2011年7月16日公開 映画『コクリコ坂から』。
原作:佐山哲郎、作画:高橋千鶴の漫画を元に、スタジオジブリが長編アニメーション映画として制作。
舞台は昭和38年の横浜。「コクリコ荘」という下宿を切り盛りする高校二年生の松崎海と、「カルチェラタン」という学生寮を取り壊しから守ろうとする風間俊の、青春ラブストーリー。
『ゲド戦記』から5年後に発表された、宮崎駿監督の息子である宮崎吾朗監督の第二作目で、錚々たる俳優陣が登場人物の声優を担当しました。
この記事では、映画『コクリコ坂から』のサントラから抜粋した23曲をシーン別にご紹介します。
※以下ネタバレ有り
『コクリコ坂から』で流れる曲とは?
オープニング
手嶌葵さんは、日本の女性歌手。代表曲は「明日への手紙」「テルーの唄」など。
主人公である海の、朝起きてからのルーティンが映し出されるシーン。朝食の支度、お花の水替え、旗をあげる…女子高生なのに偉すぎる。
朝ごはんのハム×目玉焼きは、ジブリ作品には欠かせないメニューですね♪
効果音なども入った、軽やかなピアノ伴奏の曲。手嶌さんの優しい歌声が寝起きの頭に沁みる…!
俊が船から降り、登校するシーン
俊が船から降り、登校するシーンで流れた曲は、武部聡志の『朝の通学路』です。
タグボートから自転車と共に降りて来た男子・俊が学校に行くシーンと、海が家事をしているシーン。
昭和の町並みがなんともエモくてグっと来ます。静止して風景をじっくり観るのがオススメ!
海が使っている洗濯機が気になり調べたところ、横のローラーで洗濯物を絞る脱水機だそうです。
アコーディオンとピアノの、どこか懐かしい気持ちになる楽曲。
俊が池に飛び込むシーン
俊が池に飛び込むシーンで流れた曲は、武部聡志の『馬鹿騒ぎ』です。
学生寮であるカルチェラタンの取り壊し抗議のため、俊が高いところから池に飛び込み、海が手を差し伸べるシーン。
この衝撃的な場面で、海と俊が出会います。昭和というか、昔の学生ってハッスルしてますよね…今では考えられないような。
ここでは、シーンに合わせたミュージカルのような出だしと、クラリネットを使ったオシャレなブルースが流れます。
海が旗をさげ、夜ご飯を作るシーン
海が旗をさげ、夜ご飯を作るシーンで流れた曲は、武部聡志の『追憶』です。
海が作っているアジフライが美味しそうなシーン。うしろでは、下宿人や妹たちが楽しそうに会話をしています。
家事をしているシーンが多いので、どれだけ海が家庭的なのかがわかりますね。自分の学生時代とは真逆…!
一曲通してほとんどピアノだけの、優しく哀愁のある楽曲。
海が空とカルチェラタンに行くシーン
海が空とカルチェラタンに行くシーンで流れた曲は、武部聡志の『カルチェラタン』です。
海が、俊のブロマイドを買った妹の空(演/白石晴香)とカルチェラタンに入るシーン。
その風貌は、香港にあった城塞の九龍城、長崎の軍艦島を彷彿とさせる不気味さとロマンがあります。
内部も緻密に描かれており、雑多な町や廃墟好きな筆者にはたまらないシーン♪
「馬鹿騒ぎ」のメロディをアレンジした、面白いジャズが流れます。
海が俊の自転車に乗るシーン
海が俊の自転車に乗るシーンで流れた曲は、坂本九の『上を向いて歩こう』です。
海がお肉を買いに丘の下のお店に行く途中、俊が自転車の後ろに乗せ坂をくだるシーン。
『耳をすませば』のような、ラブの予感しかしない自転車二人乗り。俊がさりげなくコロッケを渡すシーンにもキュンとします!
そんなほっこりシーンでは、日本でのヒットのみならず全米1位も獲得した、昭和の名曲「上を向いて歩こう」が流れました。
講堂で討論の最中に合唱するシーン
講堂で討論の最中に合唱するシーンで流れた曲は、「コクリコ坂から」出演者の『白い花の咲く頃 (合唱)』です。
熱く討論する、カルチェラタン取り壊し反対派VS賛成派。先生たちの目を欺くため、何事も無かったかのように合唱するシーン。
この曲は、戦後の混乱がようやく収まり始めた昭和25年にリリースされた、岡本敦郎さんの曲。
悲しい歌詞と味のあるメロディーですが、倍賞千恵子さんや、現代では椎名林檎さんなど、たくさんの歌手がカバーしています。
海と俊が二人で歩いているシーン
海と俊が二人で歩いているシーンで流れた曲は、手嶌葵の『初恋の頃』です。
大多数の生徒が「カルチェラタン取り壊し賛成派」という窮地に立たされた俊に、海が「お掃除をしましょう!」と提案するシーン。
良い雰囲気で歩く二人…別れ際に「メル!ありがとう」とニックネームで呼ぶ俊に、またしてもドキドキしてしまいます!
