1991年7月20日公開 映画『おもひでぽろぽろ』
原作:岡本螢、作画:刀根夕子の漫画を元に、スタジオジブリが長編アニメーション映画として制作。
舞台は1982年の山形県。27歳になる都会のOL岡島タエ子が、田舎が無いことなどで大した思い出を作れなかった小学五年生の頃を思い出しながら、農家の人々と触れ合う物語。
『火垂るの墓』から3年後に発表された高畑勲監督の作品で、時代背景や風景などをリアルに再現することを徹底し、声優の音声を事前にレコーディングしたあとにアニメを制作するという「プレスコ手法」で制作されました。
この記事では、映画『おもひでぽろぽろ』で流れる24曲をシーン別にご紹介します。
※以下ネタバレ有り
『おもひでぽろぽろ』で流れる曲とは?
オープニング・スタッフクレジット
星勝は、作曲家、編曲家、ギタリスト、歌手。
井上陽水や安全地帯などのプロデュースをしたり、尾崎豊、中島みゆき、福山雅治などの曲を編曲しています。
シンプルなスタッフクレジットが流れますが、錚々たる名前が並んでいますよ!
タエ子が熱海に旅行に行くシーン
タエ子が熱海に旅行に行くシーンで流れた曲は、近江俊郎の『湯の町エレジー』です。
近江俊郎は、東京都出身の歌手、作曲家、映画監督。代表曲は「湯の町月夜」「忘れないよ」など。
東京生まれのため帰省する田舎が無く、暇な夏休み。旅行に行きたいと言ったタエ子が、熱海の大野屋という旅館に行かされるシーン。
大野屋は実在する旅館で、作中のローマ風呂が楽しめるそうです。ゲーセンや卓球やバイキングもあるし、行きたい!!
ここで流れるのは、昔懐かしい歌謡曲。おばあちゃんがマッサージされているシーンも相まって、エモさが最高に染みます。
タエ子の姉がパイナップルを切るシーン
タエ子の姉がパイナップルを切るシーンで流れた曲は、星勝の『椰子の実』です。
銀座の千疋屋で購入した、当時では珍しいフルーツだったパイナップルを切り分けるシーン。
寡黙なお父さんまでもが切り分けるのを見守り、ワクワクしているのがなんともほっこりします。
「椰子の実」は、明治時代の作家・島崎藤村が書いた詩に、メロディーをつけた日本の歌曲。
パイナップルが美味しく無く、タエ子が顔をしかめるシーン
西田 佐知子は、元歌手。代表曲は「初めての街で」「女の意地」など。
憧れのパイナップルを食すも、その固さと甘くない味に顔をしかめ、無理やり食べるシーン。
缶詰の味しか知らなかったら、そのギャップに驚くことでしょう。
「どうせ私を騙すなら死ぬまで騙して欲しかった」という歌詞が、岡島一家の心情を表していますね!
タエ子が姉たちの事を回想するシーン
ザ・ワイルドワンズは日本のバンド。1966年から現在に至るまで、長く活動を続けているレジェンド。代表曲は「ユア・ベイビー」「バラの恋人」など。
昭和41年、名曲「想い出の渚」が流行した頃、姉たちがどのように大人になって行ったかを、タエ子が回想するシーン。
ミニスカートの流行や宝塚など、時代の流れを感じさせる内容でした!
学級会で、給食を残す事に関し揉めるシーン
学級会で、給食を残す事に関し揉めるシーンで流れた曲は、植木等の『だまって俺について来い』です。
植木等は、俳優、コメディアン、歌手。昭和の日本を代表するジャズバンド&お笑いタレントグループ「ハナ肇とクレージーキャッツ」の一員。
ツネ子ちゃんが発言した、ベトナム戦争を引き合いにした「給食を残す事は悪」について揉めるシーン。
小学五年生ともなると、こういうしっかりとした意見も出て来ますが、だいたいは最後にドテっと転げるふざけた男子のほうが多いですよね。笑
植木等さんの公式youtbeで、イケてるのがあったので貼っておきます♪↓
タエ子が広田との仲をからかわれるシーン
星勝 - 星のフラメンコ
タエ子が広田との仲をからかわれるシーンで流れた曲は、星勝の『星のフラメンコ』です。
近所にタエ子と広田の相合傘が描かれており、噂になるシーン。
本人たちをよそに、周りがお節介を焼いたり噂を広めるのは、小学校あるあるだなーと懐かしくなりました。
原曲は、歌手・俳優の西郷輝彦さんが歌う歌謡曲。「好きなんだけど〜」の歌詞は有名ですね!
