2007年9月1日公開の映画『デス・プルーフ in グラインドハウス』
タランティーノ6作目の監督作品『デス・プルーフ in グラインドハウス』。本国アメリカで2007年4月6日に公開されたアンソロジー映画『グラインドハウス』のうちの1本『デス・プルーフ』の再編集版です。第60回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映されました。
この記事では、映画『デス・プルーフ in グラインドハウス』の予告編と作品内で流れた音楽17曲をシーン毎にご紹介します!
映画『デス・プルーフ in グラインドハウス』で流れた曲とは?
予告編
『デス・プルーフ in グラインドハウス』は2007年4月北米公開の映画『グラインドハウス』内の作品として作られました。
『グラインドハウス』は2本の映画と実在しない映画の予告編4本のアンソロジー映画で、本編は以下の構成になっています。
- 予告編 『マチェーテ』監督ロバート・ロドリゲス
- 本編 『プラネット・テラー』監督ロバート・ロドリゲス
- 予告編 『ナチ親衛隊の狼女』監督ロブ・ゾンビ
- 予告編 『Don't/ドント』監督エドガー・ライト
- 予告編 『感謝祭』イーライ・ロス
- 本編 『デス・プルーフ』
『グラインドハウス』は特別上映を除き日本では公開されていませんが、本編2本はそれぞれ独立した映画として公開されました。
映画の題名にある「グラインドハウス」とは、B級映画を2〜3本まとめて上映する映画館のことで、60年代アメリカにはよくある娯楽施設だったそうです。フィルムの消失や汚れ、音飛びなどが目立ち、本作品でもその様子を再現しています。
『ベイビードライバー』のエドガー・ライト監督やニコラス・ケイジ、ティムロビンスなど実在しない映画の予告編の監督や出演者も錚々たる面々なのが驚きです!(1本目の予告編『マチェーテ』は後に映画化されました!)
是非、本編を見終わった方も予告編で『グラインドハウス』の雰囲気を楽しんでください!
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オープニングシーン
Jack Nitzsche - The Last Race
『デス・プルーフ in グラインドハウス』のオープニングシーンで流れている音楽は、Jack Nitzsche(ジャック・ニッチェ)の『The Last Race』という楽曲です。
ジャック・ニッチェは1937年、米・シカゴ生まれの作曲家です。『カッコーの巣の上で』(1975)『愛と青春の旅だち』(1982)の映画音楽で有名です。『愛と青春の旅だち』の主題歌『Up Where We Belong』は第55回アカデミー歌曲賞を受賞しました。
『デス・プルーフ in グラインドハウス』はアンソロジー映画の後半として作られた…という事を頭に入れておくと、オープニング映像の仕組みがよくわかります!
まず最初に流れてくる『OUR FEATURE PRESENTATION』こちらはあまり馴染みがない英語ですが、予告編後に「いよいよ本編が始まるよ!」という意味の決まり文句だそうで、70年代グラインドハウスで実際に流れていた映像だそうです。
次に流れてくる可愛い黒豹のアニメーション…こちらも実はグラインドハウスで実際に流れていた映像だそうですが…R指定の映画の前に流れる映像だそうです。子供は帰りましょう!といった意味なのでしょうか?
さて、それらの映像に続いてようやくオープニングが流れてきます!サーフロック調のクールな曲はバート・I・ゴードン監督の迷作SF『Village of the Giants』(1965)のテーマ曲です。グラインドハウス的映画のサントラ引用に足のアップ…これぞタランティーノですね!