「初恋の頃」は甘酸っぱい青春ラブにピッタリで、アップテンポの明るく前向きな曲。
コクリコ荘の庭でパーティーをしているシーン
コクリコ荘の庭でパーティーをしているシーンで流れた曲は、武部聡志の『パーティー』です。
俊を含む取り壊し反対派の面々と、コクリコ荘の住人たちでパーティーをしているシーン。
甲斐甲斐しくテキパキと働く海を、「いいな」という感じで見る俊の自然な表情が良き!益々惹かれあって行く二人に、このあと暗雲が立ち込めます…。
ここで流れるのは、ピアノメインで癒される、優しいジャズ。
コクリコ荘と取り壊し反対派のみんなで、合唱しているシーン
コクリコ荘と取り壊し反対派のみんなで、合唱しているシーンで流れた曲は、「コクリコ坂から」出演者の『赤い河の谷間 (合唱)』です。
パーティーを抜け出し、俊に部屋を案内している海。その時に、庭で仲良く合唱が始まっているシーン。
これは、アメリカのフォークソング「Red River Valley」に基づき作詞された歌。
西部開拓時代の白人と、インディアンの女性の切ない恋心を歌った、悲しい楽曲です。
海が父親のことを語るシーン
海が父親のことを語るシーンで流れた曲は、武部聡志の『信号旗』です。
かけおちした両親、戦争中、船に乗り亡くなった父親…。海が両親の過去を俊に語るシーン。
海がなぜ毎朝信号旗を掲げるのかがわかり、祖母である花(演/竹下景子)が言っていた通り、そんな海を見ると切なくなります。割と大変な過去ですが、戦後の混乱期、海のような境遇の子どもは多かったのでしょうね。
ここで流れるのは、ピアノ単独の優しく静かな楽曲。
俊が家に帰るシーン
俊が家に帰るシーンで流れた曲は、武部聡志の『夕暮の運河』です。
海の父親・雄一郎ら三人の写真を見た後、俊が思い悩みながら帰宅するシーン。
実は俊も同じ写真を持っており、惹かれていた海とは兄妹なのでは…と悩みます。なんともドラマチックな展開に驚愕!
そんな俊を慰めるような、優しいピアノの旋律が流れます。
女生徒たちがカルチェラタンの大掃除を始めるシーン
女生徒たちがカルチェラタンの大掃除を始めるシーンで流れた曲は、武部聡志の『大掃除』です。
女生徒たちが一丸となって、カルチェラタンの男子生徒と共に大掃除を始めるシーン。
いつも偉そうで強そうな昭和の男子たちが、女子たちの言いなりになっているのがキュート!特にこの時代は「家事=女性」だったので、女子たちが強気なのかもしれませんね。
静かな冒頭から、派手なスウィング・ジャズになるこの「大掃除」は、とても元気が出る曲ですよ♪
俊が、養父に実の父親のことを聞くシーン
俊が、養父に実の父親のことを聞くシーンで流れた曲は、武部聡志の『回想』です。
船で、養父の明雄(演/大森南朋)に本当に自分の父親は澤村雄一郎なのか?と聞くシーン。
俊の一縷の望みを託して聞いた感じの硬い表情から、緊張と絶望が痛いほどに伝わって来ます。
この辛いシーンでは、「夕暮の運河」のような優しいピアノ独奏が流れます。
海が、俊から自分たちは兄妹であると聞かされるシーン
俊が、養父に実の父親のことを聞くシーンで流れた曲は、武部聡志の『雨の帰り道』です。
異様に避ける俊を問い詰める海。しかし、実は兄妹なんだと聞かされ絶句するシーン。
明言はしていないものの、二人は両想いだという事がわかっていた様子。なおさら辛い現実に、動揺を隠せません。観ているこちらも切ない!
