2021年7月16日公開の映画『竜とそばかすの姫』。
歌うことができなくなってしまった鈴が仮想世界「U」で歌えるようになり、そこで出会った竜に惹かれていくという日本のアニメーション映画です。細田守監督による今作の日本の興行収入は60億円ほどでした。
この記事では、映画『竜とそばかすの姫』で流れた音楽7曲をご紹介します。※この記事はネタバレを含みます
公開日 | 細田守 作品 |
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2018年 | 『未来のミライ』で流れる23曲をシーンごとに解説! |
2021年 | 竜とそばかすの姫 |
『竜とそばかすの姫』を観る方法
『竜とそばかすの姫』で流れた曲とは?
オープニングでベルがクジラに乗って歌うシーン
millennium parade,Belle (中村佳穂)- U
オープニングでベルがクジラに乗って歌うシーンで流れた曲は、millennium parade,Belle (中村佳穂) の『U』です。
打楽器音と共に曲の始まりを感じさせ、ベルを演じる女性シンガーのテンポの良い歌が加わっていきます。力強さも感じさせ、静かに歌っていくパートも特徴。
「millennium parade」はKing Gnuの常田大希が主宰する音楽プロジェクトで2019年に結成されました。『U』の制作を担当し、ベル役の中村佳穂が歌を歌います。
「ようこそ"U"の世界へ」というアナウンスと共に『U』が流れ、壮大な世界観が伝わってきますね。仮想世界にはボディシェアリング技術を使ったオリジナルの身体「As」を使うアカウントが50億も存在すると聞いて驚きです。
「鼓動のなる方へ さぁ」という歌詞と共にカメラがUの世界を映していく演出、バーチャル空間では天地の概念が無いような世界観が描かれるため引き込まれます。
そこにベルがスピーカーをたくさん乗せた巨大なクジラの頭に立ち、赤い花々の衣装とピンク色の柔らかな髪をはためかせて登場するのが印象的。高々に歌ってAsの注目を集めているという映画の始まりは見入ってしまいました。
この曲は鈴がベルとして"U"で有名になった際にも再度、流れます。
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鈴が高校へ向かうシーン
中村佳穂 - 歌よ
鈴が高校へ向かうシーンで流れた曲は、中村佳穂の『歌よ』です。
「ラララ」と口ずさむようにする歌詞と共に始まり、静かな曲調が続いていきます。女性シンガーが囁くようにしながら歌うパートから一気に盛り上がっていくのが特徴。その後も力を込めて歌っていきます。
中村佳穂は1992年生まれの日本の歌手で、『きっとね!』、『そのいのち』などが有名な曲です。
鈴が登校するシーンで『歌よ』が流れ、田舎町の風景が広がります。彼女はトラウマにより現実では歌えませんでしたがUの世界に招待されて、ベルという名前のAsを作ってからは「ここなら歌える」とわかりました。
初めてUを訪れたベルは『歌よ』を歌い、力強さも感じる歌声を響かせます。Uには様々なAsがいましたが、ベルの歌を批判する人もいましたね。そうした中で、天使の姿の人が「キミハ ステキ」と言ってくれるのが印象的。
次の日、鈴はベルのフォロワーが凄まじい勢いで上がっていくのを見て驚愕しつつ、様々なアレンジが作られていることを知るという展開も面白いなと思いました。色々な衣装のベルが映し出されて、ベルへの賛否両論などがスピーディーに流れていくのが気になっていきます。
この曲は鈴が地元の駅に戻って来て父に迎えられるシーンでも流れます。
音楽室で生徒たちが合唱の練習をするシーン
心の瞳(合唱曲)
音楽室で生徒たちが合唱の練習をするシーンで流れた曲は、の『心の瞳』です。
ピアノの流れるような伴奏で始まり、ゆっくりと歌が入っていく合唱曲です。男女それぞれのパートがあり、中盤では高い声を響かせるようにするのが特徴。
楽曲は坂本九であり、作詞と作曲は、荒木とよひさ・三木たかしです。
鈴は子供の頃に母親を亡くしたという過去が明かされ、それから歌うことができなくなってしまった…無理に歌おうとすると嘔吐してしまうほどのトラウマを抱えていたようでしたね。
そのため、音楽の授業では席に座って他の生徒を見やるだけになっていました。生徒たちがピアノの周りに集まって『心の瞳』を合唱しており、ポツンと座る鈴の暗い表情から彼女の心情が伝わってきます。
母に取り残されたという思いが募り、父とは距離があいてしまって冷たい態度をとってしまっている…一方で、忍くんは鈴を気にかけていたり、ヒロちゃんとの仲の良さが伝わってきたりするのにも注目です。
カラオケでUのベギースーの曲が流れるシーン
ermhoi - Blunt Words
カラオケでUのベギースーの曲が流れるシーンでは、ermhoiの『Blunt Words』が流れました。
クールなBGMと共に女性シンガーの勢いのある歌が入っていく曲です。流ちょうな英語の歌詞をカッコ良く歌い上げているのが特徴。
エルムホイは1992年生まれの日本の歌手で、「millennium parade」のメンバーです。『埋立地』、『E』などが有名な曲です。