タエ子が嬉しさのあまり空を泳ぐシーン
タエ子が嬉しさのあまり空を泳ぐシーンで流れた曲は、星勝の『おはなはん』です。
野球が上手なエース・広田くんが、タエ子に「雨の日と、晴れの日と、曇り、どれが好き?」と聞き、タエ子が「曇り」と答え「一緒だ!」と喜び見つめ合う、なんとも初々しく可愛らしいシーン。
「おはなはん」は、1966年から一年間放送されたNHK連続テレビ小説で、ここでは倍賞千恵子さんの「おはなはんの歌」のアレンジ版が流れます。
小ネタですが『平成狸合戦ぽんぽこ』妖怪大作戦のシーンで、このシーンのタエ子が映っていますよ!要チェック!!
給食の時間に、男子が女子の保健室に行く理由を聞いて来るシーン
給食の時間に、男子が女子の保健室に行く理由を聞いて来るシーンで流れた曲は、梓みちよの『こんにちは赤ちゃん』です。
梓みちよは、歌手、女優。代表曲は「こんにちは赤ちゃん」「二人でお酒を」など。
リエちゃんが、好きな男子・中山くんに話してしまって広まり、男子がからかって来るシーン。
ここで言う「パンツ」とは、生理用ナプキンの事でしょう。お盆を持って、ニンマリ笑いながら横を通っているのが中山だな!?いかにも小学生男子らしいシーンです。
タエ子が寝台列車で寝るシーン
タエ子が寝台列車で寝るシーンで流れた曲は、星勝の『おもひでぽろぽろ』です。
大人のタエ子が、小学校の頃生理のことで男子と揉めた時などを思い出しながら、寝台列車で眠るシーン。
恥ずかしい気持ちも重々わかりますが、一足先に初潮を迎えたリエちゃんはなんだか大人っぽくて…そんなところもリアルさが追求されていました。
ピアノと静かなオーケストラが、眠る前の回想シーンを優しく包み込みます。
タエ子がトシオの車に乗るシーン
Márta Sebestyén & Muzsikás - Teremtés
タエ子がトシオの車に乗るシーンで流れた曲は、Sebestyén Márta & Muzsikásの『Teremtés(創造)』です。
Muzsikás(ムジカーシュ)は、ハンガリーのフォーク・グループ。
タエ子が、迎えに来ていたトシオ(演/柳葉敏郎)の車に乗り込むも、いきなりエンストするシーン。
今作の中心人物・トシオを演じたのは、俳優の柳葉敏郎さん。『踊る大捜査線』の室井役で披露したコテコテの秋田弁が、山形のトシオにもピッタリハマっています♪
インド音楽のような、神秘的で独特な楽曲。
タエ子とトシオが紅花について話すシーン
Márta Sebestyén & Muzsikás - Fuvom az énekem
タエ子とトシオが紅花について話すシーンで流れた曲は、Sebestyén Márta & Muzsikásの『Fuvom az énekem(私は私の歌を歌う)』です。
紅花生産量1位の山形。その歴史などについて、二人が話すシーン。
タエ子のために一夜漬けで勉強したというトシオ、健気でいい!紅花は山形の県花として知られており、紅花を使った染色は古くから続いているそうです。
笛に乗せた歌声が魅力的で、癖になる楽曲。人がほぼいない田舎道を、この曲が美しく花を添えてくれます。
トシオが自身について話すシーン
Márta Sebestyén & Muzsikás - Hajnali nóta
トシオが自身について話すシーンで流れた曲は、Sebestyén Márta & Muzsikásの『Hajnali nóta(朝の歌)』です。
サラリーマンから農家に転身し、今は有機栽培農業を目指している…と話すシーン。
