2024年2月29日に公開された、Netflixオリジナル映画『パレード』
記者の美奈子は、息子を迎えに行く途中で津波に飲まれてしまう。
海岸で目覚めると、誰も自分に気が付かない。
そして、同じように大切な人を遺してしまった、現世に未練のある人たちと出会う。
- 主演:美奈子役/長澤まさみ(『モテキ』『コンフィデンスマンJP』)
- 主題歌「なみしぐさ」:野田洋次郎(RADWIMPS)
- 監督:藤井道人(『余命10年』『最後まで行く』)
子持ちとしては、胸が詰まるような想いのするストーリー。
絶対悲しそうなので観ないでおこうと思いましたが、挑戦してみるとじんわり心が温まる作品でした!
※津波の描写があるので要注意
この記事では、Netflix映画『パレード』を鑑賞した筆者の感想やあらすじ、ネタバレ解説をご紹介します!
『パレード』の評価&感想
- 感動度
- 4
- 脳トレ度
- 3
- 再鑑賞度
- 3
- サプライズ度
- 4
- 話題性
- 5
長澤まさみさん主演の作品ですが、錚々たる俳優陣が出演する事でも話題となりました!
※ネタバレの可能性があるキャラ名は伏せます
- 『Mother マザー』で長澤さん(美奈子)と共演した、奥平大兼さん、木野花さん。
- 藤井道人監督作品『余命10年』に出演した坂口健太郎さん(アキラ)、リリー・フランキー(マイケル)さん。
- 同じく『ヴィレッジ』で主演を務めた横浜流星さん(勝利)。
- 同じく『ヤクザと家族 The Family』に出演した舘ひろしさん、寺島しのぶさん(かおり)、北村有起哉さん(美奈子の先輩)。
- 田中哲司さんは「田中」役、森七菜さんは「ナナ」役で、俳優名と同じ名前で出演。
- その他、でんでんさん(アキラの父親)などの大御所俳優も。
また、本作は映像やセットのエモさがイイ!
夢の中のような「現実世界」と「あちらの世界」の境界線が、非常に丁寧に美しく描かれています。
登場キャラクターそれぞれに温かいストーリーが用意してあって、見応えもアリ。
ただ一つ、美奈子のターンでは結構辛いシーン(津波、地震、瓦礫の山、避難所など)が多く流れるので、私はキツかった;
そこだけが注意点ですね。
全体的なストーリーは分かりやすくて緩急もさほど無いので、人によっては退屈になってしまうかもしれませんが、まったりと観るのには最適だと思いました。
また、エンドロールで流れる「なみしぐさ」が心に染み渡るので、ぜひ最後まで観てください!
※この先、登場キャラ「マイケル」の情報を書きますが、少しネタバレかも?
何も知りたく無い人は飛ばしてください!
本作、注目すべきキャストは、藤井道人監督とタッグを組み『Mother マザー』などの作品を世に送り出した、プロデューサー・河村光庸さん(2022年没)をモデルにした、マイケルというキャラ。演じるのはリリー・フランキーさんです。
マイケルが劇中で語る武勇伝の数々は、河村さんご本人の逸話だそう。(沖縄の「星の砂」筆者も持っています。笑)
この作品は「死んだ人たち」をモチーフにしていますが、現実とリンクしている部分(配役、登場キャラの名前など)が多くあるので、怖さというよりは、切なさ・温かさ・人の心、がじんわり伝わって来るような感覚になりました。
以下より重要なネタバレを含みます。
『パレード』のネタバレ
死んだ人達が集う場所
大地震・津波に襲われ、波打ち際に倒れていた美奈子。
目を覚ますと周りは瓦礫の山で、救助隊が慌ただしく作業をしていた。
しかし、美奈子が話しかけても誰も返事をしない。さらに、人に触ろうとしても触れない。
美奈子は、意味が分からず途方に暮れていた。
そこに、ある男性が車で通りかかり、美奈子に「危ないですよ」と声を掛ける。
美奈子はその男性(アキラ)の元に駆け寄って、なぜか周りの人が話してくれない、触れる事も出来ない…と話した。
