2012年3月10日公開の映画『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』
ガイ・リッチー監督の人気アクションサスペンス『シャーロック・ホームズ』第二弾、前作に引き続きロバート・ダウニー・Jrとジュード・ロウがホームズ役、ワトソン役をそれぞれ続投し、今作からホームズシリーズ最強の悪役、ジェームズ・モリアーティ教授が登場します!
音楽はドイツ出身の映画音楽作曲家、ハンス・ジマーが手がけました。
この記事では、映画『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』で流れた音楽12曲をご紹介します。
公開日 | シリーズ作品名 |
2010年 | 映画『シャーロック・ホームズ』動画配信&流れた挿入曲 |
2012年 | シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム |
『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』で流れた曲とは?
アイリーンの護衛とホームズが吹く口笛の曲
Wolfgang Amadeus Mozart - Serenade No.13 In G major, K.525 “Eine kleine Nachtmusik” - I. Allegro
アイリーンの護衛とホームズが吹く口笛の曲は、Wolfgang Amadeus Mozartの『Serenade No.13 In G major, K.525 “Eine kleine Nachtmusik” - I. Allegro』です。
中国商人に変装したホームズがアイリーンの護衛たちと交互に吹く、戦い前のとぼけたシーンです。
口笛のメロディは、18世紀を代表するオーストリアの作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』第1楽章の有名なフレーズです。
この曲は『アイネ・クライネ・ナハトムジーク』と、モーツァルト自身が目録に記載したタイトルで知られていますが、正式名称は『弦楽のためのセレナード第13番、K. 525』で、1787年に完成された、モーツァルトの一番有名なセレナード作品です。
ワトソンのバチェラー・パーティー、空中ブランコのシーン
Dan W. Quinn - And The Band Played On
ワトソンのバチェラー・パーティー、空中ブランコのシーンは、Dan W. Quinnの『And The Band Played On』です。
空中ブランコのシーンで流れている曲は、ジョン・パーマー(作詞)とチャールズ・ウォード(作曲)が作った『And The Band Played On』で、1895年にアメリカの歌手、ダン・クインが録音しました。リフレインの歌詞から『Casey Would Waltz with a Strawberry Blonde』のタイトルでも知られている人気の曲で、多くのレコーディングが行なわれたスタンダードナンバーです。
ダン・クインは、レコード音楽の黎明期に、実験室でトーマス・エジソンを支援し、エジソンに「完璧な声を持った男」と言われた人で、後にすべての主要レコードレーベルで歌った人気レコーディング歌手になりました。
バチェラー・パーティー、ワトソンのギャンブルシーン
Charles Coborn - The man who broke the bank at Monte Carlo
バチェラー・パーティー、ワトソンのギャンブルシーンで流れた曲は、Charles Cobornの『The man who broke the bank at Monte Carlo』です。
19世紀のロンドンでは、歌・踊り・寸劇・奇術などを上演する「ミュージック・ホール」が流行の発信地でした。
『The man who broke the bank at Monte Carlo(モンテカルロで銀行を壊した男)』は、演劇エージェント、フレッド・ギルバートが1891年に副業で書いたコメディソングで、歌の権利を買いとりツアーで広め人気曲にしたのが、チャールズ・コボーンです。コメディアンでもあるチャールズ・コボーンはこの曲を14か国語で歌え、25万回演奏し、150万フランを獲得したと見積もっていたそうです!