テキサス・チリ・パーラーのシーン
Smith - Baby, It's you
『デス・プルーフ in グラインドハウス』のテキサス・チリ・パーラーのシーンで流れている音楽は、Smith(スミス)の『Baby, It's you』という楽曲です。
米・LAで1969年に結成された女性ボーカルのロックバンド、スミス。活動期間は短かったものの、ブルースベースの独特なサウンドで人気を博しました。
今回使われた『Baby, It's you』はバート・バカラック作曲のThe Shirellesオリジナル曲のカバーです。The Beatlesによるカバーも非常に人気がありました。
バタフライことアーリーンがスタントマン・マイクに気づくシーンや、『テキサス・チリ・パーラー』の中でジャングル・ジュリアが髪を振り乱し踊るシーンで流れるのがスミスの『Baby,it's you』です。ソウルフルでホットな一曲です。
『Baby, It's you』はビートルズの曲として馴染み深い方も多いかもしれませんが、実はバート・バカラックが作曲した名曲です。バート・バカラックといえば第42回アカデミー主題歌賞を受賞した『明日に向って撃て』の主題歌『雨にぬれても』が有名ですね!
ジャングル・ジュリアが電話するシーン
T.Rex - Jeepster
『デス・プルーフ in グラインドハウス』のジャングル・ジュリアが電話するシーンで流れている音楽は、T.Rex(T・レックス)の『Jeepster』という楽曲です。
グラムロックの王者、T.Rex(T・レックス)。キッチュで華やかなフロントマン、Marc Bolan(マーク・ボラン)のカリスマ性で絶大な人気を誇りました。
『Jeepster』は1972年にリリースされたシングルで、全英2位を記録しました。
ジャングル・ジュリアが電話をかけたところでジュークボックスから大音量で流れ出すのがT・レックスの『Jeepster』です。
タランティーノにしては珍しい選曲な気もしますが、少しオールディーズ風のサウンドのJeepsterはジュークボックスから流れてくる音楽にピッタリですね!
美脚キャラのジャングル・ジュリアはタランティーノの前作品『キル・ビル』内では「GOジュース」のCMモデルとしても活躍しています。GOジュースは今作品でも後半のコンビニシーンで映り込んでいますよ!
ジャングル・ジュリアがメールを送るシーン
Pino Donaggio - Sally and Jack
『デス・プルーフ in グラインドハウス』のジャングル・ジュリアがメールを送るシーンで流れている音楽は、Pino Donaggio(ピノ・ドナッジオ)の『Sally and Jack』という楽曲です。
ピノ・ドナッジオは『キャリー』(1976)や『殺しのドレス』(1980)など多くのスリラー/ホラー映画音楽を手がけた事で有名な映画音楽作曲家です。
『Sally and Jack』はブライアン・デ・パルマ監督のサスペンス映画『ミッドナイトクロス(Blow Out)』(1981)のテーマ曲です。
ジャングル・ジュリアが電話を切った後メールを送るシーンで流れてくる音楽が『Sally and Jack』です。美しい曲ですが、急なセンチメンタルなピアノのメロディがB級映画感を醸し出す面白シーンですね!
この曲はブライアン・デ・パルマ監督が『スカーフェイス』の前年に作ったトラボルタ主演のサスペンス映画『ミッドナイトクロス(Blow Out)』(1981)のテーマ曲です。ブライアン・デ・パルマといえばタランティーノが大好きな監督で、中でも『ミッドナイトクロス』のエンディングは最高!と語っています。
バタフライが車を見つけるシーン
Ennio Morricone -Paranoia Prima
『デス・プルーフ in グラインドハウス』のバタフライが車を見つけるシーンで流れている音楽は、Ennio Morricone(エンニオ・モリコーネ)の『Paranoia Prima』という楽曲です。1分53秒過ぎからが使われています。
『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』などの映画音楽で知られる巨匠エンニオ・モリコーネ。『Paranoia Prima』はダリオ・アルジェント監督のジャッロ映画『The Cat o' Nine Tails(邦題:わたしは目撃者)』(1971)からの引用です。
バタフライがデスプルーフ(耐死仕様)の車を見つけたところで流れるのが『Paranoia Prima』、緊迫感あるモリコーネの音楽です。ダリオ・アルジェント監督の『わたしは目撃者』からの引用です。ジャッロ映画と呼ばれるジャンルのイタリア映画でいわゆる「パルプ・フィクション」を映画化したB級スリラーをさすそうです。まさにグラインドハウスで流れていた映画という感じですね!
