『やさしい伴侶を』などの邦題で広く親しまれているジャズ・スタンダード・ナンバーです。
英国ミュージカル女優、ガートルード・ローレンスが、アメリカのミュージカル『オー・ケイ (Oh, Kay!)』(1926)で歌い大ヒットした曲ですが、ここでは米・ジャズ界のファースト・レディことエラ・フィッツジェラルドが1951年にリリースしたバージョンが使われています。
アリスがビクトリーに戻ってきたシーン
Ruth Brown - You’d Be So Nice to Come Home To
アリスがビクトリーに戻ってきたシーンで流れた曲は、Ruth Brownの『You’d Be So Nice to Come Home To』です。
コリンズ医師による治療を終えたアリスが、元の場所に戻ってきました。
第二次世界大戦下のミュージカル映画『Something to shout about』(1942)で、離れ離れの愛する人への思いが歌い上げられたナンバーで、ジャネット・ブレアとドン・アメチーが歌い、その年のアカデミー歌曲賞にノミネートされました。
ボーカル黄金時代を代表する歌姫、ダイナ・ショアが、1943年にリリースしたバージョンが、ヒットチャート入りし人気のスタンダードナンバーになりました。
ここでは、映画冒頭、フランク宅でのホームパーティでアリスがマーガレット夫婦の言い争いを目撃するシーンの『5-10-15 Hours』を歌ったルース・ブラウンのバージョンが使われています。