するとアキラは「僕らの所へ行きましょう」と言って、美奈子を車に乗せた。
ーー
たどり着いた場所は、遊園地のような場所。そこには数人の男女がいてくつろいでいる。
たじろぐ美奈子に、勝利という男性が「お姉さんはすでに死んでるんだけど、やり残した事があって、先には行けてないんだよ」と教えた。
全国各地にこのような場所があって、死んで現世に未練がある人たちが集まっているらしい。
ここにいるのは
- アキラ(小説家)
- 勝利(ヤクザ)
- マイケル(映画プロデューサー)
- かおり(スナックのママ)
- 田中(銀行員)
というメンバー。
それを聞いて死んだ事を自覚した美奈子だったが、遊んでいるようにしか見えない皆んなを見てイライラする。
アキラは、そんな美奈子に「一回だけ僕たちに付き合ってもらえませんか?」と言って、夜の街に繰り出す。
各地から続々と集まる人々。
不思議そうな美奈子に、アキラは「ひと月に一度、新月の夜に、皆んなで会いたかった人を探すんです」と言った。
そして、〝全員死んでいるけれど、この場所で再会した家族〟が抱き合っているのを見る。
死んでいるのに、私たちは確かにここに存在しているー。
ひと月に一度のパレードを見て、美奈子はやっと状況を受け入れ、ここに残って良を探す事を決意した。
ーー
アキラ達の拠点である遊園地に戻った美奈子は、皆んなに安否不明の息子・良がいる事を伝え「もう少しここにいさせてください」と言う。
アキラ達は快く受け入れ、乾杯をした。
すでに涙腺がゆるゆるして来ました;
戸惑う美奈子が見たものは、確かに存在している「家族愛」でしたね。
アキラ達の歩んで来た人生も気になります。
それぞれが現世に遺して来たもの
ヤクザの勝利は数年前、抗争で撃たれて死んでいた。
しかし、彼は遺して来た彼女が気がかりで、7年間探し続けている。
ある時、自分の命日・七回忌に自分の墓へ行くと、父親(組長)が「すまんな。組を畳む事にした」と言いながら墓参りをしていた。
そして近くに、花を持った彼女・みずきがいるのを発見。
勝利は、墓前に来なかったみずきを追いかけ、家に行くと新しい彼氏がいた。
優しそうな彼氏とうまく行っているようだが、彼女は勝利の写真を見て、時折泣いている。
勝利は、みずきに「よかったな。幸せになれよ」と伝えた。そして、未練が無くなった彼は成仏して行く。
ーー
かおりは、遺して来た子どもたちが気がかりで、長年見守っていた。
母を亡くしても、協力し、逞しく生きる子どもたち。
かおりは、長女に子どもが出来て、エコーを観ている時に満足し「もう悔いはない」と言って成仏する事を決意した。
ーー
記者である美奈子は、今起こっている事を書き留めている。
同じように、アキラもこの世界の事を執筆していた。
美奈子に、自分がなぜ成仏しないのかを語り出す。
アキラの父は厳格な人物で酪農家。一方アキラは小説家を目指していた。
しかしアキラは若くして病を患い、余命宣告をされてしまう。
悲観して両親にあたりちらし、状態は良くならず死んでしまった。
その後アキラは、父が自分の代わりに小説を書き始めた事を知る。それが心残りで、空へ行けないのだと話した。
ーー
皆んなが団らんしていると、1人のセーラー服の女の子がこちらの様子を伺っている。
美奈子が話しかけると、自分は「ナナ」だと名乗ったが、その子の手首には傷があった。
不貞腐れて悪態を付く彼女だが、いじめを受け、リストカットをして死んだようだ。
美奈子に「謝りたい人がいる」と打ち明けたナナは、同じ学校のクラスメイトで、親友の靖子に謝ろうとして学校へ行く。
しかし、死んだナナの代わりに靖子がいじめられていた。
ナナは靖子に泣きながら謝ったが、成仏する事は出来なかった。
ーー
美奈子は、ついに良が生きているという情報を掴む。
保護されている避難所へ行くと、良は高熱を出し、職員に「ママに会いたい」と話していた。
