リックとクリフが一緒にテレビを見るシーン
Bronisław Kaper - FBI Theme
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のリックとクリフが一緒にテレビを見るシーンで流れる音楽は、Bronisław Kaper(ブロニスラウ・ケイパー)の『FBI Theme』です。
ブロニスラウ・ケイパーは1902年ポーランド生まれの作曲家です。第二次世界大戦前のドイツで映画音楽の作曲家として活躍し、のちにハリウッドに渡り数多くの作品を手掛けました。
リックがクリフを誘い家で見ているテレビは『FBIアメリカ連邦警察』です。1965〜1974年まで米・ABC放送で放映されていた人気テレビ映画シリーズです。 作品内で使われたエピソードは1965年11月28日に放送された1stシーズン第11話を改変したものです。リックはバート・レイノルズが演じたキャラクターを演じています。 リックとクリフが仲良く盛り上がって観ている様子は、こちらも見ていて幸せな気持ちになりますね!
リックがマカロニ・ウェスタンの主役に抜擢されるシーン
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』リックがセルジオ・コルブッチのマカロニウェスタン映画主演に抜擢されるシーンで流れる音楽は、Nico Fidenco(ニコ・フィデンコ)の『Dinamate Jim』です。
ニコ・フィデンコは1933年生まれのイタリア人歌手/作曲家です。60年代のイタリア映画のために多くの曲を歌いました。
マカロニ・ウェスタンには出たくないと渋っていたリックの転機になるシーンで流れてくる音楽が、イタリア人歌手ニコによる『Dinamate Jim』です。
マカロニウェスタンといえば、『荒野の用心棒』(1964)の監督、セルジオ・レオーネとくるのが一般的なのですが、ここはタランティーノ。『ジャンゴ 繋がらざるもの』でも散々オマージュしたセルジオ・コルブッチからオファーを受けたという設定です!
リックとクリフが帰国し空港を歩くシーン
The Rolling Stones - Out Of Time
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』リックとクリフがイタリアからアメリカに帰国するシーンで流れる音楽は、The Rolling Stones(ローリング・ストーンズ)の『Out Of Time』です。
ローリング・ストーンズは1962年、英・ロンドンで結成されたロックバンドです。ブライアン・ジョーンズやミック・ジャガー、チャーリー・ワッツが参加していました。
『サティスファクション』や『Paint It, Black』などの名曲を次々と発表し、60年代から70年代を代表する世界的ロックバンドとなりました。
半年後、リックがイタリア人の奥さんを連れ帰国し、シャロン・テート、ブルース・リーが映し出されるシーンで流れるのは、ローリング・ストーンズの『Out Of Time』です。シャロンテート達がメキシコ料理店「エル・コヨーテ」に着いたところで音楽がフェードアウトします。 さて、飛行機を降りてからは時刻がテロップで出てきます…というのも史実においてはこの日、シャロンテート達はエル・コヨーテから帰ったあと殺害されてしまいます。 ※ネタバレ有り※ つまり、このシーンからがタランティーノによるパラレルワールドの始まり、というとっても大切なシーンです。
シャロンの友人アビゲイルがピアノで弾き歌いする曲
The Mamas & the Papas - Straight Shooter
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』シャロンの友人アビゲイルがピアノで弾き歌いする曲は、The Mamas & the Papas(ママス&パパス)の『Straight Shooter』です。
ママス&パパスは60年代にアメリカで活躍したフォークグループです。『夢のカリフォルニア』(1965)で全米4位を記録し、『花のサンフランシスコ』(1967)や『朝日をもとめて』(1967)など次々とヒット曲を発表しました。
シャロンの友人、アビゲイルがピアノを弾きながら歌う曲は、ママス&パパスの『Straight Shooter』です。ピアノを弾いているアビゲイル・フォルジャーはコーヒーで財をなしたフォルジャー家の令嬢で、史実ではシャロンと共に殺されてしまった一人です。 『Straight Shooter』のピアノ譜は実際に事件当日ポランスキー邸に残されていたと言われています。 ちなみに、ママス&パパスのメンバーであるミシェル・フィリップスは前半のパーティーシーンでチラッと登場しています。
クリフがブランディと散歩しているシーン
The Mamas & The Papas - Twelve-Thirty (Young Girls Are Coming To The Canyon)
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』クリフがブランディの散歩をするシーンで流れる音楽は、The Mamas & The Papas(ママス&パパス)の『Twelve-Thirty (Young Girls Are Coming To The Canyon)』です。
『TWELVE THIRTY(Young Girls Are Coming to the Canyon)』は1968年にリリースされ、全米20位を記録したママス&パパスのヒット曲です。日本では『朝日をもとめて』の邦題でリリースされました。
クリフがブランディと散歩しているシーンからリックがテックスを追い出すシーンの音楽は『TWELVE THIRTY(Young Girls Are Coming to the Canyon)』です。初めにジェイがシャロンの部屋でレコードを流していましたね。 史実では、マンソンファミリーと最初に会い話しかけた通り掛かりの若者が最初の被害者となります。それを知っていると、リックとテックス達が鉢合わせするのは非常に意味深でヒヤヒヤしてしまいます…。
リックがプールで音楽を聴いているシーン
The Royal Guardsmen- Snoopy vs The Red Baron
