2010年12月18日公開の映画『バーレスク』。
歌手を目指してロサンゼルスへ引っ越した主人公のアリ。偶然立ち寄ったバーレスク・ラウンジでは、毎夜きらびやかなステージとショーが行われていました。
第68回 ゴールデングローブ賞で最優秀主題歌賞を受賞したミュージカル映画です。アメリカを代表する2大歌姫、シェールとクリスティーナ・アギレラが主演をつとめます。
映画『バーレスク』で流れた音楽13曲をご紹介します。
『バーレスク』で流れた曲とは?
オープニング
Christina Aguilera - Something's Got a Hold On Me
オープニングの挿入歌は、Christina Aguilera(クリスティーナ・アギレラ)の『Something's Got a Hold On Me』です。
『Something's Got a Hold On Me』の原曲は、1960年代・1970年代に活躍したR&Bシンガーのエタ・ジェイムズが1962年にリリースしました。
Christina Aguileraが演じる田舎育ちのヒロインのアリは、歌手になる夢を叶えるため、バーで働く日々を送ります。ある日、田舎を去る決心がついたアリは、わずかなお金を握りしめて、同僚に別れを告げます。
静まり返ったバーでアリが『Something's Got a Hold On Me』を力強く歌います。
地声は可愛らしい甘い声のChristina Aguileraが歌いはじめた途端、圧倒的な存在感とソウルフルな歌声に引き込まれていきます。オープニングの時点で、これからはじまるストーリーに期待が高まります!
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職探し中のアリがバーレスク・ラウンジに立ち寄るシーン
Cher - Welcome To Burlesque
職探し中のアリがバーレスク・ラウンジに立ち寄るシーンの挿入歌は、Cher(シェール)の『Welcome To Burlesque』です。
1970年代頃までは歌手として活動していたCherですが、1980年代に入ると俳優としても活動をはじめました。
世界中のファッションアイコンでもあり、1960年代から1980年代にかけてのCherの着こなしや言動は、たくさんの人の注目を集めました。
田舎からでてきたアリは、生活費を稼ぐために仕事を探します。ふと目にはいった女性のたたずまいが気になったアリは、女性が戻っていったバーレスク・ラウンジに興味を持ちます。
奇妙な雰囲気のフロントボーイ、妖しくステージに立つダンサー、華々しく登場するテス(Cher)、不思議な空間にアリは釘付けになります。
Cherの独特な深みのある歌声とセクシーできらびやかな衣装に心を奪われてしまうシーンです。『バーレスク』出演時には還暦を過ぎていたCherですが、美しさがひときわ目立っています。
Burlesque(バーレスク)は、1940年代頃までキャバレーショーとして人気がありました。1920年代・1930年代頃になるとBurlesqueの雰囲気を取り入れた映画が作られるようになります。現代においても、ロサンゼルスを中心にオールドスクールなBurlesqueショーを楽しむことができます。
ニッキのファーストステージに感動するアリのシーン
Marilyn Monroe - Diamonds Are A Girl's Best Friend
ニッキのファーストステージに感動するアリのシーンの曲は、Marilyn Monroe(マリリン・モンロー)の『Diamonds Are A Girl's Best Friend』です。
1953年の映画「紳士は金髪がお好き」でもおなじみの曲『Diamonds Are A Girl's Best Friend』は、『バーレスク』だけでなく多くの映画やドラマで使用されてきたジャズ曲です。
とくにMarilyn Monroeバージョンは、ステージパフォーマンスと歌唱力が高く評価され映画史に残る楽曲です。
なんとかバーレスク・ラウンジで働きはじめたアリは、勤務中にみたニッキのファーストステージに夢中になります。いつかは自分もステージに立ちたいとアリは強く思います。
ヴェロニカ・マーズでも有名なクリステン・ベルがニッキ役をつとめています。ティーンエイジャーのイメージが強かったクリステン・ベルの官能的な衣装やダンスに惚れ惚れします。
『Diamonds Are A Girl's Best Friend』は、マドンナのマテリアル・ガールでもオマージュされており、ステージ構成や衣装など映画「紳士は金髪がお好き」と同じようにセットされています。
ニッキがステージに立っている時にテスが売却相談を受けるシーン
Dinah Washington - Long John Blues
ニッキがステージに立っている時にテスが売却相談を受けるシーンの曲は、Dinah Washington(ダイナ・ワシントン)の『Long John Blues』です。
ブルースの女王と呼ばれたDinah Washingtonは、1950年代・1960年代に活躍していました。
睡眠薬とダイエット薬を混ぜたアルコールを過剰に摂取したため、Dinah Washingtonは39歳の若さでこの世を去りました。
スタンダード曲集のCDをいれたシーンからニッキの単独ステージに切り替わります。ブラックチュールとレースのレオタードが官能的なニッキ。
一方で経営難に悩むテスは、共同経営者の元夫ヴィンスと実業家のマーカスからバーレスク・ラウンジの売却相談を受けます。マーカスの提案に納得のいかないテスは、売却を断ります。
深刻な様子のテスが気になるところですが、小生意気にステージでパフォーマンスするニッキも気になります!もっとパフォーマンスを観たいと思う気持ちを抑えるシーンです。
Dinah Washington自身もニッキのように、私生活が安定せず複数回の結婚と離婚を繰り返しています。Dinah WashingtonのBaby (You've Got What It Takes)はロックとブルースが好きな方におすすめです。
突然のステージトラブルでアリが歌うシーン
Etta James - Tough Lover
突然のステージトラブルでアリが歌うシーンの曲は、Etta James(エタ・ジェイムス)の『Tough Lover』です。
『Tough Lover』は1956年にリリースされました。
Etta Jamesは幼少期からゴスペルの合唱団に参加し、1954年にグループデビューし、1955年にソロ活動をスタートしました。
突然のステージトラブルにもかかわらず、アリは『Tough Lover』を堂々と歌いはじめます。アリの圧巻のステージパフォーマンスに、バーレスク・ラウンジの客は拍手喝采!