鈴はクラスメイトに無理やりカラオケに誘われて、お店で『Blunt Words』が流れていましたね。ペギースーの曲が人気であると分かり、Uでは彼女が「みんなの歌姫!」という感じであるのも伝わってきます。ペギースーはブルー系の髪色にハッキリとしたリップとアイシャドーを入れていてクールな印象を与えます。
ベルの歌が少し話題になった際には歯牙にもかけないという感じでしたが…人気が上回った際には「なんであんな子が私より上なの!?」と声を荒げるので彼女の性格がよくわかります。そして、視聴者がペギースーを全く擁護しなくなったのには少し笑ってしまいつつ、有名人の苦悩を感じさせるなと思いました。
そんなペギースーに対し、友人のヒロちゃんが「ベルによって世界が変わったんだよ!」と言い放つのがある意味、爽快でしょう。
ママさんたちがコンサート用の歌を練習するシーン
森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世 - Alle Psallite Cum Luya
ママさんたちがコンサート用の歌を練習するシーンで流れた曲は、森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世の『Alle Psallite Cum Luya』です。
歌詞を重ねるようにして歌う合唱曲で、ゆったりとした歌でありながらも、一つの曲として厚みを感じさせるのが特徴。今作では女性5人が歌い上げています。
『Alle psallite cum luya(いざ、リラを奏でて歌わん)』は難易度が高い合唱曲で、以下のような歌です。
廃校となった学校には色々な掲示物が貼ってあり、ママさんたちが体育館で声を響かせるようにして『Alle Psallite Cum Luya』を歌います。鈴も合唱団員として参加していましたが…こっそりとしていましたね。歌に参加したいという思いが伝わってきつつ、ママさんたちと楽しそうにしていたのが印象的。
母親の友人たちであるママさんがちは鈴のことを気に掛けており、「幸せとは何か?」について話が盛り上がったりするのもおもしろかったです。ママさんたちは鈴がベルとして活動しているのを知っていましたが、陰ながら見守っていることからも優しさを感じさせました。彼女たちが鈴のピンチには駆けつけるという映画の後半の展開にも注目ですよ。
鈴が竜のための歌を考えるシーン
中村佳穂 - 心のそばに
鈴が竜のための歌を考えるシーンで流れた曲は、中村佳穂の『心のそばに』です。
落ち着いたピアノと共に女性シンガーの歌が加わっていき、「聞かせて」と歌うサビにかけて徐々に盛り上がっていきます。
壮大な雰囲気を感じさせ、思いを語るようにした歌と共にラストは高い声を響かせていきます。
ベルは竜のことを少し理解し、本当に傷付いているのは心だと考えました。そのことを踏まえてベルは竜に宛てた歌『心のそばに』を歌います。心の中をのぞかれたくない、怒りや悲しみなど口にできないことを聞かせて欲しいと歌うのが印象的。
そうして城にあった秘密のバラを付けて彼らの姿が舞踏会用の服に変わり、ホールのような場所で踊り始めるのがステキでした。満天の夜空をバックにベルが竜をギュッと抱きしめる姿も心に残ります。
その後、物音が聞こえると竜は苦しみだして、アザが増えていくというシーンに驚かされましたが…竜の秘密が気になりますね。鈴が竜の秘密に近付いた際には、天使が『心のそばに』のメロディを口ずさむのにも注目ですよ。
鈴がUの世界で正体を明かして歌うシーン
中村佳穂 - はなればなれの君へ
鈴がUの世界で正体を明かして歌うシーンで流れた曲は、中村佳穂の『はなればなれの君へ』です。
静けさに響き渡るような、ゆっくりとした伴奏で始まります。そこに女性シンガーの落ち着いた歌声が入り、曲に合わせてスローテンポで進んでいく曲です。
「あいたい もう一度」という歌詞を歌っていき、BGMと共に盛り上がっていきます。
鈴は竜の正体が14歳の男の子だと知り、彼とその弟を助けたいと考えます。そのため、彼らの信用を得ようとUの世界でベルの正体を明かし、『はなればなれの君へ』を歌いました。久しぶりにベルが現れたことで集まっていたAsたちは正体に驚きつつも、彼女の歌に魅了されていくという展開が良いですね。
大歓声と共に涙を流すAsたちは鈴の歌に合わせて後に続くように歌うのが印象的。その歌を聞いた天使のAsを使っていた知くんは、「鈴に会いたい」と言って、鈴と連絡をとることになる一連のシーンは感動を覚えます。
この歌はエンディングでも流れ、物語の終わりを感じさせるのにも注目でしょう。
筆者の感想
細田守監督が仮想世界と歌をテーマにした映画を作ったと聞いて、予告を見た時に「すごい!」と思わされた作品です。ベルによる『U』の曲と演出のインパクトは圧巻でしたね。この曲だけでも引き込まれましたが、『美女と野獣』のような演出を思わせるのもステキでした。
竜の正体が気になる中、現実の鈴のロマンスの行方も気になるため見入ってしまうストーリー、歌と共に仮想世界ならではのオリジナリティあふれる映像を楽しめるのが見どころでしょう。曲をまた聞きたいと思えて、映画もまた見て色々なシーンについて考えていきたいなと思える映画です。
サウンドトラック
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