美奈子が泣きながら「ごめんね」と伝えると、不思議な事に良は母の存在に気付き、「ママ、いるの?」と話し始めた。
そして美奈子は、良が寝るまで抱きしめながら、今いる不思議な世界のお話をしていた。
ーー
マイケルは50年前、東京から沖縄に行って、友人の佐々木と共に学生運動に参加していた。
そこで麻衣子という女性と恋に落ちるも、警察に捕まる事に怯え、デモ当日に東京へ逃げ帰ってしまう。
マイケルは、自身のその経験を映画化したいと言い出した。
ストーリーは、主人公が東京に帰ってしまったあと、50年後に沖縄に行って、麻衣子の墓前で麻衣子の孫娘(ナナが演じる)に会う…というもの。
良の無事を確認し、思い残す事が無くなった美奈子であったが、「最後にマイケルの映画製作を手伝おう」と皆んなに提案した。
ーー
皆んなで協力し、ついに完成したマイケルの映画。
マイケルはそのフィルムを持って、存命中の麻衣子の家に行く。
そこには結婚相手の佐々木がいたが、彼も2年前にガンで亡くなっていたためマイケルと対話した。
家の中に案内されたマイケルは、自分が東京で売り出した「星の砂」の瓶を麻衣子が大切に持っていた事を知る。
そして、映画を観ている麻衣子を抱きしめ「ごめん」と謝った。
ーー
遊園地に戻った美奈子達は、パレードに参加している者たちを集め、映画上映会を行った。
その夜、美奈子・かおり・マイケルは、成仏前の最後の食事を、アキラ・ナナ・田中と共にとる。
実は田中は「あっちの世界」の案内人で、皆んなの監視役であった。一方、アキラはまだ、この世界に残るらしい。
別れを惜しみながら、談笑する美奈子たち。
最後にマイケルは、ナナに「俺のアイデアを使っていいから、映画を撮ってね」と託した。
ここで、突然アキラが美奈子に告白をします!
最初、このラブ要素はいらないのでは…?と思いましたが、彼らはその場所で「存在」しているのであって、共に暮らすメンバーに恋愛感情を持つのは当然の事だよなぁと考えました。
それによって「死んだ人々」をよりリアルに感じられますし、その後特に進展しなかったので、作品の雰囲気が壊れてなくて良かった〜と一安心。
でもマイケルは、佐々木の前で奥さんにハグとか…。(佐々木が促したとはいえ)ちょっと驚きました。笑
この中盤はとても長くて、尺が足りないのでは?とも思えるボリューム感!ウルウルしっぱなしでした。
現世
大人になったナナは、成長した良と待ち合わせをしている。
ナナはマイケルやアキラの意思を継いで、あの時の体験を映画化したのだ。
映画館には、かおりの子どもたちも合流。
すると、かおりの孫(妊娠していた長女の子)しほがナナに向かって、「グー!」と親指を立てる。
それはマイケルがよくしていたポーズであり、ナナは驚きつつも「グー!」と返した。
映画が始まると、良は母親のようなキャラクターが出て来て目を輝かせる。
最後の字幕には、英語で「マイケルに捧ぐ」と書かれていた。
まさか、ナナが目覚めるとは!死の淵にいただけで、死んではいなかったのですね。
不思議が不思議を呼ぶ、でも感動的なエンディングでした。良も無事に大きくなって良かったね…。
最後まで観ると、藤井監督が河村さんへ宛てた「手紙」のようにも思えました。
マイケルが生まれ変わった?と感じさせるのも面白いですね。(輪廻転生。藤井監督の願望でもあるのでしょうか)
現実とあちらの世界が織り混ざった「遺した側」の物語。
EDで流れる野田洋次郎さんの「なみしぐさ」も、本編を見終えた後の余韻を温かく包み込んでくれました!
『パレード』が好きな人にオススメの映画
映画『パレード』のように、温かい「生と死」が描かれた作品をピックアップ!
いま、会いにゆきます
公式の予告動画が無かったので、映画主題歌であるオレンジレンジの「花」を貼りました。
「死んだはずの妻が帰って来た」というファンタジーですが、心から温まる作品です。音楽を聴いただけで泣ける…。
今は亡き、竹内結子さんが出演している名作です!