Etta Jamesの力強い歌声に負けないくらいChristina Aguileraのパワフルな歌声も素晴らしいです。Christina Aguileraを知らない人でも彼女の虜になるワンシーンではないでしょうか。
当初アリたちがやっていたリップシンクはいわゆる口パクですが、アメリカではパフォーマンスのひとつとして取り扱われています。音声と口の動きが歌詞にぴったりあっているか、曲の解釈をどのように魅せるかなど、面白い要素がたくさんあるパフォーマンスです。
バーレスク・ラウンジで大活躍するアリのステージシーン
Christina Aguilera - But I Am A Good Girl
バーレスク・ラウンジで大活躍するアリのステージシーンの曲は、Christina Aguilera(クリスティーナ・アギレラ)の『But I Am A Good Girl』です。
『But I Am A Good Girl』は、1940年代頃のスウィングジャズナンバーを彷彿させる曲で、『バーレスク』のサントラ収録曲です。
Christina Aguileraの5枚目のアルバムBack to Basicsでも、1920年代から1940年代頃のスウィングジャズやブルースのトリュビート曲を多く聴くことができます。
才能を認められたアリは、バーレスク・ラウンジでは欠かせないパフォーマーになっていきます。
ボブカットウィッグ、ラインストーンのコルセットとフェザーフリンジの衣装がまるで1930年代のショーガールのようです。
『But I Am A Good Girl』のステージパフォーマンスも、レトロな雰囲気とコケティッシュな歌詞で、アリに翻弄されるジャックやマーカスが目に浮かびます。
アリとジャックの距離が近くなっていくシーン
Mae West - I Like A Guy What Takes His Time
アリとジャックの距離が近くなっていくシーンの原曲は、Mae West(メイ・ウェスト)の『I Like A Guy What Takes His Time』です。
Mae Westは1930年代・1940年代に活躍したアメリカの俳優です。
1930年代当時の映画業界ではタブーとされていた性的な表現を臆することなく利用し、何度も警察の検問を受けていました。
アリとジャックの距離が近くなっていくシーンのステージパフォーマンスも1930年代風に構成されており、見どころ満載のワンシーンです。
元祖セックスシンボルのMae Westのような雰囲気には文句なしの100点満点!
大きなフェザーファンやラグジュアリーな衣装もバーレスクならではのセクシーさとコメディもあり、憧れのパフォーマンスです。
Mae Westはタブーを恐れず、1930年代当時の女性の社会進出に尽力し、同性愛者のサポートも行っていた先進的な俳優でした。
アリがマーカスから食事に誘われてドライブするシーン
Neon Trees - Animal
アリがマーカスから食事に誘われてドライブするシーンの曲は、Neon Trees(ネオン・トゥリーズ)の『Animal』です。
2010年の曲『Animal』は、2011年のビルボード・ミュージック・アワードでトップ・オルタナティヴ・ソング賞を受賞しました。
テレビや映画、CMなど多くの場面で使用されているヒット曲です。
順調にバーレスク・ラウンジでキャリアを積むアリは、実業家のマーカスから食事に誘われます。運転中のマーカスからパーティーに行かなければと言われたアリは、仕方なくマーカスに付き添います。
マーカスの駄メンズっぷりがよくわかりますね。情熱的なニッキを囲いつつ、新しい女の子アリにもしっかり手をだします。
アリ騙されないで!と画面越しに訴えてしまいます。
アリとショーガールたちのメインパフォーマンスシーン
Christina Aguilera - Express
アリとショーガールたちのメインパフォーマンスシーンの曲は、Christina Aguilera(クリスティーナ・アギレラ)の『Express』です。
エンディング曲でもある『Express』は、映画『バーレスク』のために書き下ろしされました。
映画『バーレスク』といえば『Express』。一度『Express』のパフォーマンスを観たらChristina Aguileraの虜になります!ミュージカルのシカゴをイメージさせる衣装とダンスも見ごたえ満載です。
アリが1人のパフォーマーとして確実に力をつけていることがわかります。満員のフロアでのパフォーマンスはとても気持ちよさそうです。
ジャックがマーカスに嫉妬したりアリの行動に目くじらをたてたり、ラブコメの醍醐味をたっぷり味わえるシーンでもあります。
資金繰りに疲れきったテスがリハーサルするシーン
Cher - You Haven't Seen The Last Of Me
資金繰りに疲れきったテスがリハーサルするシーンの曲は、Cher(シェール)の『You Haven't Seen The Last Of Me』です。