百姓としては駆け出しの身で勉強中であるという彼は、タエ子にとってちょっと身近に感じる存在で、心強かったのではないでしょうか。
細かく演奏されている弦楽器と、ボーカルのマールタの力強い声が合わさり、明るく軽快な民族音楽となっています。
タエ子とトシオが紅花畑に向かうシーン
Gheorghe Zamfir - Cintec De Nunta
タエ子とトシオが紅花畑に向かうシーンで流れた曲は、Gheorghe Zamfirの『Cintec De Nunta(結婚のうた)』です。
ゲオルゲ・ザンフィルは、ルーマニア出身のパンフルート奏者。
二人が駅から直接畑へ向かうシーン。田舎町の風景が堪能出来る場面です。
この数分の間に、タエ子とトシオの距離は徐々に縮まっているよう。しかし曲名が「結婚のうた」とは、あまりにも気が早いような。笑
パンフルートの味のある音色が、山々や畑の景色に絶妙にマッチしています♪
タエ子が紅花の収穫を手伝うシーン
タエ子が紅花の収穫を手伝うシーンで流れた曲は、FILIP KUTEVの『Dilmano,dilbero-hor-DFA』です。
フリップ・クテフは、ブルガリアの 作曲家、編曲家、国家支援アンサンブルの創設者。
畑に到着するやいなや、早速作業着に着替えて収穫を手伝うシーン。
朝日が差し込み、光に照らされた紅花が息をのむほど美しい感動的なアニメーション。
そして、バックで流れる神秘的なブルガリアン・ヴォイスが堪能出来ます。
タエ子が父親に叩かれるシーン
加山雄三 - 君といつまでも
タエ子が父親に叩かれるシーンで流れた曲は、加山雄三の『君といつまでも』です。
加山 雄三は、日本の歌手・俳優。1965年にリリース。第8回日本レコード大賞特別賞を受賞しました。
家族四人で中華料理店へ行こうとするも、ひと悶着ありタエ子が裸足で家を出てしまい、怒った父親に頰を叩かれるシーン。
小学校高学年くらいの情緒不安定さ・反抗期の感じがとてもよく伝わって来る、とてもリアルな演出。
ここではおばあちゃんが呑気にNHKのど自慢を観ており、テレビから小さく流れて来る音楽は、前述した「こんにちは赤ちゃん」と、加山雄三の「君といつまでも」です。
姉と母がタエ子の学力について話しているシーン
倍賞千恵子 - さよならはダンスの後に
姉と母がタエ子の学力について話しているシーンで流れた曲は、倍賞千恵子の『さよならはダンスの後に』です。
算数で「2」を取ってしまったタエ子を、家族が不審がるシーン。
「IQ調べたら?」「叱りようがない」など、かなり酷い話をしていますが、隠すわけでもなくほぼタエ子に筒抜け。
三姉妹の末っ子だからって、もうちょっと大事にしてあげないと…なんて思ってしまいます;
歌詞冒頭「何も言わないでちょうだい」は、まさにタエ子の心情でしょうね。
タエ子が演劇のスカウトをされるシーン
ひょっこりひょうたん島/ドン・ガバチョ - コケコッコのうた
タエ子が演劇のスカウトをされるシーンで流れた曲は、ひょっこりひょうたん島/ドン・ガバチョの『コケコッコのうた』です。
学芸会の演技を観て、日大の演劇に出演して欲しいとスカウトが来るシーン。
ここでは、タエ子がNHKの人形劇『ひょっこりひょうたん島』を観ています。(1964年〜1969年)
アラフォーの筆者でもリアタイでは無かったのですが…再放送で観たのかな。懐かしい!
「コケコケコケコケコケコッコ♪」ドン・ガバチョの歌声が妙にハマります!
