2024年10月18日公開の映画『まる』は、荻上直子が監督を務め、堂本剛が27年ぶりに映画主演を果たしています。現代美術家のアシスタントとして働く沢田(堂本剛)が、ある日偶然に描いた「◯(まる)」をきっかけに、有名アーティストになるのが始まりですが…。独特な演出と沢田を取り巻く模様が展開されます。その他の出演は綾野剛、吉岡里帆らです。
まる
- 未体験
- 4
- 感情移入
- 3
- 再鑑賞
- 1
- 予測不可
- 4
- サウンド
- 4
堂本剛演じる沢田の雰囲気と作品のテーマに引き込まれる!綾野剛との掛け合いにも注目です。
評価は年間100作品以上を鑑賞する執筆者こでぃもの実体験をもとにしています。
『まる』は人気?どんな人が観ている?
日曜の昼の上映回で、川崎のTOHOシネマズで鑑賞してきました。広めのシアターでしたが、席の埋まり具合は3割ほど…女性のお客さんが主でした。1人で来てる人も多く、年代はバラバラでしたね。
TOHOシネマズは上映してからも15分くらい映画予告などが流れるため、映画自体の上映と合わせて2時間越えは長く感じる人も多いかも!配信やレンタルなどで家でのんびり見るのもオススメかもしれませんね。
映画館の大きなスクリーンで堂本剛の表情をしっかり見たり、「○」によるアートを見たりしたい人は映画館がいいかも!堂本剛が歌うエンディング(主題歌)の「街(movie ver.)」を大きな音響で聞きたい人も映画館がおすすめです。
以下より重要なネタバレを含みます。
ネタバレありで解説!
沢田
沢田は有名アーティストのアシスタントをしながら、薄給ながらも生活を送っていました。床が傾いている部屋で寝れない日々を送っていたある日、自転車の事故で右手を骨折。解雇されたため、コンビニのアルバイトを始めます。
ミャンマー人の店員から注意されつつ、コンビニのバイトを続ける沢田…家に戻ると隣人のうるさい声が聞こえ、沢田は「祇園精舎の鐘の声…」と口にするのでした。沢田は床にキャンバスを敷き、黒い丸を描きます。いくつか描いて、店に絵を持ち込みつつ、他の道具も引き取ってもらいました。
その後、ツチヤと名乗る男が沢田を訪ね、「円相を1つ百万円で買い取る」とのこと。沢田は信じられないと思いつつ、バイトを続けます。
沢田が歩いて帰宅するシーンでは、町中にある丸いものがよく目につきましたね。今作のテーマになっているのかなと思いつつ、沢田の人柄が伝わってくる映画の前半。有名アーティストの元でアシスタントをしている際には、他のアシスタントの考えなども聞けて「なるほど」と思いました。
沢田が池で老人に会った際に、円の話をされましたが…「先生」と呼ばれる老人の正体が気になりました。
○(まる)の流行
街の画廊に自身の絵が展示してあり、その絵が高額で買い取られたと知る沢田。店主に絵を描いた本人だと告げると、個展の約束をされて前金も渡されました。
円相は平和の象徴だとされ、動画などでも絵が広まっていった…ファンや視聴者に声をかけられる中、沢田は心地良いとは思いません。
沢田が円を描こうとすると隣人がうるさくし始めたので、壁を叩きます。隣人は壁を蹴って穴を空け、その後、沢田を食事に誘いました。
隣人はマンガ家志望だと明かし、生きる価値を見出そうとしていた…そんな中、沢田が丸を描いただけで人気になったため、自分も沢田を名乗って円を描き、売り飛ばそうと考えます。
隣人のマンガ家志望の男は、いろいろと不安そうでしたね。応募しても目に留まらないとなると、自身に価値が無いのではと思うのも仕方ないかもしれません…。働きアリの話なども踏まえて今作のテーマになっているのだなと感じました。
隣人は沢田と食事を共にした際にビールの影響もあって荒れていた姿が印象的です。その後、隣人が大量の丸の絵を描いて町中に貼り、沢田を名乗ろうとするのが驚きでした。沢田のマネをして「誰でも描けそうな丸の絵」をメルカリやNFTで売ろうとしても、売れなかったというオチもリアルな話だなと感じます。
沢田の選択
沢田はいくつか円を描いてツチヤに見せますが、お金のことを考えて描いた絵は彼の目に留まりません。どんな絵を描けばいいか悩む沢田は、池で老人と再会します。
老人と茶室でお茶を共にしながら、彼の話を聞いた沢田。考えすぎていたと気付いて新しく円を描き、キャンバスだけでなく部屋中に円を描きます。その絵はツチヤの目に留まり、個展を開くに至りました。
その際に、人気アーティストと会話をした沢田は、円を描き続けるべきか考え始めます。骨折が治った沢田は前と同じように絵を描き、ツチヤに見せます。「丸の絵を描くべきだ」と言われた沢田はキャンバスに穴を空け、その場を去りました。
その後、住んでいた建物が壊されることになり、沢田はコンビニのバイトを辞めることに…先輩に色紙を渡された沢田は、筆ペンで円を描いて「今までで一番うまく描けた」と言うのでした。
その後、別な場所で自転車を走らせる沢田ですが、夕陽に見とれて再び事故を起こしてしまい、物語は幕を閉じます。
世間が注目しているテーマや絵を買い取るディーラーの指示で描く絵は、描きたい絵とは限らない…そんなテーマを感じ取れた映画でしたね。マンガ家の話も含め、技量や努力の量があっても成功するとは限らないことも教えてくれた気がします。
さまざまなアーティストが悩むテーマを、言葉数の少ない沢田から感じ取りつつ、彼の涙に多くを想う人も少なくないのではと思いました。
芸術・夢を追う作品関連ならこちらもオススメ!
芸術やクリエイティブな活動に感動する映画なら以下の2作品もおすすめ!
線は、僕を描く
砥上裕將による同名の小説を原作とした2022年公開の映画で、水墨画をテーマにした感動的なドラマです。監督は小泉徳宏、主人公の霜介を横浜流星が演じています。
物語は、大学生の霜介が、偶然出会った水墨画の篠田湖山の元で水墨画の世界に魅了されていくとのが始まり。自分を見つめ直し、周囲との関わりの中で成長していくのに注目です。
自らの感情を「線」に込めて、水墨画の美しさや独特の表現方法を感じ取れる作品!大きな筆で描く水墨画には見惚れてしまいますね。芸術と人生をテーマにしており、人間ドラマと合わせて魅了される映画です。
数分間のエールを
MV制作に情熱を注ぐ高校生の彼方(かなた)が、歌手としての夢を諦めた新任教師、織重夕との出会いをきっかけに、彼女の歌のMV(ミュージックビデオ)を作りたいという強い願いを抱く青春ドラマです。2024年に公開され、芸術に対する情熱や自己表現、周囲との葛藤を描く映画として話題となりました。
クリエイティブな分野における「成長と挑戦」をテーマにした物語は思いが伝わってくる!ミュージシャンとしての夢を諦めた先生のために、彼方がMV制作を試みていく姿は応援したくなりますよ。
さまざまなMVが見れたり、制作過程に驚いたり、繊細な映像と合わせて楽しめる映画です。