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』リックがプールで音楽を聴いているシーンで流れる音楽は、The Royal Guardsmen(ロイヤル・ガーズメン)の『Snoopy vs The Red Baron』です。
The Royal Guardsmenは1966年、米・フロリダで結成された6人組バンドです。『Snoopy vs. The Red Baron』(1966)で一躍有名になり、その後も『Snoopy For President』『Snoopy'sChristmas』などのスヌーピーにまつわる独特のオリジナル曲を複数発表しました。
リックが自宅プールで、当時ミリオンセラーとなった人気曲『Snoopy v.s. The Red Baron』を聞きながら歌うシーン。レッド・バロンは第一次世界大戦、ドイツ空軍の英雄です。 スヌーピー好きな方ならご存知かもしれませんが、スヌーピーはよく犬小屋を戦闘機に見立ててレッドバロンと闘う妄想をしています。…その様子を歌ったのがこの『Snoopy Vs. The Red Baron』というわけです。 10.20.30…大勢を殺した…!などと呑気にプールでリックが歌に合わせて口ずさんでいますが、外では「リックのようなTVスター達が殺人を教えた」とヒッピー達によるテロの標的にされようとしているのです…。
トリップしたクリフがマンソンファミリーとの対決するシーン
Vanilla Fudge - You Keep Me Hangin' On
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』トリップしたクリフがマンソンファミリーと対決するシーンで流れる音楽は、Vanilla Fudge(バニラ・ファッジ)の『You Keep Me Hangin' On』です。
バニラ・ファッジは1966年から1969年にアメリカで活躍したロックバンドです。強烈なリズムセクションと長尺の曲という特徴を持つ彼らの曲はアート・ロックと評され、高い人気を誇りました。
解散と再結成を何度か繰り返していますが、現在も活動中です。
トリップしたクリフとマンソンファミリーが鉢合わせするシーンで流れている音楽は『You Keep Me Hangin' On』です。ここからの対決シーンはタランティーノ映画の中でトップ3に入るバイオレンスシーンですね…。 ブランディとクリフの最強コンビに痺れます! 『You Keep Me Hangin' On』はザ・シュープリームスのヒット曲をロックテイストに再開発してバニラ・ファッジがカバーしたバージョンが使用されています。
リックがシャロン宅に招かれるシーン
Maurice Jarre - Miss Lily Langtry
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のリックがシャロン宅に招かれるシーンで流れる音楽は、Maurice Jarre(モーリス・ジャール)の『Miss Lily Langtry』です。
モーリス・ジャールは『アラビアのロレンス』(1962)や『ドクトル・ジバゴ』(1965)の映画音楽を手がけたことで知られるフランス人作曲家です。9度アカデミー賞にノミネートされ、うち3回受賞しました。
『Miss Lily Langtry』はポール・ニューマン主演の時代劇『The Life And Times Of Judge Roy Bean(邦題:ロイ・ビーン)』(1972)からの引用です。
インターホン越しにシャロンに招かれ、リックが初めてシャロン・テート宅を訪れるシーンで流れる音楽は『Miss Lily Langtry』です。元の映画では、ポール・ニューマン演じる荒くれ者の偽判事が女優のリリーにラブレターを書くシーンなどで使用されています。 ※ネタバレ有り※ あまりに衝撃的な襲撃のせいシーンで、つい忘れてしまいますが、この晩はリックとクリフが共に過ごす最後の晩でもありました。クリフが救急車で運ばれたあと、シャロンと初めて話すリックが「Everybody's OK(全員無事だよ)」と答えるのが、より一層切ない気持ちにさせますね…。 フィクションというよりは、ファンタジーでありハリウッドに対する一種のラブレター的作品である今作品、『Once Upon a Time… in Hollywood』とタイトルが出て幕が閉じます。
エンディングソング
Neal Hefti - Batman Theme
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のエンドロールで流れる音楽は、Neal Hefti(ニール・ヘフティ)の『Batman Theme』です。
ニール・ヘフティは1922年アメリカ生まれのジャズトランペッターです。有名なビッグバンド、カウント・ベイシー楽団のコンポーザーとしても活躍していました。
エンドロール、「Red Apple」の広告のあとに流れるのは元祖バットマンのテーマ曲です。 そして…そのあと流れるラジオ広告は初代バットマンを演じたアダム・ウェストとロビン役バート・ウォードによる1966年にKHJラジオで流れた実際のプロモーション広告の音声です。 バットマンに繋がる電話バットフォンの電話番号を当てたら豪華賞品を贈ります!と言った内容です。エンドクレジットを最後まで観た人だけが楽しめるサプライズプレゼントですね!
筆者の感想
ブラッド・ピットに初のオスカーをもたらしたタランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』。約3時間とかなりの超大作ですが、いつもに増してこだわり厳選された膨大なサントラや車、ラジオジングルなどが1969年ハリウッドに誘ってくれるのであっという間にラストシーンを迎えてしまいますね!
初めて映画館で観た時は、ハラハラドキドキ、ラストは爽快感MAXだったのですが、じっくり家で観直すと、随所に溢れているノスタルジックなシーンとラストの切なさにいつの間にか涙が溢れてしまいました…(今も涙目です!)。筆者はホセ・フェリシアーノのCalifornia Dreamin'のシーンが流れるシーンとローリング・ストーンズの『Out of Time』のシーンが特に大好きです!
さて、ここまで読んで下さった皆さん、是非もう一度観直して、至る所に散りばめられた名シーンを堪能してみてください!!