モンテカルロには、「カジノ・ド・モンテカルロ」という世界中のカジノ好きが一度は行ってみたい憧れの場所があります。
ホームズがワトソンを結婚式場に送り届けたシーン
Johnb MacLeod - The Green Hills of Tyrol
ホームズがワトソンを結婚式場に送り届けたシーンで流れた曲は、Johnb MacLeodの『The Green Hills of Tyrol』です。
バグパイプで演奏されている『The Green Hills of Tyrol(チロルの緑豊かな丘)』は、スコットランド出身の作曲家ジョン・マクラウドが1854年に作った曲で、オリジナルは、ロッシーニの歌劇『ウィリアム・テル』(1829)の第3幕コーラス『La Tua Danza Sì Leggiera』です。
作曲者ジョン・マクラウドが、クリミア戦争にパイプ隊兵で従軍していた際、サルデーニャ軍楽隊が演奏する『La Tua Danza Sì Leggiera』を聴き、このバグパイプ曲を作ったそうです。
スコットランドの歌手、アンディ・スチュワートがこの曲に歌詞をつけて1961年リリースした盤が世界的にヒットしたことから、その曲のタイトル『A Scottish Soldier』としても知られています。
ホームズがモリアーティ教授に会いに大学を訪れるシーン
Franz Schubert - Fischerweise, Op.96, No.4, D. 881b
ホームズがモリアーティ教授に会いに大学を訪れるシーンで流れた曲は、Franz Schubertの『Fischerweise, Op.96, No.4, D. 881b』です。
教授がレコードでかけていた曲は、ホームズが当てた通り、シューベルトが1826年に作った歌曲『Fischerweise, Op.96, No.4, D. 881b』で、邦題は『漁師の歌 』です。
オーストリア出身のフランツ・シューベルトは、31歳という短い生涯でしたが600曲もの歌曲を残し「歌曲の王」と呼ばれています。
ここでは、ドイツの女性オペラ歌手イルムガルト・ゼーフリートの演奏が使われています。
ホームズたちがオペラ座に着いたシーン
Wolfgang Amadeus Mozart - Don Giovanni, K. 527: Act II: L’ultima prova
ホームズたちがオペラ座に着いた時に舞台で演奏されている曲は、Wolfgang Amadeus Mozartの『Don Giovanni, K. 527: Act II: L’ultima prova』です。
オペラ座ではオーストリア出身の天才作曲家モーツァルトが1787年に作曲した歌劇『ドン・ジョヴァンニ』が上演されています。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』は、伝説のプレイボーイ「ドン・ファン伝説」をもとにした、貴族ドン・ジョヴァンニの華麗なる恋の遍歴と衝撃的な最期を描いた、モーツァルトの人気作です。
ホームズ達がオペラ座に到着した時に、舞台で演奏されている曲は、第二幕で、ドン・ジョヴァンニが晩餐を楽しんでいるところに突然現れた元恋人エルヴィラが、心を改めるように説得するシーンのレチタティーヴォ(話すような独唱)とアリアです。
ホームズがオペラ座の中を動き回るシーン
Wolfgang Amadeus Mozart - Don Giovanni, K.527: Act II: Ah, signor per carita
ホームズがオペラ座の中を動き回るシーンで流れた曲は、Wolfgang Amadeus Mozartの『Don Giovanni, K.527: Act II: Ah, signor per carita』です。
このシーンで舞台で演奏されているのは、歌劇『ドン・ジョヴァンニ』第二幕で、従者レポレッロが、ドン・ジョヴァンニに「大理石の真白な男が、タ・タ・タとやってきます」と震え上がりながら告げるシーンでのレチタティーヴォ(話すような独唱)です。
訪れた真っ白な男とは石像で、その正体は、オペラ冒頭でドン・ジョヴァンニに夜這いをかけられた娘の父親でした。抵抗する娘を助けようとして、ドン・ジョヴァンニと決闘の末に殺害されてしまった騎士長の石像だという…怖いお話ですね。
凱旋門ホテルが爆破されるシーン
Wolfgang Amadeus Mozart - Don Giovanni, K.527: Act II: Don Giovanni, a cenar teco
凱旋門ホテルが爆破されるシーンで流れた曲は、Wolfgang Amadeus Mozartの『Don Giovanni, K.527: Act II: Don Giovanni, a cenar teco』です。
