1964年製作制作の映画『シェルブールの雨傘』。
ミシェル・ルグランが音楽を担当したフランスのミュージカル映画です。全編歌唱で構成されており、第17回カンヌ国際映画祭で受賞しました。
舞台はフランスの港町シェルブール。家業の傘屋を手伝うジュヌヴィエーヴと自動車整備士のギイは将来を約束した恋人同士でしたが、ある日ギイの元へ徴兵の召集が届きます。
映画『シェルブールの雨傘』で流れた音楽5曲をご紹介します。
『シェルブールの雨傘』を観る方法
『シェルブールの雨傘』で流れた曲とは?
ギイが自動車整備工場で働くシーン(第1幕1957年11月)
Scéne Du Garage - Michel Legrand
ギイが自動車整備工場で働くシーンで流れた曲は、Michel Legrand(ミシェル・ルグラン)の『Scéne Du Garage』です。
Michel Legrandはフランスの作曲家、監督、俳優、ジャズピアニストです。1967年の映画『ロシュフォールの恋人たち』の音楽も担当しました。
軽快なスウィングジャズから始まり、ギイが働く自動車整備工場の様子が映し出されます。
「残業できるか?」と些細なセリフも全部歌で表現されています。初めて『シェルブールの雨傘』を観た人なら驚いてしまうかもしれませんね。
現代ではほとんど見かけることができないクラシックカーが沢山登場するシーンでもあります。どれもお洒落でかっこいい!
ギイのカラーはブルーベースで展開されています。『シェルブールの雨傘』はキャラクター分けを色で行っているので、色に注目して観てみるのも面白いですよ。
Amazon Music Unlimited
オペラの帰りにギイとジュヌヴィエーヴがダンスクラブに行くシーン
Michel Legrand - Au Dancing
オペラの帰りにギイとジュヌヴィエーヴがダンスクラブに行くシーンで流れた曲は、Michel Legrand(ミシェル・ルグラン)の『Au Dancing』です。
仕立てたばかりのドレスを身にまとったジュヌヴィエーヴは、ギイとオペラを楽しみます。ギイとジュヌヴィエーヴは、オペラの後、行きつけのダンスクラブで2人の時間を過ごす。
母親の目を盗んでこっそりギイとデートするジュヌヴィエーヴの姿は、現代のティーンでもよくあること。危ない恋ほどよく燃え上がりますね。
本シーンでのジュヌヴィエーヴは、サーモンピンクのワントーン・コーディネートをキュートに仕上げています。アクセントカラーはイエローゴールドのボウで、1960年代に流行したボリューム感たっぷりのハーフアップにしています。
ギイもジュヌヴィエーヴに合わせて、ピンクのシャツを選んでいますね。マッチング・コーディネートのお手本帳を見ている気分。
ギイとジュヌヴィエーヴが別れを惜しむシーン
Michel Legrand - Devant Le Garage
ギイとジュヌヴィエーヴが別れを惜しむシーンで流れた曲は、Michel Legrand(ミシェル・ルグラン)の『Devant Le Garage』です。
アルジェリア戦争へ出兵することになったギイは、ジュヌヴィエーヴと最後のひと時を惜しみます。
一方、ジュヌヴィエーヴは2年もギイと離れてしまうことに耐えられないと悲観に暮れています。
ギイとジュヌヴィエーヴの恋愛観の違いが手に取るようにわかるシーンですね。ギイは2年待てばまた一緒に過ごせると希望を持っていますが、ジュヌヴィエーヴは2年なんて長い年月で2人の関係は終わってしまうと嘆きます。まだ10代のジュヌヴィエーヴにとっては、壁が大きすぎる試練です。
ジュヌヴィエーヴの悲しみをパステルブルーのオーガンジースカーフで表現しているシーンでは、思わず感嘆のため息がもれます。
エムリ夫人・カサール・ジュヌヴィエーヴが食事をするシーン(第2部1958年11月)
Michel Legrand - Le Diner
エムリ夫人・カサール・ジュヌヴィエーヴが食事をするシーンで流れた曲は、Michel Legrand(ミシェル・ルグラン)の『Le Diner』です。
ギイが出兵した後、妊娠が発覚したジュヌヴィエーヴ。母親のエムリ夫人は娘と産まれてくる子どものために、宝石商のカサールとの縁談進めます。
ピンクとブラックの使い方が印象的なシーンです。エムリ夫人のコーディネートが文句なしの100点満点!リトルブラックドレスにベイビーピンクのオーガンジーショールを組み合わせ、品の良いジュエリーを身につけています。
ギイとの関係や子どものことで思い悩むジュヌヴィエーヴですが、カサールのハートはしっかりと掴み逃しません。1960年代当時の時代背景を考えると、10代でシングルマザーで生きていくには現代よりもつらい世界です。
ギイとジュヌヴィエーヴがガソリンスタンドで再会するシーン(終幕1963年12月)
Michel Legrand - Finale
ギイとジュヌヴィエーヴがガソリンスタンドで再会するシーンで流れた曲は、Michel Legrand(ミシェル・ルグラン)の『Finale』です。
月日は流れ、それぞれの人生を再スタートさせたギイとジュヌヴィエーヴ。ある夜、ギイが経営するガソリンスタンドに、偶然ジュヌヴィエーヴが娘のフランソワーズと一緒に立ち寄ります。
思わぬ偶然に動揺するギイとジュヌヴィエーヴは、ガソリンスタンドの待合室で話すことにします。
第3部まではカラフルな世界だったのが、ブラック&ホワイトに統一されています。ジュヌヴィエーヴの心情を表しているのでしょうか。
フランソワーズを遠くから見つめるギイに胸が痛くなりますが、すでに温かい家庭を持っているギイは一線を画します。
ジュヌヴィエーヴはなんだか未練があるような様子ではありますが、裕福そうな服装からは今の生活に満足しているようにも見えます。
恋と愛は違うものだと実感させられるラストシーンでした。雪が深々と降る情景に涙が止まりません。
筆者の感想
1960年代の映画を代表する『シェルブールの雨傘』は、ミュージカル以外にもファッション、インテリアと心惹かれる作品です。
フランスのハイセンスなカラー使いは独特で、絶妙なバランスでまとまっています。柄on柄でもごちゃごちゃせずに調和しているのも不思議ですね。『シェルブールの雨傘』をただぼーっと眺めているだけでも十分楽しめます。ワンカットが美しい映画です。
若かりし頃のカトリーヌ・ドヌーヴの憎めない小悪魔なジュヌヴィエーヴも魅力的です。ジュヌヴィエーヴのファッションは真似したくなるものばかり。とくにバーバリーのトレンチコートにミニドレス、フラットシューズはパリジャンヌの定番コーディネートではないでしょうか。シンプルなブラック・ボウの使い方もキュートですね。
『シェルブールの雨傘』は戦争によって引き裂かれた男女の美しいラブストーリーですが、意外と現実的な物語かと思います。
堅実に生きていくための選択をするジュヌヴィエーヴ。つらい時に寄り添い支えてくれたマドレーヌと共に過ごすことを決めたギイ。若い頃の燃え上がるような恋の果てに、それぞれ違う人生を歩みます。
ハッピーエンドまたはバッドエンドと捉え方が鑑賞者によって異なる映画ですが、私はハッピーエンド派です。美しい思い出は美しいままにしておきましょう。