タエ子の母親がスカウトを断るシーン
ひょっこりひょうたん島/トラヒゲ - プア・ボーイ
タエ子の母親がスカウトを断るシーンで流れた曲は、ひょっこりひょうたん島/トラヒゲの『プア・ボーイ』です。
スカウトをされたことで家族が盛り上がるも、父親が大反対。結局断ることになってしまったシーン。
前編通して一番可哀想な想い出。父親が絶対的な存在であった昭和の家庭環境ですね。
トラヒゲが自らを慰める時に歌うこの曲は、とても悲しく哀愁があり、タエ子の不憫さを表現しています。
タエ子が母親と商店街に買い物に行くシーン
前川陽子 - ひょっこりひょうたん島 テーマソング
タエ子が母親と商店街に買い物に行くシーンで流れた曲は、前川陽子の『ひょっこりひょうたん島 テーマソング』です。
前川陽子は、アニメソング歌手、ジャズシンガー。代表作は「キューティーハニー」や「魔女っ子メグ」のOP・ED主題歌。
結局タエ子の代わりにクラスメイトが抜擢され、面白くないタエ子が愚痴っているシーン。
ひょっこりひょうたん島のテーマソングを歌い、自分で自分を鼓舞します。
これだけ色々と悲しい事があっても、割と早めに立ち直るタエ子は偉い!
タエ子とトシオが歌詞を思い出すシーン
ひょっこりひょうたん島/ドン・ガバチョ- 未来を信ずる歌
タエ子とトシオが歌詞を思い出すシーンで流れた曲は、ひょっこりひょうたん島/ドン・ガバチョの『未来を信ずる歌』です。
二人が、ひょっこりひょうたん島の歌にこんな歌詞があったよね!と盛り上がっているシーン。
「今日がダメなら明日があるさ ドンドンガバチョ ドンガバチョ」タエ子とトシオのフィーリングがバッチリ合いました♪
短い曲ですがとても前向きな歌詞で、当時この歌に救われた人が多くいたそうです。
タエ子があべくんの話を終え、トシオが音楽をかけるシーン
Alan Lomax - Stornelli
タエ子があべくんの話を終え、トシオが音楽をかけるシーンで流れた曲は、Alan Lomaxの『Stornelli』です。
アラン・ローマックスは、アメリカの民族音楽研究家。
タエ子があべくんとの苦い想い出を語り、それをトシオが受け止めてくれ、トシオへの気持ちに気付くシーン。
妄想で馬が引く荷車に乗っちゃって、もうこれはラブでしかありません!
しかし、本家と揉めてしまったタエ子ですが、田舎の結婚関連の、押しの強いところは本当に厄介ですね。
アコーディオンと力強い歌声の、イタリアの民族音楽です。
タエ子が電車に乗り東京へ戻るシーン
都はるみ - 好きになった人
タエ子が電車に乗り東京へ戻るシーンで流れた曲は、都はるみの『好きになった人』です。
都 はるみは、元演歌歌手、音楽プロデューサー。代表曲は「好きになった人」「枯木灘 残照」など。
自分の気持ちに気付くも、東京へ戻る電車に乗り込むシーン。
突然乗って来たおじさまのせいで、きちんと最後のお別れが出来ないまま発車。
この演出、ニクイですよね!もしここできちんとお別れが出来ていたのなら、タエ子の心は東京へと向かってしまっていたでしょう。
ここで流れる曲は、力強い「さよ〜な〜らさよな〜ら〜」という出だしが有名な、盆踊りの定番曲。
タエ子が反対の電車に乗り、トシオの元へ戻るシーン
都はるみ - 愛は花 君はその種
タエ子が反対の電車に乗り、トシオの元へ戻るシーンで流れた曲は、都はるみの『愛は花 君はその種』です。
電車の中で出て来た小学校五年生のタエ子と、その同級生たちに促され、村へと戻るシーン。
原曲は1979年に公開されたジャニス・ジョップリンの自伝映画「THE ROSE」の主題歌で、高畑監督が日本語訳詞を担当。
感動的なエンディングにぴったりな、優しい歌が流れます。
最後に小学生のタエ子が無表情(ちょっと悲しい表情?)で大人のタエ子を見送りますが、これはきっと「過去に囚われず未来へと動き出したタエ子との別れ」を、寂しく思っていたのでしょう。
物語だけではなく、昭和の名曲がたっぷり堪能出来る作品でした!
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