『デス・プルーフ in グラインドハウス』はところどころ故意にフィルムにノイズが入ったり、音声が途切れたりします。フィルム映画とB級映画をこよなく愛するタランティーノならではのこだわりを感じますね!
スタントマンマイクがナチョスを食べるシーン
Pacific Gas and Electric - Staggolee
『デス・プルーフ in グラインドハウス』のスタントマンマイクがナチョスを食べるシーンで流れている音楽は、Pacific Gas and Electric(パシフィック・ガス&エレクトリック)の『Staggolee』という楽曲です。
1968年に米・サンフランシスコで結成されたパシフィック・ガス&エレクトリック、『エリンブロコビッチ』の映画にも出てくるガス・電力会社から取った名前です。(1971年以降はPG&Eの名前で活動しています。)
『Staggolee』は彼らの最大のヒット曲『Are You Ready』(1970)のB面に収録された楽曲です。
スタントマン・マイクがナチョスをむしゃむしゃ食べるシーンでジュークボックスから流れてくる音楽が『Staggolee』です。ボーカルのCHARLIE ALLENのソウルフルな歌がクールでいいですね。
タランティーノの盟友イーライ・ロス演じるドヴが、こそこそスタントマン・マイクの悪口をいうのですが、なかなかマニアックな悪口なのがタランティーノ調です。『トラック野郎BJ』は『トラック野郎!B・J』という題名で日本でも放映されていたトラック運転手のドラマで、『ストローカーエース』は1983年にスタントマン出身のハル・ニーダムがバート・レイノルズを主演に招き製作したコメディ映画です。劇中で(かなりリアルな)鶏の着ぐるみを着るシーンがあることから、『着ぐるみないの?』と話していましたね!
ワイルドターキーを頼むシーン
Eddie Floyd - Good Love, Bad Love
『デス・プルーフ in グラインドハウス』ワイルドターキーを頼むシーンで流れている音楽は、Eddie Floyd(エディ・フロイド)の『Good Love, Bad Love』という楽曲です。
1937年米・アラバマ生まれのソウルシンガー、エディ・フロイド。1966年に発表した『ノック・オン・ウッド』はBillboad R&Bチャートで1位を記録し、今でも名曲として数多くのシンガーにカバーされています。
ジャングル・ジュリアがワイルドターキーを頼むシーンでジュークボックスから流れてくる音楽が『Good Love, Bad Love』です。60年代にソウルミュージックの名盤を数多く残した『STAX』のレコードから流れている様子が映し出されています。
あまりに自然に出ているので、忘れてしまいそうですが、テキサス・チリ・パーラーの店長としてタランティーノ監督自ら出演しています。
ちなみに、ジャングル・ジュリア役のシドニー・ターミア・ポワチエは、黒人男優としては初めてアカデミー主演男優賞を受賞し『夜の大捜査線』(1967)『招かれざる客』(1967)で知られるシドニー・ポワチエの娘で、シャナ役のジョーダン・ラッドはTVドラマ版『チャーリーズ・エンジェル』への出演で知られるシェリル・ラッドの娘です!
ジュークボックスのシーン
Joe Tex - The Love you Save (May Be your Own)
『デス・プルーフ in グラインドハウス』バタフライがジュークボックスの前で踊るシーンで流れている音楽は、 Joe Tex(ジョー・テックス)の『The Love you Save (May Be your Own)』という楽曲です。
ジョー・テックスは1935年、米・テキサス州出身のソウルシンガーです。今ではサム・クックと並ぶR&B/ソウルシンガーとして評価されていますが、かなり遅咲きのシンガーとして知られています。72年の大ヒット曲『I Gotcha』はタランティーノのデビュー作『レザボアドッグス』でも使用されました。
『The Love you Save (May Be your Own)』は1966年リリースのアルバムからの一曲です。
バタフライがジュークボックスから選んだのはジョー・テックスの『The Love you Save (May Be your Own)』です。セクシーなサービスショットです!