『You Haven't Seen The Last Of Me』も映画『バーレスク』のオリジナルソングです。2011年のゴールデングローブ賞で最優秀オリジナルソング賞を受賞しました。
テスはなんとかバーレスク・ラウンジを存続させようと資金繰りに躍起になります。アリやニッキなどショーガールたちの私生活も心配するテスの心労は尽きません。
リハーサルをすっかり忘れていたテスは、ステージに1人腰かけ、歌いはじめます。
どんな不遇の状況に陥っても決して諦めません。今までの苦しみを乗り越えて、自分をないがしろにしてきた人たちを見返しやる、とテスは歌います。
『You Haven't Seen The Last Of Me』は、Cherだからこそ歌える曲だと思います。Cherの特徴である深みのある歌声と徐々に強さを強調していく歌い方に、聴いている側はグッと心をつかまれます。
ジョージアの結婚式でジャックとアリがふざけあうシーン
Boston - More Than A Feeling
ジョージアの結婚式でジャックとアリがふざけあうシーンの曲は、Boston(ボストン)の『More Than A Feeling』です。
1970年代・1980年代を代表するロックバンドBostonの『More Than A Feeling』は、1976年にリリースされ大ヒットしました。
ジョージアの結婚式の日、ジャックのフィアンセは参加できなくなり電話で喧嘩別れをします。アリに惹かれていたジャックは、秘めていた恋心を抑えられず、アリにアタックします。
ジャックもなかなかの駄メンズです。アリに心変わりしているのであれば早めにフィアンセに打ち明けなさい、とジャックに説教したい気分になります。ジャックは、アリとフィアンセのどちらにもいい顔をしたいのでしょうか。
アメリカの結婚式でのダンスフロアは大定番ですね!新郎新婦のファーストダンスのために、カップルでダンスレッスンを受けることもあるそうです。
思いが通じ合ったジャックとアリのシーン
Christina Aguilera - Bound To You
思いが通じ合ったジャックとアリのシーンの曲は、Christina Aguilera(クリスティーナ・アギレラ)の『Bound To You』です。
サントラ収録曲。映画『バーレスク』のサントラは世界中でヒットし、『Bound To You』はゴールデングローブ賞の主題歌賞にノミネートされました。
思いが通じ合ったジャックとアリは、2人の時間を思う存分に楽しみます。アリははじめての愛に知り、愛のしがらみに戸惑う女心を情緒たっぷりに歌います。
バービー人形のようなアリにうっとりするシーンです。Christina Aguileraのエネルギッシュな歌声は、どこからやってくるのか不思議で仕方がありません。
ジャックのフィアンセ役は、海外ドラマのgleeでクインをつとめていたディアナ・アグロンです。
散々な目にあったアリがマーカスを訪ねるシーン
Mazzy Star - Fade Into You
散々な目にあったアリがマーカスを訪ねるシーンの曲は、Mazzy Star(マジー・スター)の『Fade Into You』です。
Mazzy Starは、1989年にアメリカで結成されたオルタナティブ・ロックバンドです。『Fade Into You』ではじめてビルボード100にランクインしました。
ボーカルのホープ・サンドヴァルの歌声が気だるい雰囲気で甘く、流れるようなサウンドが特徴です。
ジャックとフィアンセの喧嘩に巻き込まれたアリは、冷静になるためにショーンの家に向かいますが、ショーンは取り込み中でした。
仕方なくマーカスのもとを訪れたアリは、偶然マーカスの事業計画を聞きます。バーレスク・ラウンジを気にも留めないマーカスに、アリは嫌気がさします。
なにかとマーカスの甘い蜜を吸っていたアリですが、ここでどんでん返しです。
マーカスの言っていることも理解できますが、好きになれない人物です。自己の欲望しかみえていない人物には要注意です。
筆者の感想
シェールとクリスティーナ・アギレラ、アメリカの2大歌姫を同時に堪能できる貴重なミュージカル映画です!
作品中の選曲とパフォーマンス、衣装の一つひとつが素晴らしく、何度も繰り返し観てしまうのが『バーレスク』です。
『バーレスク』のストーリーは定番のシンデレラストーリーですが、気分が落ち込む時や物事がうまく進まないときに観ると、元気を与えてくれるポジティブな映画です。
10年以上経つ映画とは思えないほど、ステージパフォーマンスには新鮮さがあり、この先20年、30年とステージパフォーマーに影響を与える映画だと思います。とくにエンディングの『Express』は必見です!
『バーレスク』を観たあとは、ぜひバーレスのクイーンであるディタ・フォン・ティースのショーをチェックしてみてください。ディタ・フォン・ティースは、古き良き時代のバーレスクショーを主催しており、『バーレスク』の世界観を肌で実感することができます。
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