ホームズが推理の間違いに気づくシーンから、オペラ座の舞台では、歌劇『ドン・ジョヴァンニ』で「地獄落ち」と呼ばれるとても有名なシーンが演奏されています。『お前が食事に招いてくれたので参上したぞ』と騎士長の石像がドン・ジョヴァンニの邸宅にやってきて、ドン・ジョヴァンニに悔い改めよと迫ります。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』は、プラハ(チェコ共和国)のエステート劇場で1787年に初演されました。エステート劇場の外にはドン・ジョヴァンニ初演記念像として「騎士長の像」という大理石像が不気味に座っています。
ホームズたちがジプシーの道案内を受けドイツに向かうシーン
Ennio Morricone - Two Mules for Sister Sara - Main Title
ホームズたちがジプシーの道案内を受けドイツに向かうシーンで流れた曲は、Ennio Morriconeの『Two Mules for Sister Sara - Main Title』です。
西部劇の音楽が流れる中、ホームズだけが子馬に乗って移動するというコミカルなシーンです。
ここでは、エンニオ・モリコーネが作った、映画『真昼の死闘(原題:原題:Two Mules for Sister Sara)』(1970)のテーマ曲『Two Mules for Sister Sara - Main Title』をアレンジしたものが使われています。
シャーリー・マクレーンとクリント・イーストウッドのダブル主演映画『真昼の死闘』は、ハリウッド作品ですが、メキシコを占領するフランス軍に戦いを挑む放浪者と修道女の活躍が描かれたマカロニ・ウェスタン風の作品です。
ホームズが拷問を受けるシーン
Franz Schubert - Die Forelle, Op.32, D.550
ホームズが拷問を受けるシーンで流れた曲は、Franz Schubertの『Die Forelle, Op.32, D.550』です。
ホームズを痛めつけたいモリアーティ教授が大音量でかけ、自分も歌い出すレコードの曲は、『鱒(Die Forelle, Op.32, D.550)』(1817)です。教授が大学で聞いていた『漁師の歌 』と共に、シューベルトの作品の中でも特に人気のあるドイツ歌曲です。ロンドン出身のテノール歌手イアン・ボストリッジの歌唱が使われています。
『鱒』は、ドイツの詩人シューバルトが書いた詩にシューベルトが曲をつけたもので、ずる賢い漁師が策を用いて魚を釣り上げるさまが描かれています!
和平会議の舞踏会で使われている曲
Johann Strauss II. - Wiener Blut Op.354
和平会議の舞踏会で使われている曲は、Johann Strauss II.の『Wiener Blut Op.354』です。
舞踏会のシーンでは、この映画の音楽を担当したハンス・ジマーが、19世紀の作曲家ヨハン・シュトラウス2世の作品2曲を入れてアレンジした曲が流れています。
会場で最初に演奏されている曲は、1873年に作られた『ウィーン気質(独語:Wiener Blut)』作品354です。シュトラウス2世の指揮でウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって初演されました。
この作品は、日本でも人気のミュージカル『エリザベート』のモデルとなった皇后エリザベートの長女の婚礼を祝う宮廷オペラ舞踏会の為に作られ、デンマーク国王に献呈されています。
「ワルツ王」ことシュトラウス2世は、「ウィーンのもう一人の皇帝」とも呼ばれていました。
ホームズがシムザと踊るシーンで使われている曲
Johann Strauss II. - Accelerationen, Op.234
ホームズがシムザと踊るシーンで使われている曲は、Johann Strauss II.の『Accelerationen, Op.234』です。
このシーンで使われた『加速度円舞曲(独語:Accelerationen)』作品234は、シュトラウス2世が、技術者舞踏会の為に作ったウィンナ・ワルツで、ウィーン大学の技術学生に献呈されています。1曲目の『ウィーン気質』の13年前(1860年)に作られました。
人気作曲家として多忙を極めていたこの頃、様々な団体からの新曲依頼が次々飛び込んできたそうです。作品リストには、『建築学生の舞踏会』『法律家舞踏会舞曲』『 株式配当』『最初の治療』といった面白いタイトルがいくつも出てきます。
生涯で500曲を超える作品を残したシュトラウス2世は、この時代を経て、「ウィーンのもう一人の皇帝」と呼ばれる大物作曲家になったのでしょうね!
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