何度かチラチラ映り込んでいたジュークボックスですが、この曲のシーンが一番じっくり写してくれます。実はこのジュークボックス、タランティーノの私物で、タランティーノが原案を手がけた『ナチュラル・ボーン・キラーズ 』の最初のシーンで使われているものと全く同じだそうです。
手書きの曲リストが映っていますが、『The Love you Save (May Be your Own)』の前には『パルプ・フィクション』のオープニング曲『Misalou』も入っているのが確認できます。ちなみに、ジュークボックスに入っている全ての曲リストも公開されているそうですよ!
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バタフライがラップダンスをするシーン
The Coasters - Down in Mexico
『デス・プルーフ in グラインドハウス』バタフライのラップダンスシーンで流れている音楽は、The Coasters(ザ・コースターズ)の『Down in Mexico』という楽曲です。
ザ・コースターズは50年代後半から60年代前半にかけて人気が高かったR&B/ロックンロールのボーカル・グループです。漫談のようなコミカルな曲が多く、今でも世界中でコアなファンを持つグループです。
コースターズの前身となったバンド『The Robins』の曲は『パルプ・フィクション』でも用いられいていました。
前半の見せ場といえば、間違いなくこのバタフライのラップダンスですよね!!チキン(腰抜け)と言われたくないという理由があるとはいえ、ここまでノリノリでしてくれるの!?と思うくらいセクシーなダンスです。
ちなみにこのシーン、『グラインドハウス』バージョンでは上映されなかったらしく、missing real(無くしたフィルム)が見つかったという体で再編集された『デス・プルーフ in グラインドハウス』ではたっぷり魅せてくれました!
音楽は『Down in Mexico』、ザ・コースターズによる名曲です!
前半のカークラッシュシーン
Dave Dee Dozy Beaky Mick and Tich - Hold Tight
『デス・プルーフ in グラインドハウス』の前半のクライマックス、カークラッシュシーンで流れている音楽は、Dave Dee Dozy Beaky Mick and Tich(デイヴ・ディー・グループ/略称DDDBM&T)の『Hold Tight』という楽曲です。
60年代にヒットしたデイヴ・ディー、ドジー、ビーキー、ミック&ティッチ、日本での通称はデイブ・Dグループです。グループサウンド全盛期だった日本では『オーケイ』(1967)や『キサナドウーの伝説(The Legend of Xanadu)』が有名です。
DJであるジャングル・ジュリアがラジオ局に電話してかけるよう指示したのがデイヴ・ディー・グループの『Hold Tight』です。ノリノリでいい曲です…が、観客である私たちはパムの惨劇を見た後なので、恐怖しかありません…。
ここで前半は幕を下ろします。大破するスタントマン・マイクの車は1970年型シボレー・ノヴァ、ナンバープレートは「JJZ 109」です。これは『ブリット』(1968)でスティーブ・マックィーンが乗っていたフォード・マスタングのナンバーをそのまま使っています。
ちなみに、スタントマンマイクの車についている葉巻を咥えたアヒルのエンブレム、こちらはサム・ペキンパー監督のトラック・アクション映画『コンボイ』(1978)の主人公が運転するトラックのエンブレムが元ネタです。
スタントマンマイクのカーステレオから流れてくる音楽
Willy DeVille - It's So Easy
『デス・プルーフ in グラインドハウス』のレバノン編、スタントマンマイクのカーステレオから流れてくる音楽は、Willy DeVille(ウィリー・デヴィル)の『It's So Easy』という楽曲です。
R&Bグループ『ミンク・デヴィル』のフロントマンとして知られるウィリー・デヴィル。米・ニューヨークの歴史的ナイトクラブCBGBのハウスバンドとして活躍し、いくつものヒット曲を発表しました。
ウィリー・デヴィル名義の活動では、映画『プリンセス・ブライド・ストーリー 』(1987)に主題歌『Storybook Love』を提供し、アカデミー歌曲賞にノミネートされました。
テキサス編から14ヶ月後、テネシー州レバノンにいる元気になったスタントマンマイクの車から流れてくるのが『It's So Easy』です。
『It's So Easy』はアル・パチーノ主演のスリラー映画『クルージング』(1980)の主題歌でもあります。クルージングの音楽監督はジャック・ニッチェ、『デスプルーフ』オープニング曲の作曲家です。凝った選曲ですね!