しかしここで流れる曲は、電子ピアノで奏でられる明るい雰囲気の曲です。
海が夢を見ているシーン
海が夢を見ているシーンで流れた曲は、武部聡志の『夢』です。
いつも元気いっぱいの海ですが、かなりこたえた様子で寝込むシーン。夢の中では、父親も含め家族が集まっています。
娘を持つ身としては、海が不憫で可哀想でなりません。でも父の雄一郎がイケメンで、こちらも岡田くんが声優なのでちょっとウットリ…。
感動的で悲しい夢の中で流れるのは、ピアノとシンセサイザーの静かな楽曲。
カルチェラタン取り壊し反対派が増えて行くシーン
カルチェラタン取り壊し反対派が増えて行くシーンで流れた曲は、武部聡志の『団結』です。
俊と史郎(演/風間俊介)を始めとする寮の男子、海を始めとする大掃除を手伝う女子の努力により、カルチェラタン取り壊し反対派が全校生徒過半数にまで伸びるシーン。
本物のニュースさながら、校内新聞を使った迫力のある演出が面白い!俊と海の関係とは逆に、カルチェラタンには良い風が吹くのでした。
ここでは、アコーディオンがメインの力強いタンゴが流れます。
俊と海が混雑している電車に乗るシーン
俊と海が混雑している電車に乗るシーンで流れた曲は、坂本九の『上を向いて歩こう』です。
海が俊の自転車に乗るシーンでも使用されています。
海が俊に想いを伝えるシーン
海が俊に想いを伝えるシーンで流れた曲は、武部聡志の『告白』です。
海が電車に乗る直前、俊に「私、風間さんが好き。血がつながっていても、たとえ兄妹でも、ずーっと好き」と告白、俊もそれを受け入れるシーン。
涙腺弱々オバはここで崩壊です。とにかく真っ直ぐな海の想いに心を揺さぶられました!長澤さんの声優も良き!!
電車の効果音と共に、少しだけ優しいピアノ独奏が流れます。
海が、アメリカから戻った母に真相を聞くシーン
海が、アメリカから戻った母に真相を聞くシーンで流れた曲は、武部聡志の『母 恋うる心』です。
大学助教授である海の母・良子(演/風吹ジュン)が、アメリカの留学から戻って来るシーン。ついに、海と俊の真相が語られる…!
実は俊は写真に写っている、立花の息子であった。なんとなくわかっちゃいたけれど(笑)ホッとしました。とはいえまだ確定ではありません。
母の、父への変わらぬ深い愛を再確認し、安堵し、号泣する海。ここではピアノ独奏からオーケストラが流れ、ストーリーが盛り上がります。
徳丸理事長が、カルチェラタンを訪れるシーン
徳丸理事長が、カルチェラタンを訪れるシーンで流れた曲は、武部聡志の『ようこそカルチェラタンへ』です。
俊・史郎・海の三人が直談判し、耳を傾けてくれた徳丸理事長(演/香川照之)が、カルチェラタンの視察に来るシーン。
見た目は絶対に悪役っぽいのですが、とっても優しいナイスミドル。このキャラをガラガラ声で演じている香川照之さん、最初はわかりませんでした!
ここでは、盛り上がっているカルチェラタンを表現した、ノリノリのスウィング・ジャズが流れます。
カルチェラタンにいる生徒が校歌を合唱するシーン
カルチェラタンにいる生徒が校歌を合唱するシーンで流れた曲は、「コクリコ坂から」出演者の『紺色のうねりが (合唱)』です。
徳丸理事長に、校歌斉唱を披露するシーン。感動した理事長は、カルチェラタンの存続を確約します。
ここで歌われる曲の原案は、宮沢賢治の詩「生徒諸君に寄せる」(未完成の原稿)。
作詞は宮崎駿監督/宮崎吾朗監督、作曲は谷山浩子さんという、なんとも豪華な制作陣の曲です!
ちなみに、最初に独唱する女子生徒の声は手嶌葵さんでした。
手嶌葵さんバージョン↓
海と俊が港に向かうシーン
海と俊が港に向かうシーンで流れた曲は、武部聡志の『明日に向って走れ』です。
写真に写っている小野寺善雄(演/内藤剛志)が港に来ており、出航寸前。父親の話を聞きに二人が走って向かうシーン。
必死に走る二人を、町中の人たちが手助けをして船の元へと送ります。町の人との距離が近く、これもまた昭和の良きポイントですね。
ここで流れるのは、今作では初めてドラムを使用したブルースロック。
エンディング〜エンドロール
小野寺が、二人の父親の話をするシーンで流れた曲は、武部聡志の『さよならの夏~コクリコ坂から~』です。
出航時間を伸ばし、詳しく話してくれた小野寺船長。亡き盟友たちの子どもに出会えて、涙を流すシーン。
小野寺船長、寛容で懐の深い雰囲気が内藤剛志さんにピッタリですね!ここで、ようやく二人には血の繋がりは無かったと確定しました。
この主題歌は、森山良子さんが昭和51年に発表した「さよならの夏」をカヴァーしたもの。
エンドロールまで流れ、手嶌さんの歌声が優しく映画を包み込みます。今作、総じてエモくて素敵な楽曲ばかりでしたね!
サウンドトラック
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