コンビニでアバナシーの電話がなるシーン
Bernard Herrmann - Twisted Nerve
『デス・プルーフ in グラインドハウス』コンビニでアバナシーの電話が鳴るシーン、着信音はBernard Herrmann(バーナード・ハーマン)の『Twisted Nerve』という楽曲です。
バーナード・ハーマンは『めまい』(1958)『北北西に進路を取れ』(1959)などのヒッチコック映画のサントラを手がけた映画音楽作曲家として知られています。他にも『地球が静止した日』(1951)や『市民ケーン』(1941)などの名作映画音楽を手掛けました。
タランティーノファンが喜ぶ「例のテーマ」が着信音に…!アバナシーの携帯電話の着信音として使われたのは、『キル・ビル 』ダリル・ハンナの口笛でお馴染みの『密室の恐怖実験』(1968年)サントラです!今見ると、2007年ってこんな携帯だったなぁとちょっと懐かしくなるシーンです。
映画中盤という事もあり、様々な小ネタが盛り込まれています。テキサス編の最後の病院のシーンでは、姉妹作品『プラネット・テラー in グラインドハウス』の女医ダコタ・ブロックやテキサス・レンジャー親子が登場します。この親子はキルビルにも出ていましたね!
スタントマンマイクによる盗撮シーン
Ennio Morricone - Unexpected Violence (Violenza in attesa)
『デス・プルーフ in グラインドハウス』スタントマンマイクによる盗撮シーンで流れている音楽は、Ennio Morricone(エンニオ・モリコーネ)の『Unexpected Violence (Violenza in attesa)』という楽曲です。
映画前半、バタフライがスタントマンマイクに気付いたシーンで流れたエンニオ・モリコーネの『Paranoia Prima』と同じくダリオ・アルジェント監督のジャッロ映画からの引用です。
『Unexpected Violence (Violenza in attesa)』は監督のデビュー作『歓びの毒牙』(1970)からの引用です。
後半はこれでもかというくらいスタントマンマイクの異常さを見せつけてくれます!本当に気持ち悪い…スタントマンマイク役のカート・ラッセルの怪演が素晴らしいですね!ワイスピことワイルド・スピードシリーズのMr.ノーバディと同じ俳優さんだとは思えません…。
この盗撮シーンはアルジェント監督のジャッロ映画『歓びの毒牙』オープニングシーンのオマージュです。サントラもそのまま拝借しています!
カーチェイス開始のシーン
Eddie Beram - Riot In Thunder Alley
『デス・プルーフ in グラインドハウス』カーチェイスが始まるシーンで流れてくる音楽は、Eddie Beram(エディ・ベラム)の『Riot In Thunder Alley』という楽曲です。
ギタリストDavie Allanと名プロデューサーMike Curbが音楽を担当したリチャード・ラッシュ監督の『大暴走(原題:Thunder Alley)』(1967)からの一曲です。
エディ・ベラムはOctober Countryというグループのドラマーです。
ニュージーランドからやってきたスタントウーマン、ゾーイが1970年型440エンジン搭載の白いダッチ・チャレンジャー(のボンネット!)に試乗しているところをスタントマンマイクが突っ込んでくるシーンで流れてくる音楽が『Riot In Thunder Alley』です。マッスルカー同士のカーアクション…文字通り手に汗握るシーンです。
ゾーイ役のゾーイ・ベル、キル・ビルではユマ・サーマンのスタントを務めました。CG嫌いのタランティーノには欠かせないスタントウーマン/スタントマン達…彼女達への敬意が随所に込められています。
ゾーイ達がスタントマンマイクを追いかけるシーン
Franco Micalizzi - Italia a mano armata
『デス・プルーフ in グラインドハウス』ゾーイ達がスタントマンマイクを追いかけるシーンで流れている音楽は、Franco Micalizzi(フランコ・ミカリッツィ)の『Italia a mano armata』という楽曲です。
日本ではあまり馴染みが無いですが、「Poliziotteschi」というイタリア警察映画というジャンルがあり、B級映画作品として海外ではコアなファンがいるそうです。『Italia a mano armata』は、マリノ・ジロラーミ監督のイタリア警察映画『Special Cop in Action(邦題:特攻警察)』(1976)のメインテーマです。
ドライバー、キムの闘志に火が付き、スタントマンマイクを追いかけるシーンで流れてくる音楽が『Italia a mano armata』です。007やミッション・イン・ポッシブルを彷彿させる音楽がテンションを上げてくれます。
このカーチェイスシーンでスタントマンマイクが乗っている車は1969年型ダッジ・チャージャーで、『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』(1974)でピーター・フォンダが運転していた車と同じです。もちろん、ナンバープレートも同じ「938 DAN」をつけています!
終盤の情けないスタントマンマイクをみていると、どんどん追い詰めたくなってきますね!
キム達の車が脇道に外れたシーン
Stelvio Cipriani - La polizia sta a guardare
『デス・プルーフ in グラインドハウス』キム達の車が脇道に外れたシーンで流れている音楽は、Stelvio Cipriani(ステルヴィオ・チプリアーニ)の『La polizia sta a guardare』という楽曲です。
ステルヴィオ・チプリアーニはローマ出身の映画音楽作曲家で『ベニスの愛』(1970)や『ラストコンサート』(1976)の美しい音楽で知られています。
『La polizia sta a guardare』は、前曲と同じく「Poliziotteschi」映画からの引用で、『The Great Kidnapping』(1973)からの引用です。
さすがはスタントマンマイク、痛手を追っていてもちゃんと反撃してきます…反撃を受けて脇道に外れてしまったところで流れてくる音楽が『La polizia sta a guardare』です。短いシーンですがとても印象的ですよね!
ちなみに、行き止まりにならないで…という意味でゾーイ達は声を揃えて『don't dead end, don't dead end』と言っています。油断したスタントマンマイクに突っ込むシーンは…スカッとします!
エンディングソング
April March - Chick Habit
『デス・プルーフ in グラインドハウス』のエンディングで流れる音楽は、April March(エイプリル・マーチ)の『Chick Habit』という楽曲です。
エイプリル・マーチは米・ニューヨーク生まれのポップシンガーです。60年代フレンチ・ポップスに影響を受けた作品を残しています。
『Chick Habit』はセルジュ・ゲンスブールが作曲した『Laisse tomber les filles(邦題:娘たちにかまわないで)』(1964)のカバーです。英語とフランス語両方で歌っています。
ヒャッフー!!となる最高のエンディングにこの曲!ガールズパワー全開になりますね!踵落とし最高です…!
エンディングで流れるこの曲は『夢見るシャンソン人形』で有名なフランス・ギャルが歌って大ヒットしたフランスのヒットソングをエイプリル・マーチがカバーしたものです。「女の子に優しくしないと痛い目みるよ!」といった感じの歌詞で…映画の内容にぴったりの歌ですね!!
合いの手で写真が出てくる映像も最高で何度もみてしまいます!
筆者の感想
レンタルビデオ屋でアルバイトをしB級映画にも詳しいタランティーノ監督だからこそ作れた最高級のB級映画が『デスプルーフ in グラインドハウス』です。
手に汗握るカーチェイスにタランティーノ節全開のガールズトーク、おまけにセクシーシーンありで誰もが楽しめるエンタメ作品になっています!友達とのウォッチパーティーにもオススメの作品です!
筆者はグロ耐性がないので、ゾンビ映画が観れず『プラネットテラー in グラインドハウス』は未見なのですが、金髪美女のパムがセクシー女優役で出演していたり、ジャングル・ジュリアの訃報が流れていたりと『デスプルーフ』ネタが随所に出てくるので、ゾンビウェルカムの方はぜひ『プラネットテラー in グラインドハウス』も合わせて見てみてください!